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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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68.【SS】4ヶ月目のチョコレートの約束

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!


誤字脱字報告もいつも助けられています!!





「ヴィーおじ様、今日もよろしくお願いいたします!」

「おう!そんじゃやるか!」



 そう言ってもう恒例となったヴィーおじ様の大きなシャツを頭から勢いよくズボッと被せられる。



「悪くねぇな」


 なんて呟きながら顎をさする姿は何だか変態オヤジにしか見えない。


 一歩間違えたら危ない発言に私がゴホンと咳払いをすればヴィーおじ様は慌てて両手を上に挙げて無実を証明するかのようなポーズを取った。



「冗談だよ、冗談!流石に本気でそんなこと言ったらホークスの旦那だけじゃなく坊ちゃん方に睨まれかねない。いや、睨まれるで済めばいい方か……」



 なんて呟きながら明らかに遠い目をしているヴィーおじ様。

 と思えば直ぐに復活して手際よく準備を始める。


 そんなヴィーおじ様を見て、私もキッチンの隅に常備されている踏み台を今日は自分で運んでから手を綺麗に洗い準備をする。



「にしても珍しいな、お嬢がリクエストしてくるなんて。なんで今日はチョコだったんだ?」



 首を傾げながらせかせかと準備を進めるヴィーおじ様。

 普段は作りたいお菓子を指定したりせずヴィーおじ様の提案に賛成するばかりだったのに今回は自分からチョコを提案した。

 それもそのはず――



「バレンタインだからですわ!」


 食い気味に答えれば、なんだそれとでも言いたげな表情をこちらに向ける。



「ばれん…た?なんだそれ」

「女性が好きな殿方にチョコを渡す日ですわ!好きな方だけではなく、普段お世話になっている方や友達なんかにもあげたりする日ですの!」

「へぇ、そんな日があんのか」

「はい!あっ、いえ、小説の中に出てきて、だから実際にあるかは分からないのですけれど」



 流石に前世でそんな文化があったの~なんて言えない。言った瞬間、何言ってんだこいつ。なんて目で見られるのが容易に想像できる。



「へぇ、そうなんか。お嬢も女だな、そんなロマンチックな小説読むなんて」

「あら、ロマンス小説って殿方が想像しているよりも遥かに面白く素敵なものですわ。それに殿方こそ女性の心を理解するために見るべきとも思いますわ」

「おぉ、それなら坊ちゃん方に読ませてやれよ。あのふたりの方がどう考えても必要だろ」

「ユリウスお兄様とウィルですか?」

「拗らせてるからな、2人とも」



 拗らせてる。そう言われてもピンと来なくて今度は私が首を傾げる。



 お兄様は確かにシスコン気味なところはあるけれど…………いや、あ、うん、拗らせてるな、確かに。



 記憶を辿れば確かにお兄様のシスコンは度が過ぎている。


 身に覚えがありすぎて傾けていた首をスっと戻す。が、またすぐに首を傾げる。


 だって、ウィルは別に拗らしてなんかいない。むしろ真っ直ぐにすくすくと良い子へと成長している。

 そんなウィルが可愛くて可愛くて可愛くて……尊いっ!!!!と最近では勝手に推しメンと化している。



 どちらかと言えば私の方が拗らせてる感あるけれど、この事は黙っておこう。








 ◇◆◇





「よしっ、完成!」

「お嬢どんどん上達するな。特にこの生チョコ?ってのは美味すぎる!」



 そう興奮しながらお皿に乗せてある生チョコをホイホイと口に放り込むヴィーおじ様。



「ヴィーおじ様にそう言って貰えて安心しました。お手伝いして頂きありがとうございます」



 チョコはチョコでも何作ろうかと考えた時にこの世界ではまだ見た事のない物を作って渡したくて、唯一レシピを見ること無く作れる生チョコをヴィーおじ様に提案したら二つ返事が返ってきた。


 そして材料などを伝え用意してもらい今回は私主導でヴィーおじ様にはお手伝いをしてもらう形で作ったのだ。……が、想像以上に上手くいったのはやはりヴィーおじ様のおかげだろう。


