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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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43.お茶会再び。今度こそフラグ回避を!

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!






「こんにちは、クリスティア様。今日は天気が良いですね。」

「本日はお招きいただきありがとうございます。アルフレッド殿下」



10月も半ばになったある日、私はアルフレッド殿下から個人的なお茶会に招待され王宮へと足を運んでいた。



もう何度目かになる薔薇園の中心にある小さな広場のような場所に置かれたお茶会用のテーブルに案内されると、今日も今日とて離れたところに使用人や騎士の方が控えていて、殿下自らが私の椅子を引き座らせてくれた挙句、ティーポットを手にしお茶をカップへと注いでくれている。



テーブルの上にはオシャレに花が飾られた花瓶や可愛らしいお菓子の乗ったアフタヌーンティースタンドが置かれており、3人分のお皿が等間隔にセッティングされている。



……そう、3人分。



「ウィリアムもこちらへどうぞ。クリスティア様のご姉弟なのですから。」

「姉弟とはいえ義理ですので。」

「それでもクリスティア様のご家族を蔑ろにする理由にはなりません。クリスティア様の弟君として、大切なお客人として本日は誠心誠意おもてなしさせて頂きます。」

「お心遣い感謝致します。しかし本日は姉上の付き人として参りましたので、どうかひとりの男として見ていただければと思います。」



殿下に席に着くよう促されるもそれを笑顔で拒否しているのは、椅子に座った私の斜め後ろに立って控えているウィルである。

アルフレッド殿下もウィルも笑顔を崩さず言葉を交わしているのに、何故か2人の言葉が刺々しく感じるのは是非とも気の所為であって欲しい。



きっと、お兄様に魔術の教えを乞う2人だし、お互いに思う事があるのよね。でも殿下がウィルのことをウィリアムって名前を呼び捨てにするくらい仲良くなってるならきっといい関係なのね。


なんて想像しては、何事にも一生懸命取り組み、その才能や落ち着いた行動から少し大人びた印象を受けていたウィルの年相応の姿が垣間見えた気がしてちょっと嬉しくなる。



「まるでクリスティア様を守る騎士のようですね。」

「そうでありたいと願っております。」

「でも、美しいお姫様(プリンセス)と結ばれるのは王子ですよ。」

「今、(ちまた)では騎士と姫が結ばれる物語が流行しているようです。ですので、王子だけとは限らないかと。」

「…………??」



なぜかニッコリと笑顔を浮かべたウィルとアルフレッド殿下に私は1人頭にはてなマークを浮かべて置いてけぼりを食らっている。が、どうやら2人は最近流行りの小説の話をしているらしい。



王子様とお姫様の物語は王道だが、巷では騎士様とお姫様の物語が流行っているというウィルの言葉に私はそうなんだ……、なんて内心で思いながら蚊帳の外に追い出された状態で聞いていた。


本は好きだけれど、ロマンス小説をあまり読まない私にとってはどちらが流行っていようが正直どっちでもいい。むしろそれは人それぞれの好み次第では?と内心で思うが、口出しをするような真似はしない。



……にしても、何でウィルがそんな事を知っているの?


なんて疑問は、殿下からの謎の圧力を感じる問い掛けによってどこかへ飛んで行った。



「クリスティア様は王子と騎士、どちらがお好みですか?」

「僕も知りたいです!姉上はどちらが好きですか!?」



殿下のその言葉に私の後ろに控えていたウィルも珍しく声を張り上げて私に詰寄る。


2人とも笑顔を浮かべてはいるけれど目が笑っていない様な気がするのは気のせいだろうか……?



それにどちらが好きかと問われても、そんなこと1度も考えたことがないから正直どちらでもいい。……いや、強いて言うなら()()()()()である。



この国で例えた時に、王子といえば目の前のアルフレッド、騎士様といえば、先日出会ったエルガーだ。他にもロマンス小説の男主人公になりそうなのは大体()()()()()であろう。

となると、是非とも彼らとは関わりたくないと思っている私にとってはどちらも嫌だ。というのが正直な所。


手をバッテンにしてNo!と叫びたいくらいにはどちらも拒否させて頂きたい。



謎の圧力(プレッシャー)を感じつつ、「えっと……」と口にすれば2人の視線は真っ直ぐに私に向けられる。



「私は、普通の殿方がいいですわ……?」

「「えっ……?」」



王子様でも、騎士様でもどちらでもないと言うと2人は声を揃えてポカンと口を開けた。



「私は私だけを見てくれる人と静かに平和に暮らすのが夢ですの。ですので、王子様や騎士様との大恋愛よりも、普通の殿方との普通の恋に憧れますわ。」



静かに平和に。それだけでも私が目指している明るい未来だと言えるだろう。

だからもし出来る事なら私は、ゲームの攻略キャラ以外の人で、私だけを好きになってくれる普通の人と恋愛結婚したい。もっと正直にいえば貴族なんて肩書きも捨ててしまいたいくらいだけど。


……もちろん、そんなことが叶うわけないと分かっているから憧れなのだ。


それでも、王子様や騎士様なんて女性に人気のある殿方は是非とも避けたいのが正直な所である。



「クリスティア様には……、その普通の殿方に当てはまる方がいらっしゃるのですか?」



当てはまる……、それはつまり好きな人がいるのかって事だろうか。だとしたらそれもNoである。


そのため、いません。と答えようとした時、ふとあることを思い出した私は喉元まで出かかった言葉をそのままゴクンと飲み込み頭をフル回転させた。



まだアルフレッドのフラグ回避に燃えていた当時、私は婚約者になる未来を回避するために、好きな人がいると嘘をつく練習をしていた。

そしてゲームの年齢になった今でも婚約の話が出てきていないところを見ると、回避された可能性が高いのである。もちろんアルフレッドルートではなかったという可能性もあるが。


しかし、今後まだどうなるか分からない。それなら例え今の段階で0.0001%の可能性しかないとしてもその可能性を限りなく0に近付けといて損は無いのではないかと思ったのだ。

そこまで考えると、次を考えるより先に言葉が出る。



「……はい、私にはお慕いしている方がいます。」



何度も練習した挙句1度も使うことのなかったセリフ。まさか数年越しに使う事になるとは思わなかった。ただ、練習の成果なのか、思いの外すんなりと口から出てきたことに対して自分でも驚いている。



そんな私を余所にシーン……、と明らかに静まり返った場の空気はなんとも気まずい。きっとほんの数秒だったと思うけど、体感としては1分くらいに長く感じた静寂を壊したのはウィルだった。



「姉上……?それは本当ですか……?」



力なく私に投げかけられた言葉に私は首をゆっくりと縦に振り肯定する。

つい先日、お兄様と3人で話した時に私は好きな人はいないと言っていたのもあって、きっとこの短期間で好きな人が出来たことに驚いたのだろう。



後でちゃんと訂正しないと。だから今だけは嘘をつくの許して……


今、殿下の前で嘘です、なんて流石に言えないため、心の中でウィルにごめんね、と謝りつつ、ウィルには申し訳ないけどしばらく騙されていてと不謹慎にも願う。敵を騙すなら味方からって言うし、明るい未来に少しでも近づくためにはこの嘘もきっと必要なんだ。



ただ、やはり嘘をつくのは少し胸が痛い。さっきまで笑顔を浮かべていたウィルの表情には今は陰がかかっている。

そんな表情を見てしまえば余計に私の心はズキン、と酷く痛んだ。








20210629.


次回更新予定日は7月8日です。



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