第1話 おかえりなさいませ
漫画/貴様 二太郎さん
「貴女まで咎人にさせるわけにかいかないのです」
こんな時にまで優しい笑みを向ける彼に、サビーナは力の限り叫ぶ。
「たとえ貴方が地に落ちようと!! 私は決して貴方を見捨てたりはしません!!」
すると彼は困ったように、悲しそうに、でもどこかほんの少し嬉しそうに。
緑青色の瞳をサビーナに向けた。
「苦労を、かけますよ」
「承知の上です!!」
そんな苦労ならばいくらでも我慢できる。
彼のためならば、いくらでも。
二人は互いの意思を確認するように頷き合うと、共に愛する故郷を後にするのだった。
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アンゼルード帝国という国で生まれ育ったサビーナには、血のつながらないリックバルドという兄がいる。
その兄がオーケルフェルトに仕える騎士だった事もあり、リックバルドの口利きでサビーナはオーケルフェルト家のメイドとして働いていた。
屋敷の当主のマウリッツ・オーケルフェルトとは違って、下働きの者にまで声をかけてくれる優しいセヴェリ。
サビーナの作ったボソボソのクッキーですら、喜んで食べてくれる。
「本当に美味しいんですよ。……この味は、亡くなった母が作ってくれたクッキーによく似ている」
屋敷内を歩いていると、兄のリックバルドが妹を心配して声をかけてくれた。
ちなみにこの兄は、とんでもない横暴兄。身長193cmで細身の大男だ。
現在は屋敷住まいだが、実家では風呂上がりは裸族であったサビーナ。それは血のつながらない母親(リックバルドの本当の母親)の影響であった。