表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/115

第59話 ……駄目……デニスさんっ

ブクマ25件、ありがとうございます!

 サビーナは馬車を取り囲む彼らを、順にひとりひとり眺めた。


挿絵(By みてみん)「サビーナ、降りてこい。セヴェリ様を帝都へ連れて行く」


 リックバルドが冷静に言う姿を見て、サビーナはキッと睨みつける。


挿絵(By みてみん)「リック、どうして!! まだセヴェリ様を説得する時間はあった! それなのに!!」

挿絵(By みてみん)「俺じゃないっ!!」

挿絵(By みてみん)「じゃあ、誰が皇帝に密告を……」

挿絵(By みてみん)「俺だ」

挿絵(By みてみん)「シェスカル、隊長……ッ」


 シェスカルの眼光は鋭く、いつもの軽い男の様相は消えている。

 一気に頭に血が上った。

 オーケルフェルト騎士隊の隊長ともあろう者が、(おの)が主を売り渡すような真似をした、その事実に。


挿絵(By みてみん)「シェスカル隊長……!! どうして!! どうしてッ!!!!」

挿絵(By みてみん)「これが最善の方法だった。セヴェリ様を渡して貰おう。サビーナ、お前もこれだけ派手な立ち回りをしたんだ。ただでは済まないぜ」


 サビーナが彼らを倒して切り抜けられる確率は、なきに等しい。

 しかしセヴェリを生かすという思いから、サビーナはとうとう剣を抜いた。


挿絵(By みてみん)「やるのか、サビーナ」


 シェスカルの、ドスの聞いた声が響き渡る。ゾッとするほど怖い。


挿絵(By みてみん)「サビーナ、やめなさい」

挿絵(By みてみん)「危険です。下がっていてください、セヴェリ様」

挿絵(By みてみん)「危険な事をしているのはサビーナでしょう。私は……あなたを死なせたくない」


 私だって、とサビーナは心の中で答える。


挿絵(By みてみん)「あなたまで、死ぬ必要はないんですよ」


 その優しい言葉に、涙が溢れそうになる。

 だからこそ。

 こんなにも優しい人物であるからこそ。

 絶対に、死なせられない。


挿絵(By みてみん)「私は……っ、セヴェリ様を、生かす、役だから……っ」


 何かが込み上げそうになるのを、サビーナはグッと堪える。

 怖い。どうなってしまうのかが。

 でも、それでも、セヴェリだけは生かさなければいけない。


挿絵(By みてみん)「じゃあ守る役は俺だよなっ!!」


 そんな明るい声と共に、トンッと人影が馬車に飛び乗ってくる。

 その男はこちらに目を向けてニッと笑った。


挿絵(By みてみん)「デニスさん!!」

挿絵(By みてみん)「大丈夫だ、俺に任せろ!」


 デニスは顔に笑みを含んだまま、己の剣を抜いている。


挿絵(By みてみん)「馬鹿、デニス! あなたまで!!」

挿絵(By みてみん)「二人ともやめなよ! こんな事をしても何もならないんだよ!?」

挿絵(By みてみん)「デニス……ッ」

挿絵(By みてみん)「リカルド、お前はこっち来んなよ。嫁さんがいんだからな」

挿絵(By みてみん)「……っく」

挿絵(By みてみん)「デニスさん……」

挿絵(By みてみん)「サビーナ、隙をついて俺の馬で逃げろ。セヴェリ様を頼むぜ」

挿絵(By みてみん)「でも」

挿絵(By みてみん)「これを持ってけ。役に立つはずだ」


 彼は腰から何かをブツンと引き千切る。キンッと高い音色がして、それを手渡された。


挿絵(By みてみん)「デニス、今ならまだ引き返せる。セヴェリ様とサビーナを捕らえて、こっちに戻ってこいッ!!」


 馬も怯える地鳴りのような声に、さすがのデニスも顔から笑みが消えた。


挿絵(By みてみん)「……駄目……デニスさんっ」

挿絵(By みてみん)「ここで引いたら、誰がセヴェリ様を守んだ?」

挿絵(By みてみん)「でも……っ」

挿絵(By みてみん)「頼むぜ、サビーナ。必ずセヴェリ様を生かしてくれ」


 サビーナが覚悟していたように、彼もまた決意を固めている。


挿絵(By みてみん)「……分かった」

挿絵(By みてみん)「よし」


 泣けてくる。

 もう二度と、彼の顔を見る事はないかもしれない。


 しかしサビーナは涙を飲み込み、前を見据えた。


挿絵(By みてみん)「やる気か、デニス」

挿絵(By みてみん)「シェスカル隊長と真剣勝負ってのも、おもしれぇ」


 びりっと空気が震える。


挿絵(By みてみん)「セヴェリ様、合図をしたらデニスさんの馬に飛び乗ってください」

挿絵(By みてみん)「サビーナ、あなたは」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様の後ろに乗りますので、馬を操るのはセヴェリ様にお任せします。私は追手を払いますから」


 ひそひそと話し合うと、セヴェリはコクリと頷いてくれた。


挿絵(By みてみん)「みんな、下がっていろ。デニスが相手じゃ、全員が無傷ってわけにはいかねぇだろうからな」


 シェスカルの言葉に、周りの騎士は距離をとっている。これなら隙をついて逃げ出す事も可能だ。


挿絵(By みてみん)「じゃあな、サビーナ。元気でやれよ」


 デニスさんも、という言葉が出てこなかった。彼の命の保証が出来ない今、それを言うことは憚られた。

 デニスの顔がグッと引き締まり、剣を握るその手に力が入るのが分かる。


挿絵(By みてみん)「行くぜ!! シェスカル隊長!!」

挿絵(By みてみん)「覚悟して来いっ!!」


 二人の剣が、今、交差した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