 出来上がった綺麗な形の生チョコの中でも特に形のいいものを選んで、丁寧に小さな箱に移してラッピングする。



 そしてしなくていいと毎回言われるキッチンの掃除をある程度終わらせると、私は箱の中の生チョコが崩れないように丁寧に両手で抱えてお礼を言ってキッチンを後にした。




 この世界にはバレンタインの文化がない。それに割といつもお菓子を作ってる為あまり新鮮味も無いかもしれない。


 それでもこういうイベントを楽しみたいと思うのは女子特有の考えだろうか。


 この世界にはこういうイベントがかなり少ない。それに政略結婚が多い世界だからこそイベントが増えればもっと楽しい世界になると思うんだよぁ……なんて考えたり。




「姉上っ!」



 廊下を歩いていれば後ろから不意に声をかけられる。チョコ立ちを落とさないように気をつけて振り返れば笑顔で私の元まで走ってくるウィルの姿があった。



「どちらに行ってらっしゃったんですか……ってその箱はなんですか?」



 隣に並べば私の手元で抱えられているラッピングされた箱を見て首を傾げた。



「これはねバレンタインチョコって言って、毎年2月14日に女の子が男の人に告白する時に一緒に渡すチョコなんだけど、」

「えっ!?あ、姉上っ、す、好きな方がいらっしゃるのですか!?」

「えっ、ううん、特にいないけれど……」

「そ、うなのですね……、ではそのチョコは?」

「告白するだけじゃなくてね、友達や家族にあげてもいいの。だからこれはお父様やお母様、ユリウスお兄様。それからウィルに渡そうと思って」

「ぼく、にもあるんですか……?」

「もちろん!ウィルは私の大切な弟ですもの!」



 この家に来て4ヶ月経った今でもウィルは色々なことを遠慮する。この家に来る前の状況のせいなのかもしれない。

 私たちはウィルの事を家族だと思っているけれど、ウィルはまだ家族というものに遠慮しているように感じる。

 だからこそ私はウィルに沢山伝えたい。ウィルはもう私たちの家族で大切な存在なのだと。



 自分のチョコがあることに少しだけ驚いていたウィルは私の言葉に目を細め嬉しそうに笑顔を見せた。



「ウィルのはこれ。はいどうぞ」



 そう言って薄い水色のリボンの巻かれた箱をウィルに渡す。

 ラッピングを買いに行った時にたまたま見つけたこのリボンにウィルの顔が浮かび即買してしまった。だけどもう先にお父様達のリボンは買っていたため、この色のリボンはウィルだけだ。



「この色、ウィルの瞳の色と同じですごく綺麗ね。私水色って一番好きなの」

「っ、あ、ありがとうございます……、あの!今食べてもいいですか!?」

「もちろん!」



 そう言うとウィルは丁寧にリボンを解き箱を開け、生チョコを一つとって口に運んだ。



「っ!!すごい!美味しいです!!こんなに美味しいチョコ初めて食べました!」

「ふふっ、これはね生チョコっていうの。口の中で蕩けるでしょ?」

「はい!あっという間に無くなってしまいました!」



 ウィルは驚いたように目を見開いてからまたすぐにチョコに手を伸ばし口へと運ぶ。


 その嬉しそうな顔を見て、それだけで私はとても嬉しくなる。

 私の作ったお菓子を食べて喜んでくれたり嬉しそうに笑ってくれたり、幸せそうにお菓子を口に運んでくれたり。こうやってウィルが色々な表情を見せてくれるようになった事もそうだけど、何よりもウィルがこんな風に私たち家族と話してくれるようになったこと。それが嬉しくて、私の頬は緩む一方だ。



「また来年、またチョコを僕に作ってくれますか?」

「もちろん!来年も再来年もその次もずっと作ってあげるわ!」

「……約束、です」



 ウィルが自分から言ってくれた『約束』の言葉。

 ウィルが自分からその言葉を口にしたのは初めてで。ちゃんとウィルが未来を見ていると分かって鼻先がツンとして思わず涙が流れそうになった。




 また来年も。その次も。その先も。

 私たちの関係が変わる前も、変わってからもずっと。私は毎年バレンタインの日にだけ、この生チョコを作ってウィルに渡した。



 そしてユリウスお兄様の私からのチョコの自慢話により、バレンタインが国のイベントになるのはもう少しあとの話である。









20210914.


次回更新予定日は9月15日です。



今日で小説を書き始めて4ヶ月が経ちました。あっという間ですね!本当に!!!

そんな今回は全然季節は違いますが、バレンタインについて書かせていただきました!(ウィルが家族になってから4ヶ月は大体2月頃の設定なので……。)

ウィルの幸せな姿を早く見たいものです。


そして、4ヶ月と同時にこのお話で20万字突破しました!正直こんなに続くとは思ってもみなかったです。

まだまだ続くティアとウィルの物語をこれからもよろしくお願いいたします!!




雨宮レイ.

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