14.義理の弟と仲良くなりたい!
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私の8歳の誕生日はある意味波乱だった。……と言うより、サプライズが過ぎる!!!どこの世界に娘の誕生日に、今日から家族が増えたよ~君の弟だよ~。なんてまるで、誕生日プレゼントだよ!とでも言いたげに言う親がいるだろうか。
……………………否、ここにいた。
せめて、せめてもう少し日を考えてくれ。そしてせめて、お母様だけには相談してからにしてくれと思ったのはきっと私だけじゃないはず。
それでもなんとか無事私の誕生日が終わった事にホッと肩を落とし、部屋に戻り早速貰ったプレゼントを開ける。
「うわぁ……!可愛い!!」
箱に着いているリボンを解き、箱を開けて机の上に広げると同じデザインのチャームの着いたネックレスとブレスレットと髪留めがそれぞれの箱に入っていた。お父様からはネックレス、お母様からはブレスレット、お兄様からは髪留めだ。きっと相談してデザインを併せて買ってくれたんだろう。いつの間にそんな相談をしてたのだろうか。
私のことを考えて選んでくれたのだと思うと、その気持ちだけで嬉しくなる。
私は丁寧に箱からそれらを取り出し、明日着けてみようかなと考えながら大切にアクセサリー用のケースにしまった。
そして翌日、私は侍女のリリアにネックレスとブレスレットをつけてもらい、さらに髪留めを使ってヘアアレンジをしてもらう。
新しいものを身に着けると気分が上がるもので、今日の私も昨日同様ご機嫌である。
今日は初めて5人揃っての朝食だった。私がアクセサリーを着けている事に気づいた家族が可愛い可愛いと褒めてくれている間に、ウィルは遠慮気味に席に着いていたが、一晩寝てまた緊張と少しの警戒心が戻ってしまったようで一言も喋ることなく、家族揃っての朝食はいつもより少しギクシャクした空気が残ったまま終了したのだった。
うーん……どうすればいいんだろう。
部屋に戻った私はいつも通り紙とペンを取り出して頭を悩ませていた。今回、進展、といえば進展と言える出来事が起こった。それがウィルの登場だ。
ゲームでは悪役令嬢に義理の弟が出来るなんてイベントも弟が居るなんて情報もなかった。つまり、この出来事も小さな歪みから生まれたゲームとは違う未来という事なんだろう。
ただ、ウィルがこの家に来た経緯も、ウィル自身のこともなにも情報がないと言うのは少しばかり対応に困る。
私はこれまで攻略対象である相手のことを知った上で対応してきた。だから完全回避ではないにしろ悪役令嬢クリスティア・セリンジャーの国外追放、もしくは処刑フラグの回避に少しは近づいたのではないかと思っている。
しかしここに来てウィルの登場という想定外の事が起こったのだ。ウィルは攻略対象ではない。そもそもゲームに登場しない人間なのだ。だからこの進展が良い未来に進むのか、悪い未来に進むのかが今の状態では分からないのである。
出来ることなら私の未来に影響しないでくれる事が1番なのだが、これまでの変化や影響を見るに恐らく、義弟の存在は私の未来に少なからず影響を与えるだろうと容易に想像が着く。
ただ、現状どう影響してくるかが分からないのが一番の問題である。
家族になったのだ。つまり避ける訳にもいかない。某有名な御伽噺のように意地悪な継母や義理の姉のように弟をいじめるのも私の性格上無理だと思う。あんな整った顔の美少年をいじめられるわけが無い!!うるうるとした瞳で見上げられたら……なんて考えただけで胸がキュンとするわ!!年下好きのせいで萌えるし、トキメクわ!!年下美少年の破壊力凄まじき……っ!
……ゴホン。
……と、なるとだ。今後もしかしたら悪い未来に進むかもしれない。そうなった時に、義弟が断罪する側になるのは考えただけで……考えただけで――
「姉上は性格が良くないと思っていましたがここまでとは……」
「僕は殿下の味方にならせていただきます!」
「こんな人が義理だとしても僕の姉だとは恥ずかしいです」
「性格の悪い姉上なんて要りません!処刑です!!」
――そんなのいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
な、なんて恐ろしい想像を私はしてしまったんだ……。
想像力が豊かなのは時に残酷である。
今よりも大人になったウィルが、ヒロインを守りながら立つ殿下の横に立ち、汚いものを見るかのような目で私を見ながらそんな酷い言葉を吐く姿を想像してしまい私の目には涙が浮かぶ。
たかが想像なのに私の胸はギュッと苦しくなったのだ。
そんな未来だけは回避したいところ……。となると、ウィルに私の事を姉として認めてもらうことが必要となる。せめてウィルにとって良き姉でいれば、もし私が断罪されるような事があっても、さっきの想像のような事にはならないだろう。
そうと決まれば行動あるのみ!私は侍女のリリアや他の使用人の人たちから誕生日プレゼントとして貰ったお菓子の箱などを両手いっぱいに持って部屋を飛び出した。
そして向かったのは――
「ウィルー!私とお話しましょー!!」
――もちろん、ウィルの部屋である。
まるでプリンセスと雪だるまと王子様が出てくる某有名映画のようにコンコンコンと部屋のドアをノックをして外からそう声を掛ければ遠慮気味に小さくドアが開かれてウィルが不安げに顔を出す。
そんな彼に私は両手いっぱいに持ったお菓子を見せると彼は一瞬パアッと顔を明るくさせたが、ハッとすると直ぐにまた警戒心を見せる。
ふむふむ。ウィルはお菓子が好きなのかな?
