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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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69.それが無性に嬉しくて。(ウィリアム目線)

ブックマーク&作品評価ありがとうございます。






「ウィル!!」


だだっ広い廊下に出て記憶を頼りに階段を駆け上がる。無我夢中になって走っていると後ろから手を引かれ僕は足を止めた。



「兄、うえ……」



振り返れば兄上がいて、その表情は酷く暗く顔色も悪い。



「どうしたんだ、急に。勝手な行動は、」

「だって!!!……だって、姉上が……、絶対いるはずなんです!!魔力が途切れるまで姉上は確かにこの屋敷にいました!だから……!!」

「落ち着くんだ、ウィル。焦る気持ちも分かるよ。ティアは僕の大切な妹だからね。」



そう言われハッとした。姉上が見つからない事に苦しんでいるのは僕だけじゃない。兄上の表情を見ていかに僕が自分の事しか考えられていなかったのか、今初めて理解した。


僕にとって姉上は大切な人。でも、兄上にとっては血の繋がった兄妹だ。心配していないわけが無い。



「あ……っ、も、申し訳、ございません……」

「ううん、ウィルがティアの事をそれほど大事に思っていてくれてる事が分かって僕は嬉しいよ。でもね、人は焦れば焦るほど視野が狭くなる。落ち着いて、深呼吸して、周りをちゃんと見るんだ。この家のことは僕達よりもウィルの方が知ってるだろう?」

「はい。」



落ち着いて、呼吸をゆっくりと整える。目を閉じ大きく吸ってゆっくり吐けばさっきよりも頭がスッキリした気がする。それに閉じた目を開けば、さっきよりも視界がクリアに感じる。



3階の廊下を見渡せば、僕達以外は誰も居なくて、静かな空気が流れる。



「…………っ!!」


そこで僕はひとつの違和感に気づいた。確かにあるはずのものがそこには無い。


確かに昔のことは曖昧である。ただ、それでも一つだけ確かに覚えていることがあった。



「兄上、ここ……」

「そこの壁がどうかしたのかい?」



そこにあるはずなのに無いもの。壁に手をつければヒンヤリとした感覚が指先から伝わってくる。



「昔ここで遊んでいたら伯爵に怒鳴られたことがありました。なぜ怒鳴られたのか当時は分からなくて、でもモリンナが酷く泣いていて僕はどうすればいいか分からなくて。そんな事初めての経験で。だからハッキリと覚えています。」


そう言って僕は兄上の目を真っ直ぐに捉える。



「階段の正面のここには、ドアがありました。」



断言すれば、兄上は一瞬驚いたように目を見開いた。

だけど直ぐに僕から目を逸らす。



信じて、貰えない……


確かにここにはドアがあった。でもそれはもうだいぶ前の記憶で。そんな子供の頃の記憶なんて誰も信じない。


兄上の行動に心がズキンと痛み、僕は視線を下げて床を見つめ手をにぎりしめる事しか出来ない。



『何も出来ない無力な子供』


再びそれを思い知らされたような気がした。




「魔力で消してるのかもしれないね。」


コンコン、と手の甲で壁を叩く音に弾けるように顔を上げると不思議そうに壁を眺める兄上の横顔が見える。



「なんで……」

「なんで?」

「信じてくれるのですか……?」



考えるより前に言葉が零れ落ちれば、兄上は相変わらず優しい笑顔を見せてくれる。



「僕は可愛い弟の言う事は全部信じるよ。それにウィルは嘘をつく男じゃないだろ?」



頭に手を置かれポンポンと軽く撫でられれば、無性に涙が溢れそうになった。

僕は兄上のこの笑顔に何度も救われてきた。優しく、時に厳しく。僕にたくさんの知識と戦う術を教えてくれた。姉上と同じように僕を大切にしてくれた。



それが無性に嬉しくて……



「ありがとう、ございます……」



震える唇でそう言った僕を見れば、兄上は再び壁に視線を戻した。



コンコン、と壁を叩く音が静かな廊下に響く。


しかしいくら叩いても音に変化はなく、ただの壁にしか見えない。


兄上は魔力で隠したのかもしれないと言った。魔力でそんなことが出来るなんて知らなくて、なら魔力の使い方はまだまだたくさんあるのかもしれない。


それはつまり……



「魔力で魔力を弾くことはできませんか?」

「……なるほど、その手があったか」



ここに来る前、姉上に飛ばしていた魔力が途切れた。それはもしかしたら途切れたのではなく、より強い魔力で弾かれたのではないか。そう思った。


あの時の僕の魔力は繋がりが持てるほどの魔力しか飛ばしてなかった。だから簡単に負けた。

でも今、強い魔力を使えばもしかしたら勝てるかもしれない。



「試してみる価値はあるね。」

「はい。」



力強くそう答え、僕はドアのあったであろう場所の壁に手を付け集中する。

手のひらに魔力を集めるように意識すればゆっくりと魔力が集まるのがわかる。


そして、大きな魔力が集まった所でガラスが割れるような音と共に光が弾け目の前に記憶の中と同じドアが現れた。




「やっぱり、あった……」




突然目の前に現れたドアに僕は大きく息を吐く。見つけられた安堵と、この先にどんな部屋が続いているのか不安が入り交じったそれは静かな廊下にゆっくりと溶けていった。












20210914.


次回更新予定日は9月18日です。




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