表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/85

40.近衛騎士団団長に何故か嫌われています。

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!

 




 数日後、私とお兄様、ウィルは揃って王宮へと来ていた。

 王宮の一角にある訓練スペースにメイド服を着た使用人の方に案内されると、そこには数ヶ月ぶりに会うアルフレッド殿下がいて柔らかい笑顔を浮かべて私達を迎えてくれた。



 その後挨拶も早々に切り上げ、すぐに魔力操作の訓練に入るということでウィルとお兄様、アルフレッド殿下をその場に残し、もし魔力が暴走したりしても危なくないようにと殿下が気を遣ってくれて少し離れた日陰になる場所にテーブルと椅子、アフタヌーンティーのセットを用意してくれたので私はそこに大人しく座る事になった。


 まるでお姫様にでもなったかのような優雅さだ。



 元々私はお兄様達についてきた身のため、訓練場の近くにある軽く腰を下ろせる所にでも座って見学しようと思っていた。

 なのに事前に私が行く事もお兄様によって伝えられていたのだろう。この場に到着した時には既にテーブルの上にはたくさんの様々なお菓子が飾られたケーキスタンドやティーセットが用意されていたのである。



「クリスティア様はこちらに座ってご覧下さい。王宮(ここ)のお菓子はとても美味しいのでクリスティア様に是非食べて頂きたく用意させて頂きました。」


 そう殿下の蕩けるような笑顔付きで言われてしまえば、ガッツリ胸きゅんしてしまった私はそれを断ることは出来ず諦めて椅子に腰を下ろしたのだった。



 気を遣って用意していただいた事すら申し訳ないのに、さらには給仕するためのメイドが2名と、とっっっても()()()()()()護衛騎士の方が近くに一名、少し離れた場所に制服の違う騎士様が2名が立っているのに気づいて私は今にも魂が抜けそうになる。



 給仕するためのメイドはわかる。それはわかる。でも……なんで護衛の騎士までいるの!?!!



 大掛かりに守られている状態に、何故?と殿下に問いかければ、殿下は『念の為です』と爽やかな笑顔を浮かべてその場から立ち去った。



 いやいや、理由になってないし、しかも()()()()()()()すぎないか……っ!?と頭を抱えたくなるのを必死に抑え、抜けかけていた魂を慌てて回収し、私は笑顔を浮かべてチクチクと体に刺さるような視線にあえて気づかないようにした。



 しばらくすると給仕してくれているメイドの2人のおかげで肩の力が抜け楽しい時間を過ごすことが出来ていたと思う。


 彼女たちはアーリアとマリーと言うらしい。10代後半くらいの年齢で気さくで優しい人たちだ。

 アーリアは包み込むような優しさと落ち着いた雰囲気を持っていて、マリーはお喋りが好きで元気で明るい印象を受ける。そんな優しい2人と私は直ぐに打ち解けることができ、それなりに楽しくおしゃべりをしながらお兄様達の特訓の風景を見ていた。



 しかしそれから数十分が経った今、私は今すぐ家に帰りたい衝動に駆られていた。そしてそれは殿下の前に膝をつき頭を下げているとっっっても見覚えのある護衛騎士様が原因である。


 事の発端は数分前に遡る。




「クリスティア様はとても可愛らしいのでどんな髪型も似合いますね!」

「そうですね。それにとても綺麗なのでいじりがいがあります。」

「こんな髪型はどうですか!?きっとクリスティア様に似合いますよ!」



 仲良くなる、を通り越して私は彼女たちによってさっきから髪型を次から次へと変えて遊ばれていた。

 お団子にしてみたり、ツインテールにしてみたり、ハーフアップにしてみたりと今の私は彼女たちのおもちゃである。


 しかしそれが嫌な訳では無い。むしろ彼女たちは流石王宮に仕える人達なだけあり、丁寧に早く綺麗にセットしていてその器用さを尊敬するし、手鏡を私に渡して見せてくれて、似合う!とか、可愛い!とか褒めてくれているので嬉しくならない訳がなかった。



 しかし、そんな空気に水を差すのが、終始ずっと刺さるような視線を向けてきている近くに立っている騎士様である。



「何か気になる事でもございますか?」

「いいえ、別に。」



 あまりにもチクチクとした刺さるような視線が気になり、私は彼にやんわりと笑顔で尋ねた。しかし彼はピクリと眉を動かし、切れ長の鋭い視線を横目に私に向け素っ気ない態度でそう返してきたのだ。



 はい???会った時からずっと私の事睨んでたよね!?初対面なのにずっと睨んでたよね!?なのに、『別に』って何!?意味わかんないんですけど!!!!