「お菓子を沢山持ってきたの!一緒に食べながらお話しませんか?」
「僕と、ですか?」
「ええ!ウィルとよ!」
「えっ、、、でも……僕も、食べていいのですか?」
「あら、私がひとりで食べるような食い意地張った姉に見えまして?」
「あっ、いえ、そうじゃなくて!……だって、高そうだから……」
「……ふふっ、冗談よ。ダメだったら持ってこないわ。ねぇ、お部屋へ入れて?一緒に食べましょ?」
クスクスと笑いながらそう言うと、ウィルは私が機嫌を損ねていない事に安心したのかホッと肩を落とした。そして少ししか開いていなかった扉を大きく開けてくれて私はウィルの部屋に入り机の上にお菓子を広げる。
それから私に着いてきていて外で待機しているリリアにお菓子似合う紅茶の準備をお願いすると、彼女は直ぐにキッチンに向かい準備を始め、私は机一面に広げたお菓子をガサガサと漁った。
「ウィルはどんなお菓子が好き?クッキーやカップケーキ、パウンドケーキに、スコーン。これは……チョコレート!色々あるわよ!」
「……僕はなんでも……」
「全部好きなの?それとも他に好きなお菓子がある?ウィルは何が好きなの?」
「……僕は……お菓子、あまり食べた事ないから……。でも、小さい頃、お母さんの作ってくれたクッキーはすごく美味しかった、です……」
「そう、ウィルのお母様が……なら、とりあえず全種類食べましょ!それでどれが好きか私に教えて欲しいわ!」
私がそう言ったタイミングでリリアがワゴンに乗せてお茶のセットとお皿とフォークを持って部屋に入ってきた。
……流石に小さい1口サイズのケーキのお菓子やパウンドケーキを手で掴んでそのまま食べるのを彼女は良しとしなかったのだろう。机の上に散らかったお菓子の箱を1度綺麗に片付けてからティースタンドに私の持ってきたお菓子を綺麗に並べ、机の上に食器をセッティングして紅茶の準備を始めた。
そんなリリアのテキパキ動く姿をウィルは椅子に座ってジーッと眺めている。
「ウィルは紅茶は好き?」
「あっ、えっと、はい……たぶん……」
「たぶん?」
「あまり、飲んだ事がなくて……」
「そうなの?ならもし苦手だったら遠慮無く言ってね?無理して飲む必要はないからね」
「はい、ありがとうございます……」
さっきまで、すごい速さでセッティングされる机の上にあった視線も、私が話しかけると一瞬にして下がり私とあまり目を合わせようとしない。何かに怯えているように体を小さく縮こませて、落ちた前髪の間からたまにこちらの様子を伺いながら返事だけを返すのだ。
せっかく綺麗な顔をしてるのに勿体ない……
それに、さっきまでどこか楽しそうにリリアの手元を見ていたのに、私が話しかけた途端肩をビクッと震わせた。
もしかして――
――私の顔が怖いのかしらっ!?!?
悪役令嬢だから!?!?もしかして自分で思っているよりキツそうな顔してる!?それともあまりに醜悪すぎて直視できないとか!?
あああぁぁぁぁぁ!!!私はただウィルと仲良くなりたいだけなのにぃぃぃぃ!!!!
……なんて、見当違いな事をティアが考えていると唯一侍女のリリアだけが察し、「そうじゃないですよ、お嬢様。」と心の中で呟き呆れ半分で小さくため息を吐くが、そのことに気付くものは誰もいなかった。
20210522.
次回更新予定日は6月4日です。
タイトル変更致しました。
旧『悪役令嬢を辞めて義弟に恋していいですか!?』
新『乙女ゲームの設定で私に義弟なんていなかったはずだけど、トキメキ止まらないので悪役令嬢辞めて義弟に恋していいですか?』