78.兄上と姉上と同じ温もり。(ウィリアム目線)
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いつの間にか涙が出るほど僕は、この世界を好きになっていたらしい。
「誰か!!!お願いだから!!!!!!」
生きたい……生きたい!!!!僕はみんなと!!!!
そう願った瞬間だった。
目の前の扉が崩れ落ち、僕らに光がさした。
「ウィリアム?」
「……とう、さま…………?」
体が痛い。でもそれよりも、目の前の父様の姿に心底ホッとした。
「姉上を!それから、まだ中に兄上が!!」
「ユリウスが?他には」
「捕らわれていた者が沢山います!」
父様にそう伝えながら涙を拭って、伸ばされた大きな手に姉上を託す。姉上をしっかりと抱きとめた父様は直ぐに周りに指示を出した。
「急げ!必ず全員救出しろ!」
その言葉に待機していた兵たちが一斉に動き出し地下へと駆け下りる。
「ウィリアムはここで待ちなさい。」
「しかし兄上がっ!!」
「ここでティアを守って欲しい。これはウィリアムにしか頼めない。」
父様はもう僕に魔力が残っていないことに気がついている。でもあえてそれを口にはせず、姉上を守って欲しいと僕に言った。
そんなの、従うしかない……
今の僕じゃ足手まといになる。無理について行っても邪魔になるだけだ。それなら……
「分かりました。どうか、兄上を……」
「分かっている。ウィリアムもよく頑張った。よくティアを守ってくれた。」
そう言って僕の頭に乗せられた大きく温かな手。兄上と姉上と同じ温もりに自然と安心感を覚える。
ゆっくりと離れた手は今度は姉上をしっかりと支えていて、歩き出した父様に続いて僕も後を追う様に歩き出した。
地下が見つかった事を父様が両国の殿下に報告すると、それを聞いていたガンバッタロー伯爵は突然狂ったように笑い出した。
両側から兵達が押さえ付けるも、ただただ下品で不快な笑い声だけが辺りに響き渡る。
「わたしがぁ!!私が捕まってしまえばこの国も終わりですなぁ!!」
「どういう事だ?」
「どういう事?これだから名前だけの王族などと言われるのですよ!!!」
ガンバッタロー伯爵の言葉にここにいる誰もが息を飲んだ。
僕にはこの国の状況は分からない。しかし、自国の象徴とも言える王家の方に発していい言葉ではないと。それほどまでにこの国の貴族は腐っているのだと。
それだけは僕にだって理解出来た。
「そうか。そう言われてしまっても仕方がない。事実、父上は甘い所があるからな。
だが、覚えておけ。次期国王陛下である兄上は父上のようには甘くない。せいぜいその首が跳ねないことだけを願うんだな。」
今日一番の低く冷たいリオライト殿下の声に、ここにいる誰もが凍りついたように動けなくなった。
その表情は酷く冷たく、感情の無い瞳がガンバッタロー伯爵を射抜いている。
それにはガンバッタロー伯爵も体を硬直させ、ガクガクと身体を震わせ始めたのだった。
「ウィリアム、こっちに。」
「はい。」
全身震えながらガクンと項垂れているガンバッタロー伯爵から視線を外し父様の後に続く。
パッと屋敷の方に視線を向ければ、数時間前までのやたらときらびやかな雰囲気とは打って変わった屋敷の姿がそこにはあった。
所々まだ火が出ていて、真っ黒な煙がもんもんと立ち上っている。
姉上にそんな空気を吸わせる訳にはいかない為、僕達は屋敷に背を向けて歩き出した。
20211014.
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