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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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63.この力は姉上を守るためにある。(ウィリアム目線)

ブックマーク&作品評価ありがとうございます。

 




「今戻った」

「父上、馬の準備は出来ています。国はなんと?」

「すぐ早馬で書簡を送ってくれるそうだ。近衛兵団の準備もしてくれている。私達も直ぐに向かおう。」

「かしこまりました。それからティアの位置が分かりました。やはりガンバッタロー伯爵家の屋敷の中に反応を感じました。」

「……そうか」



 父様と馬車で屋敷に戻ると兄上が父様を出迎える。早足で歩きながら簡潔に報告をする後ろを僕も早足で追いかける。



 屋敷の中に入れば、執事達が剣などの必要な物を揃えて待っていて、父様は直ぐにそれを手に取り帯刀する。



「ウィルはこれを。馬は僕の後ろに乗ればいい。何があるか分からないから自分の身は自分で守るんだ。でも、何よりもティアを優先に。僕らの持つ(魔力)は大切な者を守る為にある。」

「はい。兄上。」



 兄上に手渡された剣を僕も腰から提げる。大切な者……、僕にとって姉上は自分の命よりも大切な人だ。僕の力は姉上を守るためにあり、姉上を守るために鍛えてきた。



 次こそはこの力で、姉上を守ってみせる。



 兄上の言葉に強く頷くと、兄上は足早に屋敷の外へと向かった。



 服の上から姉上から貰ったネックレスのプレートを握りしめる。


 

 どうか、ご無事で。必ず僕が助けます。


 どうか、どうか……。今はそう願うことしか出来ないけれど、必ず僕が助け出すと心に誓い兄上を追うように屋敷を後にした。






 隣国のカロセリン王国までは馬で走っても5~6時間はかかる。

 さらにそこから西にあるガンバッタロー伯爵家までと考えるとさらに時間がかかるだろう。


 乗り慣れない馬の揺れに何とか必死に耐えながら、今僕達は急いで隣国へと向かっている。


 そんな僕は、まだ1人で馬に乗ることが出来ないため兄上の後ろに掴まりながら、初めて行う魔力操作に集中していた。



「ウィル!様子はどうだい!?」

「今のところ動きはありません!」

「分かった。引き続き魔力を飛ばしてくれ。だが無理はするな」

「はい!」



 僕は今、文字通り()()()()()()、その魔力で姉上や姉上の周りの状況を感じとっている。


 僕たちが王宮へ行っている間に兄上が姉上を探すためにしていた事を、馬を走らせている兄上の代わりに今は僕がやっているのだが、初めての魔力操作に集中力がかなり必要で正直かなりキツイ。


 でも、姉上の事を思えばそんな事言ってられない。少しでも姉上の動きを把握し、何かあれば直ぐに兄上や父様に伝える。

 今、ここで僕にできるのはこれしかない。これでしか役に立てない。


 だからこそ悲観なんてしてられない。やれる事が限られるならやれる事をやるしかない。



 魔力を飛ばす。意識を集中させ魔力を飛ばすことにより遠く離れた場所に建物などを魔力を通じて見る事が出来る。そのため、出発前に兄上に地図を見せてもらいガンバッタロー伯爵家のある場所を把握しそこに向けて魔力を飛ばせば、やたらと煌びやかな屋敷の一角に姉上の反応を見つける。


 魔力の大小によってその力には差が出るが、幸か不幸か僕には魔力が沢山あった。そのおかげでハッキリと脳内に屋敷の映像が映し出されている。

 ()()()姉上のいる部屋の中までは見れないけれど、姉上がどこにいるか光の点となり脳内に映し出されている。

 さらに近くにいる者の反応も感じ取ることが出来るため、もし姉上に何かあればすぐに分かる。



 こんな魔力の使い方があるなんて知らなかった。

 知っていたらもしかしたら姉上を……、なんて、たらればばかりが思い浮かびその度に心臓がキューっと苦しくなる。




 数時間馬を走らせれば空がほんのり明るくなり始める。


 もうすぐ夜が明ける……、ここからは時間が勝負だ。



 朝になれば、伯爵は動き出すかもしれない。もし姉上がガンバッタロー伯爵家から連れ出され他の家へでも連れていかれたら姉上を取り戻すことが難しくなる。


 ガンバッタロー伯爵家への立ち入り許可は今書簡を送って貰っているので僕たちが到着する頃には取れているだろう。しかし他家への立ち入りは無断侵入となり国際問題となってしまう。いちいち国に許可を取ってからでは証拠や姉上はどこかに隠されてしまうだろう。



 今はガンバッタロー伯爵家にいると分かった上で魔力を飛ばしているから見つけられているものの、もしどこに行ったか分からなくなれば探すのにはかなりの時間がかかる。万が一国外へ連れていかれでもしたら探し当てるのはほぼ不可能だろう。



 その前に、何としてでも助け出す。




「っ!?!」


 まさか、もう……!?



 突然光の点が1つ姉上の部屋の前に動き近くで停止する。



「何かあったのか!?」


 思わず息を飲んだ事に気づいた兄上が焦ったように声を上げる。



「誰かが姉上に接触しました」



 集中を切らさないよう意識を正しそう伝えれば兄上の焦りが背中から伝わってくる。



 緊張からか、やけに心臓が早く動いている。

 なのに呼吸は浅いから苦しさを感じる。


 片手で服の上からネックレスを握れば、無意識に力がこもる。



 意識を集中させ魔力をとぎらせないようにしていると、停止していた光は暫くすると何事も無かったように再び動き始め姉上から離れていくのが見える。


 その事に、浅くなっていた呼吸もやっと深く、大きく呼吸が出来るようになった。



「よかった……、姉上は無事です。」

「そうか、分かった」



 姉上の無事を伝えれば兄上も安心したのか、ふぅ、と息を吐く音が聞こえた。



 それからしばらくして隣国へと入る。


 空はいつの間にか眩しいほどに明るくなっていた。


 まだ動きのない事に安心ばかりしていられない。いつ動き出すか分からない。

 恐らく考える事は皆同じなのだろう。馬を走らせる父様と兄上にも緊張が走っているのが刺さるように伝わってくる。








20210829.


次回更新予定日は9月1日です。



8月もありがとうございました!9月にまたお会いしましょう!

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