表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/85

77.生きたい。(ウィリアム目線)

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!






「どうにかして外に出る方法を……」

「しかし、階段はもう……」



降りてきた階段は氷の壁が張ってあって、壊せば上へ上がる事も出来るけれど、もし、もう既に階段へ火がおりてきている場合、僕達は逃げ場を失ってしまう。



そうなれば助かることは不可能だ。現実的じゃない。



僕は姉上さえ助かればそれでいい。

酷い言い方だと言われるかもしれない。酷いやつだと罵られるかもしれない。それでも、姉上は僕にとってこの世界で生きていく希望であり、何よりも大切な存在なんだ。



この瞬間、まるでこの世の終わりかと思うような大きな音が地下の閉ざされた空間に響き渡った。


それと同時に大きく揺れる地面に、僕の体はグラりと揺れるが、何とかその場に踏み留まる。



未だ苦しそうに、その綺麗な瞳を閉じている姉上を何とか支えることが出来たことに、僕はホッと息をこぼした。

体の上に乗せられた手首は拘束具のせいで濃い紫色に変色していて、見るに堪えない。



「崩れた、か……」

「そうですね。そうなればここも後どれだけ持つか分かりません」



思わず顔を歪め姉上の手から目を逸らした僕の言葉に、兄上は「あぁ。」と頷く。



あの炎の勢いだ、恐らく建物が崩れたのだろう。

そして崩れた勢いで天井の至る所に亀裂が入り砂がパラパラと落ち始めている。



本当にいつ崩れてもおかしくない。



魔力を集中させて、この空間に氷の膜を張るがこれも役に立つかは分からない。



残りの魔力を薄く広げ近くの構造を把握する。もう、これで最後かもしれない。

僕の魔力は度重なる使用によりもう底をつきそうになっていた。


その僅かな魔力に集中する。今は少しも無駄にはできない。



そして、僕は魔力によってとある場所の奥に違和感を発見した。




「兄上」

「どうした?」

「この先の壁の奥に空洞がある、かも知れません。」



こちらを振り向いた兄上に可能性を伝える。



「正直、自信がありません。もう僕の魔力はあまり残っていないので。

それでもこの場所で唯一違和感があるのはそこだけです。なので、」

「分かった。壊してみよう。」

「……いいのですか?だって、兄上も魔力が、」

「もちろん。可能性があるならやってみよう。」



兄上も度重なる使用により魔力はもうそんなに残っていないはず。なのに、こんな確信の無い言葉をいともあっさりと信じる。



本当に、この人たちは…………



思わず姉上を抱いている手に力が篭もる。


兄上も姉上も、父様も母様も。()()()()は僕が嘘をついているかもしれないなんて少しも疑わない。最初から、ずっと…………




危うく泣き虫な僕が出てきて涙がこぼれそうになった。しかし、その涙も、目の前で大きな音を立てて壁を壊した兄上の行動にすぐに引っ込んでしまった。




「ウィル!」



叫ばれた名前が部屋に響く。

僕は慌てて姉上を抱えたまま兄上の元まで走り寄れば、違和感のその奥には上へと繋がる階段が隠されていた。



「これは……」

「恐らく地上のどこかに繋がる階段だ。確信は無いから分からないけれど、ここよりは安全だと思う。ウィルはティアを連れて先に上に上がってくれ。」

「兄上は?」

「僕はここにいる子供達を助けるよ。」

「しかし、それでは……っ!!」

「大丈夫、僕は死なない。僕の天使を残して死ぬ訳にはいかないからね。」

「っ!!」



そう言いながら姉上を見て少し寂しそうに笑顔を見せる。



「すぐに!必ず救助を呼びます。」

「うん。頼んだよ。」



優しい笑顔を向けてくれた兄上に僕は力強く首を縦に振り階段を駆け上がった。




真っ暗な階段はずっと上まで繋がっていて、段々と息が上がってくる。

それでも、姉上を助けて、地下に残った兄上を助けなければいけない。僕がここで諦めてしまえば、兄上は助からないかもしれない。



今は一分一秒が惜しい。

苦しい呼吸を我慢して僕はただひたすら上だけを目指した。



そうして現れたのは鉄の扉だった。残りの魔力を全部使って壊そうとするも、魔力が少なすぎてビクともしない。



このままでは僕達はみんな閉じ込められたままだ。兄上にも僕は約束した。必ず助けを呼ぶ、と。だから僕は諦める訳にはいけない。



僕は姉上を落とさないようにしっかりと抱きしめてから壁に背中を向けて少しだけ勢いをつけて壁に体当たりした。



大きく揺れることは無かったが、ドンッ!と小さくでも低い音が閉鎖された空間には大きく響く。



これでこんな重く硬い扉が開くなんて思っていない。でももしかしたら誰かがこの振動に気づいてくれるかもしれない。



「だれか!!!誰かいませんかっ!!!!」



必死に声を上げながら僕は何度も壁に体を打ち付ける。

体のあちこちが痛い。でも、それよりも今は大切な人を失ってしまうかもしれない未来の方が怖い。



ずっとそんなこと思ったこと無かったのに。ずっと早くいなくなりたいと思ってたのに……



僕は、姉上と……姉上と兄上と父様、母様と。()()()()()で、その中には幸せに笑う僕もいて。



いつの間にか僕は、そんな未来を望んでいた。想像できるようになっていたのに……





「お願いだから!!!誰か!!!誰か!!!!!!」




必死に叫ぶ声が段々と鼻にかかる声に変わる。

泣き虫な僕が現れて涙が出た。


いつの間にか涙が出るほど僕は、この世界を好きになっていたらしい。




「誰か!!!お願いだから!!!!!!」






生きたい……生きたい!!!!僕はみんなと!!!!







そう願った瞬間だった。




目の前の扉が崩れ落ち、僕らに光がさした。






20211006.



次回更新予定日は10月9日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