95.【書籍発売記念SS.3】クリスティア if
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もし私が、私じゃなかったら。
もし私が、クリスティア・セリンジャー本人だったなら。
ゲーム通りの私だったなら、一体どうなっていたんだろう……。
――クリスティア if ――
苦しい
悔しい
なんで私じゃないの?
なんで、私じゃダメなの?
なんで……?
なんで……
「アンタなんかいなければ!!」
――バシッ!!
振り上げた手を勢いよく振り下ろす。
それは目の前の少女の左頬に勢いよく振り下ろされた。
「キャッ!!」
悲鳴をあげて倒れる少女。
それは、私の婚約者を奪った女だ。
幼い頃からずっと好きだった。
婚約者だと紹介された彼は、誰よりもかっこよくて、誰よりも優しくて、幼いながらに彼に恋をした。
2人で過ごす時間は特別で、ずっとずっと大好きで。
これからもずっと、大人になっても彼は私の隣にいてくれると信じて疑わなかった。
なのに、なんで……?
なんでこんなことになってしまったの……?
なんで彼の隣には私じゃない人がいるの……?
なんで彼は私に笑いかけてくれないの……?
なんで彼は私じゃない人と、あんなに幸せそうに笑いあってるの……?
全てが許せなかった。
彼の隣にいるのは私のはずなのに……、それは変えようもない事実だったはずなのに……っ!!、
なんで!?
なんでなのっ!?
私の心を真っ黒な感情が埋め尽くす。
ドロドロと醜い感情が私を支配する。
つらい、苦しい、悲しい、なんで……?
そんな真っ黒な気持ちが私を支配した時、気がつけば私は彼女に手をあげていた。
そんな私たちに気づき野次馬のように少し離れてこっちを見ている者。
私を止めようと駆け寄ってくる者。
尻もちを着いた彼女を心配してかけよる者。
そして次の瞬間……
――バンッ!!!!
さっきとは比べ物にならないほどの音を立てて、私の頬に痛みが走った。
「お前がそこまで醜いとはな」
そういったのは大好きで、ずっとそばにいたいと願った婚約者だった。
その瞳は酷く冷たく私を見る。
もう、こんな風にしか、彼の目に私は映らないの……?
つらい
苦しい
もう、嫌よ……
「金輪際俺に近づくな。こんなやつが婚約者だとは俺も落ちたものだな」
崩れ落ちた体。ヘタリとその場に座り込めば、頭の上から降ってきた悲しい言葉に私の瞳からは涙が零れる。
やめて
その手で彼女に触れないで
何よりも優しく、大好きだった手
それが今、私ではなく、彼女に優しく触れる
お願い……
やめて……
やめて……っ!!!!
――それからはあまりよく覚えていない。
ただ、死んだような毎日を過ごした。
そして、気がつけば私は婚約者によって断罪された。
この命が完全に止まる前に見えたのは、彼女を守るように立つ婚約者の姿だった。
もし、あんな事しなければ
もし、もっと違う行動をしていれば
もし、私が私じゃなかったなら…………
そうしたらこんな結末は、来なかったのかしら……?
彼の隣に立ち、幸せに笑っていられる結末が、あったのかしら……?
それなら、もう一度……
お願い、神様…………
もう一度だけ、私にチャンスをください
もう間違えないから……
間違えないから……っ!!
好きな人一緒に笑い合えるだけでいいから
それだけでいいから……っ
もう一度だけ、もう一度だけ
私にチャンスをください
きっとその願いは届けられた。
私であって、私ではないクリスティア・セリンジャー
ただ真っ直ぐに、幸せな未来を掴もうとする彼女は今度こそきっと……
幸せな未来が掴めると信じて……
クリスティア if ~fin~
20220408.