 騎士の素っ気ない態度に腹が立ち、顔には笑顔を貼り付けたまま内心の私は荒れまくりである。しかし、ここで大人の対応をするのが貴族の令嬢である。

 私は小さく深呼吸して心を落ち着かせた。



「そうですか。お仕事がお忙しい中、護衛について下さり感謝致します。」



 どんなに相手が嫌な人でも感謝の気持ちは忘れない。そして、感謝の気持ちは言葉にする事が大切だ。と言った笑わない夫人(ブラックマダム)と有名な私の家庭教師の先生であるヨーガネス伯爵夫人の教えのに倣い、私はニコッと笑った顔を騎士に向け軽く頭を下げる。……が、彼は横目に私を見て直ぐに視線を魔力操作の訓練中のお兄様たちの方に移した。



「仕事ですので。貴女様には関係の無い事です。」



 どこか棘を感じる言い方。わざと悪意を込めて言っているのか、それともただぶっきらぼうなだけなのか。……おそらく前者であろう。


 さっきから感じる敵意のような視線。流石にどんなに鈍い人でも気づくであろう鋭くチクチク刺さる視線に私はこの世界に来て初めて誰かに対して『この人嫌だ』という感情を持ったのだった。



「そうですか。それは失礼致しました。近衛騎士団所属、()()()()様」

「っ!? 何故私の事を……」


 お返し、と言ったように彼の所属と名前を口にすれば彼は少し驚いたように私を見た。

 そんな彼から私は視線をテーブルの上の紅茶に移しカップを手に取ると、ひとくち喉に流し込んでからゆっくりとカップをテーブルに置いてから軽く首を傾げた。



「何故でしょう。忘れてしまいましたわ。」



 とぼけたようにそう言うと、私がエルガーと呼んだ騎士はバツの悪そうに私から目を逸らした。



 近衛騎士団所属、エルガー・ヒューベルト。それが彼の所属と名前である。

 なぜ私が彼の事を知っているかって?それは彼が、このゲーム『イケメン攻略』においての攻略対象の1人だからである。



 今はまだ近衛騎士団所属であるが、数年後には近衛騎士団団長になっていて、ヒロイン(プレイヤー)が彼を攻略対象に選択すると本編は彼と悪役令嬢が婚約する所から物語が始まるのだ。



 彼のルートでは学園ではなく、王宮での話がメインとなる。異世界から来たヒロインは王宮で保護されており、その護衛につくのが近衛騎士団団長であるエルガーだった。

 しかし仕事だとはいえヒロインにばかり構うエルガーに寂しさと嫉妬を募らせた悪役令嬢はヒロインを陰で虐めるのである。そして嫉妬に狂った悪役令嬢がヒロインを手にかけようとした所を婚約者であるエルガーに見つかり国外追放、もしくはその場でエルガーに剣でバッサリ切られて死ぬという結末である。



 王太子ルートでも悪役令嬢は王太子の事を好きだったのに、ヒロインへの嫉妬心を王太子によって煽られていた。なんて裏話があるが、実は近衛騎士団団長、エルガールートでも悪役令嬢にとっては悲しい物語りがあるのだ。……が、今はちょっと横に置いておこう。

ちなみにエルガーとの年の差は8だったため彼は今17才くらいだろう。



 ただ、少し気になるのは彼、エルガーの性格である。

 彼はどちらかと言うと物腰が柔らかいタイプだったはずだ。紳士的で誰にでも優しく人気キャラの1人だ。

 剣の才能があり、16歳で学園を卒業した後エリート集団の近衛騎士団にスカウトされ入団。ゲーム開始時は既に22歳と他のキャラと比べ大人ではあったが、そんな彼が剣を振るう姿はギャップがあってとてもかっこよかったのを覚えている。

 間違ってもこんな風に敵意を隠すことなく向けてくるタイプではないはず……。なのに今、原因すらも分からない状態で初対面にも関わらず私は彼から敵意を剥き出しにされているのだ。



 おかしい……絶対おかしい。


 別人、と言われても納得出来てしまうほど、今、私の近くに立つ彼は見た目以外の部分においてゲーム内の彼とは異なっているのである。



「殿下に告げ口なさるのならどうぞご自由に。」



 こんな冷たい声を出すような人ではなかったのに……。

 茶髪の髪はうなじで一つに結われていて、綺麗な髪が風にサラサラと揺れる。ゲーム内での優しい瞳は、細く切れ長で鋭さを持っている。


 今、目の前にいる彼とゲーム内の彼は見事に正反対である事が、やはり未来が変わってきているのでは無いか。という私の考えを、これまではあくまで可能性であったがより現実的に近づけた。



「何を告げ口するのですか?エルガー様はご自分で仰られた通りお仕事をされているだけです。その事に対して私から殿下へ告げ口する事は何もございませんわ。」



 彼の方を見ること無くそう答えれば、さっきまでの刺さるような視線を感じなくなり、エルガーもそれ以上は何も話さなかった。




 そしてそれからしばらく経ってお兄様たちが休憩をしに私の元まで来たので、アーリアに用意してもらっていたタオルを1枚ずつお兄様とウィル、それから殿下に手渡していると、突然エルガーが「アルフレッド殿下」と殿下の名を口にして殿下の前に剣を置き地面に膝をつけ頭を下げ、今に至るのである。












20210619.


次回更新予定日は6月30日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