59.やっぱりモリンナの実家でした。
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「ほぉ、この少女がのぉ。 」
「はい。モリンナお嬢様が好きにして良いと。」
「ふはっ、モリンナもたまには役に立つもんだなぁ。これは嘸かし高く売れるぅ。……して、モリンナは?」
「お嬢様は現在隣国、クライシス王国にて滞在しております。連れ戻しましょうか?」
「クライシス……、まぁ良い。放っておけ。あやつはどうせ何も知らんのだからなぁ。」
やっぱり……、ここはモリンナの……。そしてこの人がモリンナの父親……
まだ夜も明けていない深夜の暗闇の中ガチャンと重たいドアの鍵があけられる音とともに地下に響くドアを開ける音、カツカツと歩く足音
そして目の前に現れたのはさっきここに連れてきた破落戸とは違い、身なりを綺麗に整えた執事服を着た20代後半から30代前半くらいの男性。
「伯爵様がお呼びです。立って出なさい」
重く太い鎖の錠を解きギィと錆びた音を立てて鉄格子を開ければ見下しながら冷たい瞳で私に命令する。
自由な足と拘束されたままの手で何とか立ち上がり言われた通りにすれば、首の後ろをまるで猫を掴むかのようにグッと掴まれ痛みが走る。
「何かしたら首を折ります。死にたくなければ大人しく着いてきなさい。」
丁寧でも低く冷たさを感じる言葉に私は何も言わずにコクンと1度首を縦に振る。すると何とも強引に首を掴んだ手を引っ張られ、私の体は前のめりになりながら引かれるがままに足を前に出し歩くしかない。
屋敷の中に連れられ長い廊下を歩く。深夜だからか、使用人は誰もおらず、静かな暗闇の中を真っ直ぐに引っ張られながら進む。
そしてある部屋の前に着くと、執事服を着た男は私の首から手を離しノックをしてから扉を開け、私の背中を思いっきり突き飛ばし床に倒れる私を見ながら部屋へと入り扉を閉めた。
そして今、床に倒れたままの私を見ながら、まん丸と肥えベタベタしそうな肌に汗をかきながらハアハアと息を荒くした男が舐め回すように私を見ている。
会話の内容からしてやはりこのキモぶ……キモ豚がモリンナの父親のようだ。しかし見た目は全く似てない。似ているといえば唯一金色の髪色くらいだろうか。
そこだけはモリンナと同じだと言えよう。ただ、親子ですと言われなければ親子とは判断できないほど似てないけれども。
ただ会話からモリンナは自分の父親の悪行を知らないらしい。だったら何故私を誘拐させたのだろうか疑問が残る。
「ふぅむ〜、これは本当に上玉だのぉ、シュイー侯爵……いや、ビレッジ公爵がいいかもしれんなぁ。いやぁ、これはさぞ公爵も調教しがいがあると喜ばれるだろうぞ!」
太く熊のような手にジャラジャラとついた宝石たちが音を立てながら揺れる。その手は汚らしく生えている髭をゆっくりと整えるように撫でる。
その表情はとにかく気持ち悪いの一言に尽きる。
ニヤリと笑っている顔はとにかく気持ちが悪く不快だ。ベタベタしてそうな肌に浮かぶ脂汗すら汚らしい。
指や腕から生える毛がとにかく汚く見せるのに対し、宝石達はキラキラと輝きを放っている。
「セバス、この少女をあの部屋へ閉じ込めておけぇ。くれぐれも傷をつけることの無いようになぁ。」
「はい。かしこまりました。」
そう言うとセバスと呼ばれた執事は再び私の首を掴み「立て」と命令した。
ゆっくりと縛られた両手を床につき足裏を床につけてグッと力を入れる。その時、さっき転けた時に膝を擦りむいてしまったらしくジンジンとした痛みが膝からじわっと広がった。
タラりと流れた血は脛を流れ落ちる。
高そうな絨毯に血の痕がついてるのを見て慌ててその上に足を置き隠す。
しかし強引に引っ張られたせいで体はグラつき、その場から足が離れる。
見つかったら酷い扱いをされるかもしれない。
そう思い心の中で見つからない事を祈る。
が、どうやら今は機嫌がさぞいいらしい。豪快に笑いながら少し離れた場所にあるソファーにドゴン!!と大きな音を立てて座ればローテーブルに置いてあったワインを一気に煽った。
そんな姿を私は掴まれ引かれるまま横目に見て少しホッとしたのだった。
そして連れてこられたのはさっきの地下牢…………ではなく、屋敷内の一室だった。階段を上り恐らく最上階である3階の1番奥の部屋。
その部屋の鍵を上と下の2箇所別々の鍵で開ければ再び私の背中を思いっきり突き飛ばし私を部屋の中へと追いやった。
「お前はここで大人しくしていろ。」
それだけを言うと扉を閉じガチャガチャと2箇所ある鍵を両方外から締められた。
窓ひとつない部屋は扉を閉められたことによって真っ暗で何も見えない。感覚を頼りにゆっくりと扉に近づき聞き耳を立てるように耳を扉につけ、扉の外に人の気配がないのを確認する。
あのセバスと呼ばれた人が既に立ち去ったあとだとわかり扉に手をかけて体を立ち上がらせる。
確認するように鍵穴やドアノブがあるであろう辺りを手でガサガサと触れるが、いつまでたってもその手に鍵どころかドアノブすら触れることは無く、思わず、はぁ!?と叫びそうになってしまったのを慌てて飲み込んだ。
どういうこと?なんで鍵穴どころかドアノブまで見つからないの!?
