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3.第一王子との出会い回避方法を考えてみる。

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!

とても嬉しいです、泣いて喜びました!……本当ですよ?

 




『攻略対象と関わらないのが1番』

 そう結論に至ってから私はフィリップを避けまくった。それはもう見事なまでに避けまくった。





 お父様の仕事の関係でフィリップが父親に連れられて私の家に来ると知った日には私は町娘の格好をして侍女の目を盗んで街に逃亡した。

(後からお父様にバレて心配9割のお叱りを受けたけれども。)



 お兄様や他の者からフィリップの目撃情報が入ると、向こう1ヶ月はその場所に近づかないようにした。

(何度も名前が出た場所はもはや死ぬまで近づく気は無い。)



 急な来訪の時は慌ててお兄様の部屋に駆け込み匿ってもらった。

(お兄様は私が彼を嫌いだと思っていて、私の味方になってくれている。優しい!!!)




明日我が家へ来るから遊んでやりなさい。と笑顔でお父様に言われた時には逃亡不可のため、わざと凍えるまで冷水に浸かり翌朝熱を出す努力をした。

(仮病じゃないから、風邪は本気で辛かった……)





 ……とまぁ、そんな風に避けまくった結果、ゲームの設定では子供ながら結婚の約束を勝手にしてたくらいには仲の良かったフィリップとほぼ無縁――もはや他人と言っても過言ではないくらいには関係を絶つ事に成功したのだった。








「フラグ1個目回避ーーー!!!」



 侍女も誰もいない部屋で両手でバンザイをしながら思いっきりベッドにダイブする。

 勢いよく飛び込んだにもかかわらず、衝撃はほとんどなくふかふかのベッドがお疲れ様~とでも言っているかのように私の体をふんわりと包み込んでくれる。




 今日は久しぶりに安眠が待っている!!――と目を閉じかけて数秒、私はハッと意識を取り戻した。





 ついフラグがひとつ折れたことに安心して気が抜けかけたが、攻略キャラは彼だけではない。そのため浮かれるのにはまだ早い。むしろここからが本番である。なぜなら次に出会うのが恐らくこの国の第一王子であるからだ。



 危ない危ない。と心の中で呟きながら私は机に向かいこれまでの事や記憶の中のゲームの設定、時系列など覚えている限りの内容を事細かに記してきた紙を取り出し机に広げた。






 ゲームは15歳から始まるため、悪役令嬢と攻略対象との出会いは公式に明確に記されていない。しかし、私は侯爵令嬢である。となれば学園入学よりも先に彼らと出会っている事は間違いない。そして、攻略対象のメンツからしておそらく次に出会うのは王子だろうと予想できる。

 それは幼なじみ以外の攻略対象が、王子、近衛騎士団団長、宮廷魔術師、隣国の王子様だからだ。



 隣国の王子は学園入学後にしか会わないから今は対策をとる必要が無い。と言うより、どうにもできない。

流石に隣国の王子宛に留学に来るな!!なんて手紙を送ったらそれこそ処刑される未来が待っているだろう。わざわざ自ら命を落とすような事をする必要はない。





 ……となると、残るのは王宮に住む面々だ。この中で直近で会う確率が高いのは確実に第一王子だろう。セリンジャー家は侯爵家でお父様は王宮でお仕事をしている。さらに、私と王子は同い年だ。となると、そのうち故意に引き合わされたり、王宮での何らかの催しに参加せざるを得ない時が来ると安易に想像出来る。






 ……王宮からの招待状ってお断りしても良いものなのだろうか。いや、良くないだろう。


 自問に対し、流れるように答えが導き出され私は頭を抱えた。




 それもそのはず、第一王子はメインルートだからだ。

 小説や乙女ゲーム原作のアニメなんかは大体王子様がメインルートとなっている。しかもこのゲームでもヒロインを見つけ手を差し伸べるのは言わずもがなこの国の第一王子である。

……てことは、この世界がもしゲームのルートを辿るのであればそれはおそらく王子ルートであろう。つまり、幼なじみと関係を絶っただけではまだ断罪フラグは折れていないのだ。




 何がなんでも王子との出会いを回避したい……、いや、してみせる!!!そうすれば残りの近衛騎士団団長や宮廷魔術師との出会いも回避される可能性が高い。一石二鳥どころか一石三鳥だ!!!絶対に王子に認知されないぞ!!!!

