第20話 自分でバカって言ってて虚しくないですか?
リカルドが出て行った後、すやすや眠っていたサビーナだったが、突如頭に衝撃が走った。
飛び起きると、そこには美形悪戯小僧の姿が。
「か、鍵が掛かってなくったって、普通ノックもなしに入って来ないでしょ!」
「ノックならしたぜ? ぜーんぜん反応無かったけどな。鍵掛けずに寝るなんて、あんた無用心過ぎんじゃねーの?」
「ん? ああ、ちょっと話があってよ。警戒すんなって! 何もしやしねーよ!」
しばらくはリカルドの話を嬉しそうにしていたデニスだったが、途中から陰りを見せた。
「けどなぁ、最近みんな隠し事が多いからよ。何考えてんのか、ズバッと言ってくれりゃあいいのになぁ」
そう言えば、デニスは謀反賛成派だった。恐らく謀反に関する事を言っているのだろう。しかしサビーナはサイラスに言われた通りに知らんふりを決め込んだ。
それでもなんだかデニスが不憫で、分からないふりをしながら話を聞いてあげる。
「俺は……俺が意思表示すれば、みんなも腹を割って話してくれると思ってた。けど、みんな何考えてんのかほんっと分かんねぇ。何も言ってくれねぇ。シェスカル隊長も、リックバルド殿も、リカルドも、キアリカも、サイラスも……俺、信用されてねぇのかなぁ」
「信用されてないなんて事、ありませんよ。そのうち、皆さんの方から話があるって言ってくれますよ、きっと」
年上だがなんだか可愛くて、デニスの頭を撫でてあげる。
どうやらデニスはサビーナのことを情婦だと思っていたらしい。
違うと否定すると、彼は何故かいきなりゴロンとサビーナの太ももに頭を下ろした。
「デニスさんなら選り取り見取りでしょ?それだけカッコいいんだから」
寝転がったデニスが、サビーナを見上げてくる。
「あんた、俺と同じ匂いがすんだよなぁ。俺、同類の匂いが分かんだよ」
同類と言い切ったデニスは、自分たちにはやれることがあると言い出した。
「セヴェリ様に従い、セヴェリ様を守る事だ。あんたもそう思ってんだろ? 違ったか?」
「私は、セヴェリ様を生かす。どんな事があっても、絶対に死なせたりしない」
「死んでるようには、生かすなよ? そんな状態にさせんなら、生きてる意味がねぇからな」
デニスの言葉に、サビーナは深く頷いた。
サビーナの真剣な顔を確認したデニスは、ニッと目を細めて笑った。
「決まりだな。俺は守る役。あんたは生かす役。セヴェリ様の願う通りに、俺たちは務めを果たそうぜ」
デニスは拳を上げ、サビーナも拳をチョンとぶつける。
満足そうに笑ったデニスは手を戻し、ゆっくりと目を閉じた。
デニスは交代の時間を告げると、一瞬で寝入ってしまった。