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【書籍化】乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?  作者: 雨宮レイ.
第1章

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29/85

29.お兄様の授業参観へ来ました!

ブックマーク&作品評価ありがとうございます!

 





「ウィル!見て!凄いわ!」

「姉上、落ち着いてください」

「ねぇ、あっちも!すごく大きいわ!」

「あ、姉上っ」



 私を呼ぶウィルの声が後ろから聞こえるも、私は大はしゃぎしてあっちへこっちへと歩き回っていた。

 初めて踏み入った()()()()には初めて見るものが沢山あり私の好奇心は最高潮に掻き立てられていた。



「ティア、ウィルが困っているよ」

「お兄様っ!」

「兄様!」



 突然ここにいるはずのないユリウスお兄様の声が聞こえ振り向くといつもと、いつもと変わらない優しい笑顔を浮かべたユリウスお兄様が部屋のドアを開けて中に入ってきた。



「お兄様、どうしてここにっ!?」

「少し時間が空いたから2人の顔を見にね。」

「そうなのですね!」

「父上たちはどこへ?」

「ご挨拶しに行くと言っていましたわ!」

「そっか。なら2人とも僕と学園内を探検しようか」



 そんなお兄様の言葉に私とウィルはパアッと瞳を輝かせた。



 今日は家族みんなでお兄様の通う学園の授業参観へと来たのだ。そして今は高位貴族のみに与えられた個室の休憩室で私とウィルはお父様とお母様が戻ってくるのを待っていた。



 この学園は12歳から16歳の貴族の子息令嬢や魔力を持って生まれた特別な子が通っていて、4年間の学生期間の中で政治・経済はもちろん、経営学や歴史、戦術など将来家督を継ぐに相応しい者になるために様々な分野を学ぶ。


 文武両道を謳っているため、学問だけでなく剣術や体術に置いても授業の一環として訓練し、王宮騎士団などを目指す学生も少なくないとか。



 そんな日々の努力の成果を家族に見せるのが年に2回行われるこの授業参観である。



 この学園の男子生徒は剣術、体術、弓術、魔術の4つのクラスに分けられおり、前3つは選択制だが、魔術クラスだけは選ばれた人のみが入れるクラスらしい。そのためお兄様のクラスにはお兄様含め男女合わせて7人しかいないと言っていた。


 特別と言う割に7人も?と思うかもしれないけれど、この国の国民が何億といる中でのたったのそれだけである。力の大小はともかく、この学園だけで20人しか存在しない本当に貴重な人材なのである。




「2人とも迷子にならないでね」

「もちろんですわ!」

「はい!」



 そうは言ってもお兄様を真ん中に、右には私、左にはウィルが手を繋いだ状態で歩いているため迷子になりたくてもきっとなれないだろうと心の中で思うが口にはしない。


 部屋を出て仲良く3人で歩きながらお兄様は学園の説明をし、私とウィルはそれを楽しく聞きながら自分たちの背の何倍もある高い天井を見てキャッキャとはしゃぐ。


 初めて見る学園内とは思えない豪華な装飾に私は興味津々である。



「お兄様の出番はいつなのですか?」

「僕はまだまだ先だよ。今はきっと、剣術のクラスが模擬戦を行っているんじゃないかな?その次に体術の模擬戦、弓術の模擬戦が順番にあって、僕達魔術のクラスは1番最後だからね。」

「そうなのですね!でも、お兄様は剣術もお強いのですよね?」

「うーん、どうかな?剣術クラスは毎日剣を振ってるからね。……でも、2人が応援してくれるなら僕は絶対に負けないよ。」

「僕、兄様を応援します!」

「私もですわ!」

「ふふっ、ありがとう、2人とも。」



 なんて話しながら歩いていると突然後ろからお兄様にドンッ!!と勢いよく何かがぶつかりお兄様は大きく1歩前へ足を踏み出し倒れるのをなんとか防いでいた。

 そしてその背中にはお兄様に抱きつくように男の人が飛び乗っていたのだけど……誰??



