表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/85

72.心の奥底が冷えるのを感じた。(ウィリアム目線)

ブックマーク&作品評価ありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございます!本当にいつも助かってます!!

 





 目の前には勢いよく燃えている大きな屋敷。


 空高く立ち上る真っ黒な煙。


 バタバタと慌てて屋敷から飛び出してくる使用人や兵たち。



 横を見れば拘束されつつも大声で笑っているガンバッタロー伯爵と、数人の兵によって拘束されているが涼しい顔をして燃える屋敷を真っ直ぐに見て口角を上げている執事がいる。



「はははっ!!!燃えろぉ!!もっと燃えてしまえぇ!!!はっはっはっはっはっ!!!!いいぞぉ!!!いいぞぉぉぉ!!!!!」



 声高々に笑っている伯爵に恐怖を覚える。


 下手したら使用人が命を落としていたかもしれないのに。それに、自分の屋敷が燃えているのに慌てる様子もなくただもっと燃えろと笑っている。



 もしかして、わざと……

 証拠は屋敷ごと全部燃やすつもりで……っ!?



 大きな炎が飲み込んでいるのは3階の部屋がほとんどだ。それだけで、おそらく今回の事件の証拠が3階の部屋にあったのだろうと想像できる。その炎が少しずつ屋敷を侵食し今は2階の一部の部屋からも赤く燃え上がる炎が見えている。



「ウィル!!!」

「はいっ!!」



 ゆっくりとしかし確実に広がる炎に、隣にいる兄上が僕の名前を叫ぶ。そして僕は呼吸を整えてから集中し、魔力を操作して屋敷の上からバケツの水をひっくり返したかのような勢いのある水を降らせる。


 しばらくの間ずっと降らせ続け、火が弱くなったのを確認して魔力の発動を止めればずぶ濡れになった屋敷は所々黒く炭になっている。


 と、次の瞬間にはまたどこからともなく大きな炎が立ち上った。



「っ!?」


 完全に消したはずなのに……


 さっきまでと変わらない勢いで再び燃え出す屋敷に僕は弾けるように後ろを振り向けば、涼しげに笑う執事の顔が目に入り、これまでの出来事全てに納得した。


 それは兄上も同じだったようで、キッと彼を睨みつけていた。



「魔術師か……、ウィルの魔力を弾く程の力……」



 国でもトップに入るほどの力を持つ兄上と僕。そんな僕の魔力を上回る力を持つ執事。

 おそらくこの炎は彼の魔術によって発動されていて、魔力が続く限り消えない炎なのだろう。



 悔しくて、とにかく悔しくて。何も出来ない自分に腹が立つ。握りしめた手にも力が入る。


 そんな握りしめた僕の手に兄上は自分の手を重ねてゆっくりと僕の手を開かせた。



「痛みは時に恐怖に飲み込まれる。ゆっくり息を吸って頭を冷静にさせるんだ。」



 膝をつき固く握り締められた僕の手を全部開けば、その途端ジンジンと痛みが広がり出す。目を落とせば血が滲んでいる手のひらが目に映った。



 痛い……



 タラりと傷から流れる落ちる血と感じる痛みに僕は冷静さを取り戻し、大きく深呼吸をする。



 目を閉じて、ゆっくり呼吸をして、頭をクリアにして考えれば、周りの雑音が消える。



 その時だった。



『ウィル……助けて……』



 脳に直接響くように聞こえた姉上の声に、僕は考えるよりも先に走り出していた。


 そんな僕を追うように兄上もまだ炎が包み込んでいる屋敷へと走り出す。



「ウィル!?」

「姉上の声が聞こえました!!!助けてって、姉上の声が!!」

「っ!!……わかった、僕もついて行くよ」



 走りながら叫ぶように言葉を投げかける僕に、兄上はそれ以上何も言わずに僕の後ろをついてきてくれる。



「……1階の1番奥…………、そこに扉があるはずです!」



 僅かに開きっぱなしになっていた玄関の扉から中に入ればモワッとした熱い空気が肌に触れた。


 まだ一階には火の手が回ってきていないようだが、早くしないと火はすぐにここも燃やし尽くすだろう。


 僕は他には一切見向きもせず一直線に目的の場所へと足を進めた。



 モリンナがセリンジャー家へ来た後に1度、父様と兄上とモリンナの屋敷について話し合った。その時に地下へと繋がるのでは無いかと思える扉は全部で2つしかなく、その2つは2階と3階にあったと記憶していた。


 でも実際は各階に1つずつあったんだ……。



 忘れていた記憶がかすかに思い起こされる。


 記憶の中のまだ幼い僕はモリンナとかくれんぼをして遊んでいた時、隠れた部屋のドアの隙間から廊下を覗いていると伯爵がぐったりとしたメイド服を着た女性を抱えてこの扉の中へ入っていくのを目撃していた。


 ただ、その時は体調の悪くなったメイドを運んでいるのかと思っていたため大して気にしておらずこれまで忘れていたが……



 その扉が今はない。つまり人には知られたくない部屋だ。

 わざわざ扉を隠すのには理由がある。その理由が上の階と同じ、地下への階段だったとすれば……



 何の変哲もないただの壁の前で足を止め、ゆっくりと手伸ばし壁に触れ魔力を込めれば、再びガラスが割れるような音と共に光が弾け目の前に扉が現れた。



「まさか、ここにも……」



 またしても突然目の前に現れた扉に兄上も驚きの声を上げていた。


 すぐさま風を使い鋭い刃のようにして扉に向けて魔術を発動すれば、目の前の扉は一瞬にしてバラバラになり、音を立ててその場に崩れ落ちる。





 そして現れた真っ暗な地下へと繋がる階段に、僕は心の奥底が冷えるのを感じた。














20210926.


次回更新予定日は9月29日です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