第37話 水曜日、楽しみだな
翌日、サビーナは給湯室で仕事の準備をしながら、ため息を吐いていた。
デニスのことを考えると、胸が重い。色々と言い訳したいことがあり過ぎる。
そしてまた、一緒に気兼ねなく出かけられる仲に戻りたい。
唐突の声に驚いて振り向くと、そこにはデニスがいた。
急いで隣の休憩室にお茶を持って行くと、デニスが一人突っ立っている。
「……納得行かねーんだよ。俺、そんな迷惑な事したか? 確かにほとんど毎日食事に誘ってたけどよ、それが嫌だったんならそん時断わりゃ良い話じゃねーか」
「俺が班長だから断りにくかったか? だからって、リックバルド殿に言わせる必要はねーだろ。どうせ断られんなら、あんたの口からちゃんと直接聞きてぇよ」
どう説明すれば良いのだろうか。セヴェリと二人で外出する理由を失わず、リックバルドにも文句を言われず、デニスを納得させる方法があるというなら、誰か教えて欲しい。
「……俺、あんたと居んの、結構楽しかったんだ。あんたがセヴェリ様の事を真剣に考えてくれてんのが嬉しかったし、ちょっと感動したんだぜ。真っ直ぐにセヴェリ様を生かすって言ってくれたあの言葉がよ」
サビーナはハッとして顔を上げる。
あの夜、彼もまた、心を揺るがす風が吹き抜けていたのだ。
「最初に食事に誘ったのは、同志がいるって思うと親睦を深めたくなったからだ。次はまぁ、怒鳴っちまった詫びに……だったけどよ。でもそうして何度もメシに行って話してるうちに」
デニスは唐突にそこで言葉を切り、真っ直ぐにサビーナに目を向けた。
「悪ぃ、まだハッキリとは言えねぇんだ。俺自身、この気持ちをちゃんと見極めてぇって思ってた。だからあんたを毎日メシに誘った」
「まだちゃんと答えを出せてねぇのに、俺をシャットアウトすんなよ。頼むから」
なんだかクラクラしてしまって、足元が覚束ない。
サビーナはまず謝った。リックバルドが勝手をしたこと、迷惑とは思っていないことを。
リックバルドは過保護だから、おおっぴらに二人っきりで食事には行けないということにしておいた。
サビーナの言葉に、嬉しそうな笑顔を見せるデニス。
「来週の水曜くらいなら。仕事が終わったらすぐに向かいますね」
「おう、俺もなるべく急ぐからよ。じゃ、戻んねーと。便所だっつって鍛錬抜けて来ちまったからな」
デニスが出て行ったあと、サビーナは水曜日が楽しみで、自然と笑みが溢れた。




