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第6話 わ、私には無理だってばっ

 ある日、仕事が終わって、下着姿でごろごろと本を読んでいた。

 サビーナは小説が好きだ。特に少女小説を好んで読んでいる。


挿絵(By みてみん)「ファーストキスってレモンの味って本当かな……なんでレモンなんだろ。酸っぱいの? 胃液出てんの?」


 周りには恋人がいる人もいる。誰々が好きだとキャアキャア騒いでいる人もいる。

 でもサビーナは、まだそんな気持ちを知らない。キスとは気持ち良いものなのだろうか?


挿絵(By みてみん)「うう……キスしてみたぁい……」

挿絵(By みてみん)「……おい、欲求不満娘」

挿絵(By みてみん)「っげ、リック!!」

挿絵(By みてみん)「下着姿で寝るな、風邪を引く」

挿絵(By みてみん)「ね、寝てないよ! ちょっと目を瞑ってただけ! 勝手に入って来ないでよ、もう〜っ」


 ノックもせずに入ってくるのは、実家にいるころから変わらない兄だ。


挿絵(By みてみん)「全く、汚いな……お前の部屋は。少しくらい整理しろ」

挿絵(By みてみん)「してるよ! 失礼だなー、もう!」


 リックバルドはその辺の小説を全部まとめて箱に入れ、洋服ダンスの上に追いやってしまった。

 その後で真面目な顔になり、この国の政治についてどう思うか聞かれたが、サビーナは答えられなかった。特に悪いと思った事はなかったからだ。


挿絵(By みてみん)「今、この帝国は揺れている。現在のリオニール皇帝の政治に不満を持つ者が、少なからずいるからだ。そして、その筆頭は……マウリッツ様」


 マウリッツ・オーケルフェルトは、セヴェリの父親でこの屋敷の当主である。


挿絵(By みてみん)「マウリッツ様は、絶対君主制という体制自体を無くすべく、謀反を起こそうとしている」

挿絵(By みてみん)「せ、セヴェリ様は……」

挿絵(By みてみん)「マウリッツ様と同じ考えのようだ。現在、レイス様を説得している状況だ。クラメルとオーケルフェルトが手を組めば、ついて来る貴族は多いからな」

挿絵(By みてみん)「ええと、つまり……今はまだ、レイスリーフェ様はセヴェリ様のお考えには同調していないって事?」

挿絵(By みてみん)「そういう事だ。謀反をやめるよう、レイス様がセヴェリ様を説得していると言い換えて良いだろう」


 謀反が皇帝にバレたり失敗したりすると、マウリッツもセヴェリの命も、危ういだろう。

 騎士の班長以上に、マウリッツはこの事を話したらしい。実際に動くとなると、騎士の掌握は必須だからだろう。

 どうすればいいか分からないサビーナに、リックバルドが口を開く。


挿絵(By みてみん)「俺の気持ちを話そう。俺は、リオニール陛下の治めるこの国が、悪政だとは思っていない。少なくとも今はまだ、な」


 他の班長もまだ決めかねているか、決めていても隠しているようだった。

 謀反を成功させるとなると、帝都正騎士団を相手取らなければいかず、その犠牲は計り知れない。


挿絵(By みてみん)「帝都正騎士団は、強い。俺と同等近い騎士が何人もいるし、オーケルフェルト騎士隊だけでは歯が立たないだろう」

挿絵(By みてみん)「……だからセヴェリ様は、クラメル家に謀反の話を持ちかけてるのね……」

挿絵(By みてみん)「ああ。アンゼルード帝国の中でも、大きな権力を持つクラメル家がマウリッツ様の考えに同調すれば、他の貴族たちも引き入れる事が出来る……そう考えたんだろうな」


 しかし、まだ国民の不満が爆発し切る前では、謀反は成功しないだろうというのがリックバルドの考えだった。

 成功しなければ騎士たちの犠牲はもちろん、ここで働いている人たちもみんな路頭に迷う事になる。


挿絵(By みてみん)「そこでお前に頼みがある」

挿絵(By みてみん)「な、何? 出来ることなら何でもするけど」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様を、誘惑しろ」

挿絵(By みてみん)「……はいいいい??」


 そんな事できないと言っても、やれと押し付ける横暴兄。


挿絵(By みてみん)「こっち側に引き入れなければ、失脚するだけなんだぞ。幸い、セヴェリ様はお前を気に入ってくださっている」

挿絵(By みてみん)「別に、気に入られてなんかないから! レイスリーフェ様がいらっしゃるんだから、あの方に任せておけばいいんじゃないの?」

挿絵(By みてみん)「レイス様には無理だ」

挿絵(By みてみん)「何で」

挿絵(By みてみん)「お心が、すでにセヴェリ様にない」


 さらりと飛び出す爆弾発言。

 とにかく、と頭をグイッと押さえつけられるサビーナ。


挿絵(By みてみん)「路頭に迷いたくないなら、セヴェリ様を説得しろ! 最悪、セヴェリ様だけでもこちらについてくれればどうにかなる!」

挿絵(By みてみん)「わ、私には無理だってば!」

挿絵(By みてみん)「いいからやれ、俺も協力はしてやる!」

挿絵(By みてみん)「ひーーっ」


 無理難題をサビーナに押し付け、「じゃあ頼んだぞ」と出て行くリックバルドであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 登場人物の絵もあってわかり易いですね!! ちなみに、長いバージョンのやつはどれなんでしょう?
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