何度触っても、全体を触れても一向に凹凸は見つからない。
何この部屋、外からしか開けれない部屋って事……?
思わず眉をひそめるが、でも、そこまでハッキリされていればこの部屋がそういう事の為に作られた部屋なのだとすぐに分かる。
「とりあえず部屋の中を確認しないと。」
真っ暗で今は何も見えない。でも窓も何も無いとなると必ずどこかに電気をつける場所があるはずだ。
私は手当たり次第に縛られた手で壁を触る。すると手が何か出っ張りに触れると、カチッと音を立てて一気に光が目に差し込み思わず目を閉じた。
急に明るくなった事に目が痛くなる。ギューッと1度目を閉じてから目を開き部屋を見回し私は思わず「わぁ……」と声をこぼしていた。
目の前に広がるのは小さな部屋だが、壁一面に設置された本棚に収められた本や何かの資料を纏めているらしいファイルの束。
正面と左右の3面全て上から下までにギッシリと詰められたそれらを見て思わず声がこぼれたのは仕方の無いことだと思う。
そのうちのひとつをとって見てみれば、どうやら絵本のようだった。
モリンナが今よりも小さな時に読んでいたものだろうか。
ペラペラとページを捲れば所々に落書きがある。
子供の落書きらしく丸い円に顔が書かれているものが3つ、いや3人並んでいて皆笑顔に笑っている。
その円の上には『パパ』『ママ』『わたし』とかろうじて読める字で書かれている。
モリンナはお父さんとお母さんが大好きだったんだなぁ。
そう思ったのも束の間、すぐに違和感が頭をよぎる。
モリンナの居場所を知った後に放った言葉。
『まぁ良い。放っておけ。あやつはどうせ何も知らんのだからなぁ。』
モリンナは行き先を伝えていなかった?
モリンナの居場所を知ってなお心配どころか放っておけと言ったのはなぜ?
悪事を娘に隠している、のは分かる。しかし、それにしてもモリンナに対して『たまには役に立つ』や、『あやつ』などと言った発言はやはり引っかかるものがある。
もしかして、親子関係は上手くいっていなかった……?
絵本を片付け今度は本ではなく何かの資料のファイルを取り出す。
何気なく取り出したファイルのページをペラペラ捲って、私はあるページでピタリと手を止めた。
20210817.
次回更新予定日は8月23日です。
◎ご報告と更新日変更についての知らせ◎
この度【HJ小説大賞2021前期】の一次選考通過しました。まさか一次選考通過するとは思っていなかったので、とても嬉しいです。
まだ二次選考などもありますが、人生で初めて小説を書き始めてからたった3ヶ月で一次選考通過という貴重な経験をさせて頂けたこと、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
いつもこの作品を読んでくださっている読者様、ブックマークしてくださってる方、作品評価をしてくださった方、感想をくださった方全ての方に支えられています。感謝。
これからもどうか、よろしくお願いいたします!!
また、これまで月曜日と木曜日の週2回更新してきましたが、次回の更新より土曜日と水曜日へと曜日を変更させていただきます。
よろしくお願いいたします!
雨宮レイ.
20210819.




