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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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73.涙が頬を伝う。(ウィリアム目線)

ブックマーク&作品評価ありがとうございます。

 






「これは……、魔力抵抗か……?」



 真っ暗でじめっとした空気の流れる階段を1段ずつゆっくりと降りる。螺旋状になった階段を降りれば降りるほど、まるで何かが背中に飛び乗られ上から押さえつけられているかのような重さ、いや圧力(プレッシャー)を感じ足取りが重くなる。



「魔力抵抗ですか?」

「そう。名前の通り、自らの魔力を圧力(プレッシャー)にして相手を押え付ける魔力の使い方だよ。あの執事はかなり優秀らしいね。」



 兄上の聞きなれない言葉に首を傾げると、兄上はこちらを見ること無く簡単に説明してくれた。そして指をパチンと鳴らせば一瞬にして重く感じていた体が軽くなった。



「これで楽になったね。いずれ火が回ってくる。先を急ごう。」



 壊した扉のあった場所には分厚い氷の壁を作っておいた。そして今も氷の壁を張りながら階段を下っている。しかし、あの炎の勢いにいつまで持つか分からない。だからこそ早く地下へ降りて姉上を探さなければならない。


 軽くなった体で足を踏み外さないように急いで降りれば、だだっ広い不快感漂う空間へと抜けた僕らは思わず顔を顰め無意識に手を自分の鼻へと移動させた。




「酷い臭いですね……」

「あぁ、本当に」



 錆びた鉄の匂いや、汚物の匂い、ちょっと酸っぱさを含む匂いなど、とにかく不快以外の何物でもない臭いが鼻をつく。



 こんな所に何時間もいたら頭も体もおかしくなりそうだ。


 そう思わずには居られないほどここは酷い場所だった。




「ウィル、電気を出せるかい?」

「電気ですか?」

「蝋燭の先に付いた火のように、指先に電気の玉を作るんだ。流石にこの暗さじゃ時間がかかるからね。」

「やってみます」



 雷属性を持つ僕は兄上のアドバイスを元に頭の中で電気の塊の玉をイメージする。

 指先に小さくバチバチと音を立てて光が現れれば、暴走しないように小さく圧縮させるイメージを指先に伝える。

 そうすればバチバチと音を立てる小さな電気の玉がふわりと指先から離れ宙に浮かんだ。


 それと同時に周りがよく見えるようになって思わず息を飲んだ。



「っ!?」

「酷い……」



 目の前には鉄の錆びたボロボロの檻。その中には壁に打ち付けられた手枷に腕を繋げられ、ダランと力なく項垂れている子どもの姿。

 それもひとりやふたりでは無い。

 真ん中の通路を挟んで両側に存在するそれには何人もの子供たちが同じ状態で地面に座っている。


 しかし全員意識がないのかその目は閉じられていて、僕達を見る者は誰もいない。



「とにかくまずはティアを探そう。救助はそれからだ。」



 そう言いつつも風の魔力を使って子供たちを傷つけないようにしながら手枷を外しながら奥へ進む兄上。

 僕もそんな兄上の後に続くように兄上とは反対側の檻の中にいる僕と同年代の子供たちの手枷を風魔法を打ち込んで外していく。



 そして一番奥にたどり着いた時だった。


 僕は思わず、ガシャン!!と音を立てて錆びた檻に飛びついた。



「っ!!姉上っ!!!!」



 檻の中には壁に打ち付けられた手枷に片腕を拘束されてぐったりと力なく項垂れている姉上の姿が。

 昨日姉上が来ていた服は所々ボロボロになっていて、綺麗なはずの髪も今は本来の姿は少しも見られない。



 姉上を見つけた安堵感は一瞬で、姉上をこんな風にしたガンバッタロー伯爵家の者全員が憎いという負の感情が上書きする。



 乱暴に錆びた檻を壊し、ガシャン!!!!と乱暴に開けて中に入り風の魔力を使い姉上の拘束を解けば、冷たい床に座っていた上半身がグラりと揺れ床に倒れ込むのをすんでのところで抱きとめる。


 そしてその体の冷たさに一瞬嫌な考えが脳裏を過る。



「あ、ね……うえ……?あねうえ?っ、姉上っ!!!!!」



 ギュッと姉上の体を温めるように抱き締めていると、ギィィィと音を立てて揺れる檻の入口から兄上が駆け込んでくる。



「ティアはっ!?」

「い、意識が……ありません……、からだもっ、つめ、冷たくて……」

「っ!?」



 憎くて、怒りで頭がおかしくなりそうで、でも悔しくて、自分自身が許せない気持ちもあって。

 様々な感情が入り交じり、目からは涙が溢れてくる。



 泣きたいわけじゃないのに。


 そう思っても怒りで余計にカッと熱くなって涙は止まることを知らないかのように溢れ続ける。



 その涙がぽたぽたと頬を伝って流れ落ち、コンクリートの冷たい床にシミを作る。

 抱きしめる腕に力が篭れば、姉上の頬に僕の涙が流れ落ちた。



 その瞬間姉上の指先がピクリと小さく動いた。

 そして薄目を開けた姉上が僕を捉えると、ゆっくりと手を伸ばし涙が伝う頬へと触れる。



「あ、ねう……」

「な、かないで……、だいすきよ、ウィル……」



 小さく、でも確かにそう言うと、伸ばした手は力なく崩れ落ち再び綺麗な瞳は閉じられた。



「あねうえ?姉上っ!!」



 力なく崩れ落ちた腕に不安になって姉上!と叫べば、小さいけれど呼吸の音が聞こえ、キュッと心臓が握りしめられたかのように苦しかった呼吸が少しだけ楽になった。



「とにかくここを出よう。ウィル、ティアを任せるよ。命に変えても守るんだ」

「はい!!!」



 兄上の指示に僕は涙を拭って力強く答える。

 そして、本来ならば女性に対してしてはいけないと分かりつつも、今だけはと姉上を横抱きに(お姫様だっこ)し、僕は立ち上がった。









20210929.



次回更新予定日は10月2日です。



9月もありがとうございました!



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