「よー!ユリウス!何してんだよ!」



 ぴょんとお兄様の背中から飛び降りるとその男の人は何事も無かったように、よっ!と手を軽く挙げ八重歯を見せてニカッと笑った。

 その容姿は茶髪の短髪に、色白なお兄様と比べると健康的な肌色の肌、いたずらっぽく笑う笑顔が人懐っこさを感じさせるお兄様とはタイプの違う人だった。

 唯一同じ所といえば、着ている制服だけだろうか。



「ユーリ、危ないから後ろから飛びついてはダメだと言うのは何度目かな?」

「おっ?そんな畏まった言い方してどうしたんだ?」

「ん?なんの事かな?僕はいつもこうだよね?」

「いやいや、ユリウスのいつもと言ったらむひょうじょ……って、痛い痛いいたいっ!ちょ、ユリウス今魔術使っただろ!」

「ん?なんの事かな?」

「え、まじで怖いんだけど」

「……2人とも、先を進もうか。変な人には話しかけられても返事をしてはいけないよ?特に短髪の茶髪で八重歯のある人には気をつけて?無視していいからね?」

「ちょ、それ俺の事!!」



 笑顔のままユーリと呼んだ男の人を無視して歩きだそうとするお兄様に私もウィルも苦笑いを浮かべる。

 後ろにはユリウスお兄様の後をつけるように1mくらいの距離をあけてテクテクと着いてきているユーリ様。もはや距離をあけてるのかすら疑問なほどすぐ後ろを歩いているものだから私たちは苦笑いを浮かべるしかないのである。



 ユーリ様は笑顔のままずっとユリウスお兄様に話しかけているが、お兄様はまるで聞こえていないかのように私とウィルに話しかける。


 いやいや、何だこの変な空間は。なんて思うのも無理はない。



 しかも初めてお兄様のお友達(?)にお会いしたのもあって、私たちに対する接し方と、彼に対する接し方に雲泥の差があり、そんなお兄様の姿を始めてみるものだからそりゃ不思議に感じても仕方ない。



 お兄様って意外と私たちに見せる顔と学園で見せる顔が違うのかしら……?想像も出来ないけど、この対応の差を見るとそうなのかな?と思ってしまう。


 だからと言って大好きなお兄様には変わりないのだけど。




「ユーリ、ちょっといいかな?」



 しばらく無視して歩いていると、突然お兄様が足を止め、私たちにその場で待っているよう笑顔で言うとお兄様はユーリ様を連れてその場を離れていく。



 そしてしばらくするとスッキリしたような笑顔のお兄様と、反対にどこかゲッソリしたように見えるユーリ様が揃って戻ってきた。


 何があったのか、なんて怖くて聞けないけど、この2人の関係を見てると何となく想像できてしまったからあえて触れないでおこう。



「ティア、ウィル紹介するね。この人はユーリ・ヒューベルト。ヒューベルト公爵家の三男坊だよ。特に覚えなくていいけど紹介だけしておくね」

「っておい!ぜひ覚えていて欲しいんですけど!?」

「僕の大事な妹と弟に近づかないで貰えるかな?」

「えぇっ!?俺これでも公爵家の息子なんですけどー、きっといい事あるよ?だから仲良くしようよー!」



 目の前で笑顔を崩すこと無く一線引こうとするお兄様と、そんなお兄様に抱きつこうとしているユーリ様……って、え???公爵??しかも、ヒューベルト公爵家???



 めちゃくちゃ大貴族じゃん!!!!!



 私は慌ててカーテシーの姿勢を取り挨拶をすると、ウィルも私に続いて挨拶をした。


 そんな私たちを見てお兄様が「天使……」と呟いたのが聞こえたが今は触れないでおこう。



 顔を上げると少し驚いたように「ちょっ、本当にキミの弟妹かい!?」とお兄様に詰寄るユーリ様。

 そして、ゴホン。と一つ咳払いをするとユーリ様は私の前に膝まづいて私の手を取ると、まるで物語の王子様のように私の手の甲にチュッと触れるだけのキスを落とした。



「初めまして、お姫様。僕はユーリ・ヒューベルトぉぉぉぉぉぉ!!!!!痛い痛いいたいって!!ちょ、ユリウス!?ユリウスぅぅぅぅ!?!?」



 いったい何が起こったのか分からないけれど、私の手の甲にキスをして挨拶した途端彼はニッコリ笑った笑顔を崩して叫びながら後ろに立つお兄様の方を振り返った。



「ユーリ、後で覚えておくように?」

「いや、もう十分だって!!」

「覚えておくように。」

「……はい。」



 私とユーリ様の間に私を守るように立つお兄様が今どんな表情をしているのか分からないけれど、目の前でガックリと項垂れるユーリ様を見ればきっと怖い顔をしているのだなと思う。

 ただ、私はお兄様のそんな顔を見た事がないからどんな表情かは想像出来ないけれど……



「ティア手を出して。きれいな肌が汚れてしまったね。」

「いや、俺はバイ菌かなにかか!?」

「あぁ、ティアのきれいな肌が可哀想に……」



 後ろから相変わらず突っ込むユーリ様を無視してお兄様は私の前に膝まづいて、さっきキスされた部分をハンカチで丁寧に優しく拭き取る。



 公爵家の方をバイ菌呼ばわり……、いいのかな……?と苦笑を浮かべるが、見てる限りこの言い合いはいつもの事なのだろうと結論付く。



 私はこの日、お兄様の見てはいけない新しい一面を見てしまった気がしたが、見なかったことにしようと心に決めたのだった。






20210531.


次回更新予定日は6月19日です。


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