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たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


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第88話 許可がいちいち必要なんですか?

 セヴェリはキクレー邸で絵画の他にギターも習い始めたらしい。

 今や日曜はキクレー邸に入り浸り状態だ。

 サビーナはといえば、マティアスと仲良くなっていた。

 クリスタの言いつけらしいが、マティアスが毎日差し入れの夕食を持ってきてくれるのだ。

 彼も一緒に食べていくので、自然と仲良くなって行った。


挿絵(By みてみん)「サビーナ、どう? 仕事は」

挿絵(By みてみん)「辞めたい。すっごく辞めたい」

挿絵(By みてみん)「相変わらずだな。そんなに嫌なら辞めればいいのに」

挿絵(By みてみん)「うー……でも他に出来る仕事もないし、頑張る」


 リタが辞めてから、サビーナはずっと仕事辞めたい病を発症している。


挿絵(By みてみん)「マティアスの方はどうなの?」

挿絵(By みてみん)「毎日怒られてて思い出したくもない。お嬢様は無理難題ばかり言ってくるし」

挿絵(By みてみん)「へぇ、クリスタ様が? どんな事を?」

挿絵(By みてみん)「思い出したくないって言っただろ」

挿絵(By みてみん)「ああ、ごめんごめん。でもクリスタ様ってそんな我儘言うような方に見えないから」

挿絵(By みてみん)「僕にだけだよ。嫌われてるんだ、お嬢様に」

挿絵(By みてみん)「ふーん」


 マティアスは次の日の日曜も、夕食の差し入れを持ってきてくれた。マティアスは仕事が休みの日だというのに、わざわざ自分で作って持ってきてくれたらしい。

 しかしこの日、いつもは食べた後はすぐに帰るというのに、中々腰を上げようとはしなかった。


挿絵(By みてみん)「どうしたの、マティアス。なんかあった?」

挿絵(By みてみん)「まだこんな時間か……ちょっとここにいていいか?」

挿絵(By みてみん)「うん、別に構わないけど?」


 マティアスは自身の懐中時計を仕舞うと、窓を開けて空を仰ぎ見ている。


挿絵(By みてみん)「もうちょっとで満月だな」

挿絵(By みてみん)「あ、本当だ。満月いつかなぁ」

挿絵(By みてみん)「二、三日後って所じゃないか。多分」

挿絵(By みてみん)「ここでは、満月の日のお祭りはないの?」

挿絵(By みてみん)「満月のお祭り? 聞いた事ないな」

挿絵(By みてみん)「なんだ、そっか。残念」


 サビーナの頭が何かに優しく触れられる。


挿絵(By みてみん)「……マティアス?」

挿絵(By みてみん)「サビーナも綺麗な髪をしてるな」


 さらさらと髪を流されて、仰ぐ相手を月からマティアスに変更する。同じ窓から身を乗り出していたので、いつの間にか思った以上に接近してしまっていた。


挿絵(By みてみん)「っわ、ごめんっ!」

挿絵(By みてみん)「ちょ、危ないって」


 距離を取ろうとして窓枠からはみ出そうになるサビーナを、マティアスにグンと引き寄せられる。そのまま密着し、彼の胸元に頬をつけてしまった。再び離れようとするサビーナの頭を押さえつけるように、マティアスの大きな手が深緑の髪を撫で続けている。


挿絵(By みてみん)「マ、マティアス……?」

挿絵(By みてみん)「しばらく、このまま」


 そう抱き寄せられても、全く嫌ではなかった。むしろ、付き合うならこういう人が良いとさえ思う。

 同じレベルの人間同士、軽口を叩けて愚痴も言い合える仲の、気楽な関係な人と。

 しばらくセヴェリと会っていないサビーナは、人恋しくなってマティアスの背中に手を回した──と、その時。


挿絵(By みてみん)「サビーナ!!」


 大きな声と同時に、部屋の扉がバンッと開けられる。そこにはセヴェリが立っていた。


挿絵(By みてみん)「何をやっているんですか、あなた達は!!」


 今日はずっとキクレー邸でいるはずのセヴェリが、何故かそこにいる。


挿絵(By みてみん)「マティアス、妹はまだ未成年だ。誘惑するのはやめていただきたいですね」

挿絵(By みてみん)「僕からではなく、彼女の方から抱き付いてきたんです」

挿絵(By みてみん)「サビーナがそんな事をするはずがないでしょう。この事はキクレー卿に報告させて貰いますよ。大事な妹を傷物にされては敵いませんからね」

挿絵(By みてみん)「セ……お兄ちゃん、マティアスは何も悪くありません! 」

挿絵(By みてみん)「用もないのに独身女性の部屋に居座る時点で、マティアスに非があるんですよ」

挿絵(By みてみん)「そんな……! ただ彼は、友人として私を心配して話を聞いてくれていただけで……」

挿絵(By みてみん)「何を言っているんですか? その男はサビーナの事など、これっぽっちも考えてはいませんよ」

挿絵(By みてみん)「どうしてそんな事を言うんですか! マティアスは、私のここでの大切な友人なんです。そんな風に言わないでください!」

挿絵(By みてみん)「サビーナ、あなたはもっと危機感を持ちなさい。気を許した相手を信用し過ぎですよ」

挿絵(By みてみん)「で、でも……私だって、友達が欲しいです。リタとは疎遠になっちゃったし……お兄ちゃんにはジェレイさんや村の人やキクレー卿や……仲の良い人は沢山いますけど、私には誰もいませんから」

挿絵(By みてみん)「なら他の友人を作りなさい。とにかく、その男は駄目です。絶対に許しません」


 そしてセヴェリはキッとマティアスを睨んだ。


挿絵(By みてみん)「出て行け、マティアス。今後は差し入れなど不要だと、クリスタに伝えなさい」

挿絵(By みてみん)「分かりました」


 簡単に了承し、出て行こうとするマティアスは最後に振り返り。


挿絵(By みてみん)「セヴェリ様、あまり妹に干渉するのはやめた方が良いんじゃないですか。これじゃあおちおち恋愛も出来やしない。ねえ、サビーナ?」


 セヴェリを激怒状態にして去って行ったのだった。

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