第21話 私は外に出ておきます……
結局サビーナもデニスと一緒に眠り込んでしまい、セヴェリにお叱りを受けてしまった。
朝早くに出発して、ユーリスの街に着くと、リカルドとデニスに宿で休むよう指示している。
しかしサビーナは護衛騎士の代わりとしてなのか、セヴェリと共にクラメルの屋敷に行くことになってしまった。
中に入ると、レイスリーフェが微笑みで迎えてくれる。
貴族らしい優雅な会話を楽しんでいたはずなのに、セヴェリが何故かクスクスと冷たい瞳で笑い始めた。
「フ……クスクスクス……おかしいですよ。だってあなたが我が街ランディスにいらしたのは、私に会いにではなかったのでしょう?」
「そろそろ、そんな行動に出るのではないかと思っていました。私がここに、護衛として彼を連れて来なくなって久しいですからね。案の定でしたよ」
聞いていてはいけない事かと思って部屋を出ようとするも、セヴェリに止められてしまった。
「では、私が当てて差し上げましょうか。おそらく、一年前にはあなたは彼に惹かれていた。そうですね」
「彼がキアリカと別れたのは一年以上前ですから、それよりももっと前だったのかもしれませんが」
サビーナの目の前が真っ白になる。キアリカは確か、付き合った人は一人だと言っていた。他の誰とも付き合った事がない、と。
「私に抱かれた後で、よくリックバルドにも抱かれる事が出来たものだ。感心致しますよ、本当に」
レイスリーフェが震えている。サビーナも、できるなら気でも失ってしまいたかった。
「私には、幾つかの選択肢がある。ひとつ、あなたを訴えて法的裁きを受けさせる事。ふたつ、何事もなかったかの様に結婚する事。もちろんその場合は、クラメル騎士隊を私の傘下に置かせて頂きますよ。そして……三つ目は……あなたとリックバルドを祝福し、私の方から婚約を解消をする事」
三つの選択肢のうち、レイスリーフェはどれを望むのか聞くと、彼女は三つ目を選んだ。
「もう、ずっと前からなんです……! リックバルドさんがキアリカさんとお付き合いなさっていた時から、ずっとお慕いしておりましたの……っ」
「私は絶対に、婚約解消などしませんよ。私が取る行動は二番目だ。レイスリーフェ、あなたと結婚して、その軍事を傘下に置く」
セヴェリの言葉にショックを受けているレイスリーフェ。さらにセヴェリは続ける。
「あなたを誰にも渡しはしません。私の愛する人は、今も昔もあなた一人なのですから」
これで、結婚が進んでしまうのだろう。
クラメル卿も、娘が不貞行為を働いていたなどという悪評を立てられたくはないに違いないのだから。
つまりは、謀反の準備が進んでしまうという事だ。