第17話 お見合い結婚ですか?
ユーリスの街に向かう馬車の中には、セヴェリとサビーナ、そして班長の一人であるリカルドがいた。
外には御者と、護衛にデニスという班長もいる。
そしてセヴェリはリカルドに、サビーナのクッキーは絶品だと吹聴していた。
セヴェリは先ほどから騎士のリカルド相手に、ずっとサビーナのネタで弄っているのだ。
そしてリカルドは、セヴェリの腰についている小瓶に目をつける。
「セヴェリ様、もしよろしければ妻に同じような物を作らせますが」
あまりにひどいものだったので、そう言ったのだろう。しかしセヴェリは。
「いえ、大丈夫ですよ。次に作る時はもっと素晴らしい物を作ってくれると約束してくれましたから。ね、サビーナ?」
笑みを向けられて、サビーナの顔は引きつる。
リカルドの顔には『お前には無理だ』書かれていて、サビーナは慌てて話を逸らした。
「そ、それより、リカルドさんは結婚してらしたんですね! 知りませんでした!」
「ええ、リカルドは去年結婚したんですよ。奥方は今十七歳……結婚当時はサビーナと同じ十六歳ですね」
「クスクス……言うほど年の差はありませんよ。リカルドは今、二十六歳ですから」
リカルドはとうに三十を超えているかと思っていた。どんな風に知り合ったのか、興味が沸く。
「劇団ですよ。リカルドはアマチュアの劇団に所属していまして、奥方とはそこで知り合ったんです。お綺麗な方ですよ。職場結婚……ではなく、趣味結婚というやつですかね」
「劇団……リカルドさんが? ああ、リカルドさんは大道具か何かなんですよね? びっくりした」
「いいえ、彼はれっきとした役者ですよ。演技も中々のものです。人は見かけによらないでしょう?」
「そうだ、サビーナ。今度一緒に彼の所属する劇団へ観劇に行きましょう。普段のリカルドからは考えられない、豊かな表情が見られますよ」
最近ようやく気付いた事だが、セヴェリは意外に意地悪だ。こうやって人を困らせては、楽しそうにクスクスと笑っている。
次の瞬間、馬車がガクンと止まった。
外からデニスが魔物の襲来を告げていて、リカルドは外に飛び出していく。
「もうリカルドはこの中には入って来ませんよ。代わりにデニスが来るはずです。彼はからかうと、顔を真っ赤にさせて面白いんですよ。まぁ見ていてください」
そして戦闘が終わって戻ってきたのは、汗だくのデニスだった。
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