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たとえ貴方が地に落ちようと【簡易版】  作者: 長岡更紗


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第39話 お可哀想なセヴェリ様……

屋敷に帰ってくると、サビーナは約束通り、セヴェリに膝枕をしてあげた。


挿絵(By みてみん)「ああ、これは確かに……気持ちよく眠れそうですね」

挿絵(By みてみん)「……眠れていないんですか?」

挿絵(By みてみん)「そうですね……婚姻の日が決まってから、ずっと眠れていないです」


 それは、どういう意味でだろうか。婚姻が決まって嬉しくて眠れないのか、それとも……


挿絵(By みてみん)「サビーナ」

挿絵(By みてみん)「は、はい」

挿絵(By みてみん)「あなたは幸せになってくださいね」


 微かに笑みを見せながら放たれたその言葉に、胸が痛んだ。

『あなたは』という事は、自分は幸せにはなれないと思っているのだ。


挿絵(By みてみん)「……嫌です」

挿絵(By みてみん)「え……? 今、何と?」

挿絵(By みてみん)「嫌です、と言いました」

挿絵(By みてみん)「何故……」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様を差し置いて、私だけ幸せになどなれません! セヴェリ様が幸せになれないのなら、私に幸せなどは必要ありませんから!」

挿絵(By みてみん)「それは……困りましたね……」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様……レイスリーフェ様とのご結婚は、考え直された方がよろしいのではありませんか……?」

挿絵(By みてみん)「もう、決まった事なのですよ。今更……今更、どうにもなりません」

挿絵(By みてみん)「そんな事はありません! まだご成婚前なのですから、どうにでも……」

挿絵(By みてみん)「どうにもならないのですよ。ようやくここまで来て、父が許すはずがありませんし」


いちメイドであるサビーナがどうこう言ったところで、覆るはずもない。ないのだが。


挿絵(By みてみん)「……サビーナ?」

挿絵(By みてみん)「……ごめん、なさい……っ」

挿絵(By みてみん)「どうしてサビーナが謝っているんですか」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様は……本当は、幸せな結婚が出来るはずだったのに……兄のせいで……」

挿絵(By みてみん)「彼女の心を惹きつけておけなかった私が悪いのです。悔しいですが、レイスリーフェの私への想いというのはその程度のものだったのでしょう。互いに想い合って結婚しても、いずれは心が離れていく運命だったのかもしれません」

挿絵(By みてみん)「ならば……ならばやっぱりこの結婚はするべきではないと思います! 心が離れていく運命と分かっていながら結婚するなんて……」

挿絵(By みてみん)「馬鹿だと思いますか? ……それでも私は、まだ一縷の望みにかけているのですよ。何事もなかったかのように過ごして行けるという望みに」

挿絵(By みてみん)「私は……お優しいセヴェリ様が辛い思いをなさるのは、我慢出来ません……っ」

挿絵(By みてみん)「私は優しくなどありませんよ。腹黒で、底意地の悪い男なのです」

挿絵(By みてみん)「そんな事は!」

挿絵(By みてみん)「ありますよ。レイスリーフェをリックバルドの元へやって幸せになどさせたくない。私は自身のエゴと思惑のためだけに、彼女と結婚するんです」


 レイスリーフェとリックバルドを幸せにしたくない。謀反を成功させるために結婚する。

 そんな悲しい結婚があるだろうか。

 セヴェリには皆に祝福され、互いに愛し愛される結婚をして、一生幸せに暮らして欲しい。


挿絵(By みてみん)「何故サビーナが泣くのです」

挿絵(By みてみん)「セヴェリ様……私に出来る事はありませんか? セヴェリ様が幸せになれるなら、私はどんな事でも厭いません」

挿絵(By みてみん)「優しいのは……私などより、あなたの方ですよ」


 そう言って、セヴェリの手がサビーナに伸びてきた。その手はサビーナの頬に触れ、優しく涙を拭ってくれる。


挿絵(By みてみん)「少しだけ……」


 今度はセヴェリが、今にも泣きそうな顔をして。


挿絵(By みてみん)「少しの間だけ、あなたを抱き締めても良いですか」


 その問いに、サビーナはゆっくりと首肯した。


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