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第二十三話

本日二話目。次で完結になります。

「それで今回の件、どう冒険者ギルドに報告する?」


 ククの両手を縛った後、野営地点に戻り、しばし休息を取った後ウィズが切り出した。


「正直に報告したとしたら、ククはどうなるの?」


「今回の件で、どこまで関わっていたかによるな。下手すれば処刑。処刑は免れても相応のペナルティは発生するはずだ。とはいえ、ククが正直に詳細を話してくれないと何とも言えない」


「なるほどなるほど。では、クク君。君の供述を聞こう。みんなが質問して、ククが答える感じでいいかな?」


 全員が頷き、質問を開始する。内容はこうだ。エヴィンを殺すために一匹のダガーウルフとエルフに伝わる秘儀で契約を結んだ。そして、そのダガーウルフを強くするために森の他の魔物を倒して、力を吸収していた。最初は普通のダガーウルフだったから、効率が良くなかったらしい。


 そんな時、ガルゲドと知り合った。彼の本当のジョブはスカウトではなく、魔物使いだったようだ。彼は魔物使いの中でも変わった人物で、通常現地で魔物を使役するのが当たり前な所、ずっと一匹の魔物を使役し、とてもかわいがって育成していたようだ。そんなだからあまり街に居つかず、森で魔物を成長させようとしていたらしい。ククとガルゲドは魔物を強くするという共通の目的から協力関係を結んだ。その中で、群れを作るというヒントを得た。


 ククとダガーウルフは通常の使役とは違う。エルフが生涯で一度だけ、森の生物とだけ可能な契約だ。その契約はエルフと魔物に精神的な繋がり作る。その繋がりから魔石を分ける与えることに成功し、新たな魔物を生み出した。ただし、新たな魔物とは契約で繋がっていないため、ククは使役できない。ククと契約した魔物が力で従わせていたのだ。逆に、ガルゲドはある程度笛を使うことで群れを使役することができていたようだった。


 そこからは群れを作り、群れを分け、群れを大きくした後に、最初のダガーウルフに群れ全体の魔石を奪わせて吸収させた。最初は遅々とした成長具合だったが、群れが大きく、増えることでネズミ算式に力の吸収が早くなり、上位種にまで成長したとのことだ。


「だから、ボクは昨日皆さんと戦わせた時以外、人族には手を出していません。確かに群れを作りましたが、基本的には彼らの本能に任せるままでした。前回ウィズさん達を襲ったならそれは魔物の本能か、ガルゲドさんが操ったんだと思います」


「び、微妙~。原因自体は完全にククだよね……(契約ってペットシステムに近い感じがするなぁ……)」


「エドガーさん達が人族の死者として出てるからね。直接ダガーウルフをけし掛けたわけじゃないけど、原因は確かにククだもの……。あたしにはどういう罰が下されるか全然予想がつかないわ」


「で、ござるな」


「おっさん、今日そればっかじゃねぇか!?」


「で、ござるか?」


「うぜぇ!?」


「とはいえさ、私はククに正直に冒険者ギルドに報告してほしいんだ。それで、罰が何か下されたとしても、いつか私が迎えに行くから。それまで、罪を償っていてほしいと思う。処刑だけはさせないようになんとかするから」


「まどかさん……」


「そのさん付けやめてよ。私達は仲間でしょ?おねーさんと呼んでもよくってよ?」


「……。う、ぐすっ、うん……。まどか、(ねぇ)


「おぉぅっ!?なんかちょっとゾクっとくる!まさか異世界に来て弟が二人できるなんてっ」


「待て、二人?元の世界に弟がいたのか?」


「ん?いないよ?ウィズとククじゃん」


「いやいやいや、俺が兄貴だろ?」


「そっちなの?ウィズ!?」


「なんでよー。ウィズは私の言うことが聞けないっていうのー!?」


「で、ござるな」


 すぐに姦しく騒ぐメンバーと泣きだしてまどかに縋りつくクク。それを傍目にエヴィンは溜息をつくのだった。


◆◇◆◇◆◇


 一行は上位種の魔石と素材だけ剥ぎ取って休み、夜を明かした。そして、ディスクの町へと帰還する。昼頃には門をくぐり、冒険者ギルドへと足を運ぶ。そして、今回の顛末を出迎えてくれたシンディに報告する。


「前代未聞ですね……。私ではクエスト達成の判断を行うことができません。ギルド長に報告をして判断を仰ぎます。追って皆さんにお話しを伺うことになると思います。特にククくんは辛い目に合うかもしれませんが……。皆さん、それで問題ないでしょうか」


「問題ないですよ。ククも覚悟の上です。しばらくはクエストも受けずにここにも顔を出すので、その時に声をかけて下さい」


「分かりました。それでは私はギルド長に報告をしてきますので、今日はお帰り頂いて結構です」


 まどか達は定宿に帰ったが、ククとエヴィンは冒険者ギルドに残っていた。ククはまどかの言う通りに冒険者ギルドに全てを話すつもりである。そのため、いつ呼び出されてもいい様にギルドに残ったのだ。一方、エヴィンは一度は殺されそうになった相手であれ、彼の姉に対し義理を尽くしたいと考えている。気まずい時間を過ごしていた二人だが、意を決してエヴィンが切り出す。


