第41話 一番前に席を陣取りますから!
今日は待ちに待った水曜日。久々にデニスと食事の約束をしている日である。
学生時代の友人と食事をするのだと誤魔化して、いつものセヴェリの抱擁を受ける。
楽しんできてと言われ、サビーナはデニスとの約束の場所で彼を待った。
月光祭とは、満月の日に月に感謝をするお祭りである。
「そっかぁ、騎士は大変ですね。せっかくのお祭りの日に仕事だし」
「私は午前中は両親と見て回るんです。毎年リックが模範演武をしてるから、それだけは一緒に見るのが恒例になってて。両親がすごく楽しみにしてるし」
月光祭の開幕に、月に捧げる演武を披露するのだが、ここ七年程はリックバルドとシェスカルの二人がそれを務めている。
「ああ、あれはスゲェよな。今日は隊内で演武の披露をしてたけど、文句の付け所がなかったからな」
「来年は、俺とリカルドに決まってんだ。そろそろ世代交代だって隊長から話があった」
シェスカルに指名されたという事は、それだけの実力があると認められたという事だ。
「だから、来年……リックバルド殿は出てねぇけど、模範演武、見に来てくれっか?」
「うん! 行きます!! 絶対行く!! 一番前に席を陣取りますから!」
今から来年の月光祭が楽しみだ。
「嫌ならいいんだけどよ。でも、あんまり人目につかない方がいいんだろ? 外だとどうしても誰かの目に入っちまうからな」
「あ……そうですね。えと、じゃあデニスさんの家がご迷惑でなければお願いします」
「あ、ちょっと待って! お土産! 何か手土産を持って行かないと!!」
「要りますよ! いきなりお邪魔するのに非常識じゃないですか! ご家族はケーキとかでも大丈夫ですか?」
「両親に、弟と弟の嫁さんとその子供、妹にもう一人の弟に、じーちゃんばーちゃんとひいばあちゃん。んで俺。な、十一人だろ?」
それでも買おうとしたが、デニスに止められてそのまま家に向かった。