 ――と心に決めるも、いったいどうすれば王子との関係を持たずに済むだろうかと振り出しに戻る。





 私は侯爵令嬢だ。そのため今は避けられたとしても、もう少し成長した時にはパーティーなどで国王や王子に挨拶をしないといけないだろう。これは回避できない決まりである。すると少なくとも顔見知り程度の存在にはなってしまう。

 さらに学園に入学すると第一王子とは同じクラスの学友になる。……あれ??回避、不可能じゃない??

 一瞬魂が抜けて『スンッ』って顔になってしまい慌てて抜けかけた魂を回収する。大草原(草不可避)が見えたところで無事現実へと引き戻され私は再び頭を抱えた。






 いや、きっと何か方法はあるはず!!!

 考えろ、考えるんだ私!!!輝かしい未来を手に入れるために考えるんだ!!

 なんて頭をフル回転させるがいい案は中々浮かんでこない。



「挨拶をしない……は不敬になるし」

「そもそも参加しない……お父様に許されるわけない」

「顔を隠して参加する……いや、逆に目立つ!!」

「秒速で挨拶を終わらせて壁の花になる……秒速なんかで終わらせられるかーい!それこそ目つけられるわ」





 椅子に座りひとりブツブツ言葉をこぼす。はたから見たらかなりやばい子供だろう。若干6歳の子供が机に紙をいっぱい広げて、あーでもない、こーでもないと独り言を永遠に言っており、時には手をビシッと差し出し1人ツッコミをしながら紙に何かを書いているのだ。知らない人から見たら確実にヤバい子認定される。近づいちゃ行けません!!って横目に見ながら言われるレベルよ?




 しかも私はまだこの国の字を上手く書けない。そのため紙に書かれているのは日本語である。この国からしたら見たこともない異国の文字。この紙が誰かに見つかったらそれこそ、頭がおかしくなってしまったと言われかねない。

『ヤバい子』が『危険な子』『要注意人物』となるのも時間の問題である。

 そのため、この紙は何がなんでも他人に見られないようにしなければならない。

 扱う時には片付けるのを忘れないようにしないと。

 変な噂が立ったとして、どこから攻略対象の耳に入って目をつけられるか分からないもんね!



 回避不可としても関わるのは最小限でいたい。そして出来るだけ影を薄くし誰の記憶に残らないくらいの『他人』でありたい。……と、考えたところでふと手が止まる。






 ……あれ?そのためにはたくさんの令嬢の中に紛れ込めるくらい『普通』になればいいのでは??





 如何に存在を消すかを考えていたため思いもつかなかったが、派手・普通・地味の3段階に人を分けた時に圧倒的に多いのは『普通の人』である。




 パーティーなんて大勢の招待客がやってくる。さらに私くらいの年齢の令嬢もそれなりにやって来るだろう。となると、下手に欠席しまくって目に留まるより、参加して目立たず、かと言って地味すぎない『普通』の令嬢の振る舞いをすれば大勢に紛れ込めるのでは無いか、と考え付いた。





 実際前世で読んだ小説でも、わざと派手に着飾ってる人はもちろん、逆に地味すぎる人も別の意味で目立つ描写があった。そして反対に『普通の令嬢』達は世間話などをしながらキャッキャウフフ状態で、そんな令嬢は沢山いるため『その他大勢』の扱いだった。――つまり、モブだ。

 男性も同じで、見目麗しい派手な人、猫背気味の下ばっかり向いている地味な人はやたらと目立つが、それ以外の『普通の人』は大して目立たない。





 つまり『普通』である事が私にとって重要である!!

紙に大きく『普通!!!』と書いてグルグルと何重にも丸を書いて囲む。






「よし、王子回避ルートは『普通の令嬢』で行こう!」



 そうと決まればこっちのもんだ。

 私はひたすら『普通の令嬢』になるための努力をすればいいだけ。その他大勢の1人になるのだ。






 この作戦を『モブキャラになろう作戦』と名付けよう。





 忘れないように引き出しの中に紙とペンをしまい私は今度こそ満足気にベッドに飛び込んでそのままゆっくりと目を閉じた――。









20210514.



次回更新予定日は5月24日です。


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