「お前は、俺が姉を守れなかった男だと知っていたのか?」


「はい。知っていました。護衛クエストの際に顔を見ていましたし、名前ももう一人の方から聞いていました。ボクはいつかあなたを殺すチャンスが訪れると思って、近づきました。でももういいんです。あなたへの恨みは消えませんが、まどか姉がそれを望みませんから」


「そうか……。俺も、お前にあの人の面影を見てた。だから、いつもより熱くなって、物事が見えてなかったのかもしれねぇな。そんで、新人を鍛えることが罪滅ぼしだなんて、笑っちまうわ。もっと強くなって、誰も死なせないくらい強くなるのが、本当にするべきことだったのかもしれねぇって今頃になって思うぜ……」


「そうですか。正直、ボクはあなたが罪滅ぼしもできず、何も守れてないんだと思ってます。最後の戦いで、あなたは小型からまどか姉を守ったかもしれませんが、上位種からは守れずにまどか姉に頼った。ボクはそれもまた、許せません」


「はっ、手厳しいね……。俺ぁ、この三年間結局何もできてねぇんだな……」


 その後、互いに会話を挟むこと無く、しばらくするとククにギルド長から呼び出しがかかる。エヴィンはいつの間にか帰っていたが、ククがその日の内に戻ることはなかった。


◆◇◆◇◆◇


 翌日、昼過ぎにまどか達が冒険者ギルドに顔をだす。前日はクエスト達成も認めて貰えず、雰囲気も良いわけではなかったから、いつものようなクエスト後のお祝いはしなかった。とはいえ、連日の野営と戦いの緊張がようやく解けて、全員が寝過ごしていたのだ。四人が揃って冒険者ギルドの戸を潜ると、シンディがやってきた。


「皆さん、お待ちしてました。今回のクエストについて詳細をお話しさせて頂きます。エヴィンさんとククくんも既に来ていますから、二階の応接室までご案内します」


 応接室の中は中央に机があり、いくつかの書類が置かれていた。その机の両側には三人程が座れるソファが置かれており、そこにククとエヴィンが座っていたが、四人の入室を認めると二人とも席を立ち、ソファの後ろへと回る。そして、反対側にはギルド長と思しき人物が座っている。ブロンズランクではお目にかかるような人物ではないため、ウィズとエーレは初見だった。意外にもその人物は、ブロンドの長い髪を垂らし、線の細い理知的な年若い女性だった。


「ふふっ。驚かれましたか?初めてお会いする方にはよく驚かれます。これでも、荒事は得意なんですけどね。さて、早速ですが今回のクエストについて詳細はククさんからお伺いしました。それを受けて、ギルドでの決定をお伝えします。皆さんおかけください」


 三人席のため、今回のリーダーであるウィズと、ここは譲らないとまどか。そして、一行で最もランクの高いおっさんが席につく。エーレはエヴィン達と同様にソファの後ろへ行った。


「結論から申し上げましょう。ククさんには本日より一年間、当ギルド預かりの冒険者になって頂きます。一年後、彼の実績から判断し、通常の冒険者に戻るかそのままギルド預かりの冒険者を続けてもらうかの査定を行います。この決定についてはすでにククさんからは承諾を得ています。そして、今回のクエストは通常通り、報酬を支払うことをお約束します」


「ギルド預かりとは、どういう扱いですか?俺は今までそういった冒険者を知らないのですが」


「あまり例がない事例ですからね。何かしら重い罪を犯した冒険者が情状酌量の余地ありと判断された場合、ギルドの監視付きで続ける冒険者、と言ったところでしょうか。冒険者を続けるといっても通常よりも大幅な制限があります。まず、街の外へ自由に外出することを禁止されます。クエストで外に行く必要がある場合、ギルドが認めた冒険者と行動を共にする必要があります。次に、報酬の大幅な減少。ソロで行うクエストに関してはギルドが一旦報酬を査収し、その内容により一部を冒険者へと還元します。パーティーで受けたクエストである場合、クエスト完了後は一定の金銭納付が求められます。新たに装備や準備が必要な場合は申請して頂き、認められれば支給されます」


「……厳しい内容ですね。しかし、処刑されるよりはよっぽどましか……。ククはそれで納得してるんだな?」


「はい。ボクは既に契約書にサインしています。最短で一年間ですが、まどか姉がその後に迎えに来てくれるって、信じてますから」


「~~っ!!(かわいい奴めっ!)」


「それで、皆さんをお呼びしたのは他でもありません。今までの実績、今回の件を踏まえて、みなさんにはククさんがクエストで外出する必要があった場合の同伴をお願いしたいんです。」


 それは固定パーティーを組むことを、ほとんど認めているような物だ。確かにペナルティは厳しいがそれでも想像以上の好待遇と言ってよい。


「はい、謹んでお受けします」


 代表してウィズが諸々の契約にサインをして、一行は応接室を出る。シンディと一緒に通常のカウンターへと赴き、報酬を受け取る。そしてお決まりの。


「クエスト達成のお食事会に行くよ~!!」


 まどかが宣言し、前回と同じ冒険者に人気の店へと全員で足を運び、クエストの成功を祝うのだった。

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