表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/25

第二十二話

「ダメです」


「え?」


「え?」


「こほん。私と上位種を一対一で戦わせて」


「ダメです」


「え?」


「え?」


「ん、んんっ」


 さらに咳払いを一つ挟み、続けようとした所を遮られる。


「いや、聞こえてないとかじゃないですから……。ボクの望みはあなたが無事でいることなのに、最も危険なことをさせるわけがないでしょう……」


「あ、あ~、う、うん……。そうだよネ~。じゃ、じゃ~ど~しよ~かな~」


「俺を殺せ。そんでこいつらは全員逃がしてやれ。それでお前の望みは叶うだろ?」


「嫌だよ、エヴィンさん。私はその解決を望んでない。死ぬ覚悟あるなら、私に命を預けてほしい。ん~、そうだな、賭けの内容はこうしよう。エヴィンさんが私達を無傷で守り切れたら私の勝ち。だれかが傷つけられたら私の負け。さすがに全員をずっと守るのは不可能だから、もう少し条件は付けさせてもらいたいけど」


「いいですよ。ボクはこの人を殺してしまってもいいんですよね?」


「……うん。エヴィンさんもこれなら命を預けてもらってもいいかな?」


「わかった。俺はもうどうなってもいい。お前たちをそれで守れるならな」


「分かりました。それで、条件というのはどうするんです?」


「三人守るのは囲まれたら無理なわけだから、守る対象は一人。時間は、そうだな。大きめの枝に火をつけて、それが燃え尽きるまででどうかな。もちろん魔物は全部攻撃してきてもいい」


「全部で、いいんですね?」


「もちろん。守られる対象は私でもいいかな?」


「……。まぁ、いいですよ」


「まどか氏、それがしがやりますぞ。それがしもまどか氏のためなら命を預けられまする」


「まどか!そんな危険なことをあなたがする必要なんてない!それならあたしがやる!」


「おっさんの信頼が怖いなぁ……、なんて。エーレも。二人ともありがと。でも、私がやる。これも譲らない」


「お前は本当に、師匠にそっくりだ。一度言い出したら言うことなんてまったく聞く耳持たないんだ。わかった。お前にまかせる」


「ちょっとウィズ!まどかを止めてよ!」


「無駄だよ。ここで代わったら、この賭け自体をや~めたって言いかねない。それに、後からすげーねちっこくこのことを言われ続けるに決まってんだ。諦めた方がいい」


(あ~お兄ちゃんにも同じようなこと言われたな~)


「そちらの話はもういいですか?それでは、賭けというなの処刑を、始めましょうか」


「あ、ごめん。ちょっとだけ心の準備をさせてほしいな。エヴィンさんと少し話したいし」


「……いいですよ。今生の別れですから。ゆっくり話をしてください」


 一行はククから離れ、まどかとエヴィンは準備という名の打ち合わせを行う。その横ではエーレとおっさんがかいがいしくまどかの装備をチェックし、口々に心配を告げる。そして、五分程度でククの元へと戻る。


「さて、それでは始めましょうか。枝はボクが探しておきました。魔術師さん、こちらに火をつけてもらっていいですか?火が付いたら、始めます」


 大き目の長い枝を手にしていたククがおっさんに枝を渡す。湿った枝はなかなか燃えず、下手をしたら消えてしまうものだが、そこはフェアにある程度乾いた物を探してきてくれたようだった。おっさんは少しだけ強めに火をつけ、火が消えないように乾燥した草を周囲に被せるようにして枝を置く。同時に上位種が唸り、ダガーウルフが三匹走り出した。


「オーラガード!」


 まどかが左手を振るい、ショートカットからスキルを発動する。ククは初めてまどかのショートカットスキルを目にして驚愕する。パーティーではショートカットでヒールは使っていたが、スキルを使う所は見せていなかった。そもそも事前段階ではショートカットの存在すら知らせていなかったのだから、驚愕は当然のことと言える。そして、先んじてまどかは続ける。


「私が何もしないなんて、言ってないからねっ!」


「っ!」


 ククは顔を苦々しくする。彼からすれば、まどかが戦力になるなどと微塵も考えていなかった。回復を使われることは想定していたが、まさか上位の防御系スキルが使えるなど想像もつかない。それでも、戦力は十分だ。昨日の段階で十匹まで減らされたが、中型は一匹生き残っているし、小型も一日で二匹増やしている。上位種もいる状況での絶対有利は変わらない。


 事前に聞いてはいたが、エヴィンはオーラガードが想像以上に自身の防御を上げていることに驚嘆した。大楯で防がなくても、小型の攻撃であれば致命傷は負わないだろう。だから、中型が攻撃してくる時以外は小型に攻撃することを選択した。まどかも盾を構え、周囲の攻撃を受け流す。二匹同時に襲い掛かってきそうな場合にはエヴィンに伝え、場所をスイッチして凌ぐ。エヴィンが怪我をしたら即座に回復も怠らない。


 枝が半分程燃える間、エヴィンは小型を三匹仕留めていた。中型にも手傷を負わせている。エヴィン自身も攻撃を受けていたが、オーラガードの効果とまどかの回復によって、戦力は当初から衰えていない。このままでは戦力を消耗するだけど業を煮やしたククはついに上位種を差し向ける。


 他のダガーウルフが一旦下がったのを見て、二人は上位種が来ることを確信する。そして、二人はアイコンタクトで頷き合う。上位種はエヴィン目掛けて飛び上がり、右腕からその爪を一気に一メートルまで伸ばしてエヴィンの首を狙って大上段から振り下ろす。エヴィンは大楯に全ての力を込めて受け止め、全力を持って力任せに押し返す。しかし、上位種の巨体はそれだけでは怯むことはなかった。今度は左の腕を振りかぶり、先程と同様に爪を延ばして振り下ろす。先程とは違って、全身の重量を使って押しつぶすようような攻撃だった。エヴィンは尚も大楯でその攻撃を受け止めるが、今度は力任せに押し返すこともできずにじりじりと押し込まれていく。再度上位種が右手を振り上げる動きに合わせて、エヴィンはなんとか大楯をずらして、上位種の態勢を崩させることに成功し、まどかの正面へと上位種を押し込む。その前には左手を振るい、ショートカットを発動させるまどかの姿があった。


「シィールド、バァアッシュッ!!」


 上位種がいる時点で、エヴィンが最終的に力尽きるのは目に見えていた。だから、まどかは最初から上位種との一騎打ちができる状況をずっと待っていたのだ。シールドバッシュで敵の動きを止めて、次のスキルで止めを刺すその瞬間を。振るった左手はそのままに、右手をミスリルの剣へかける。そして、ショートカットを続けざまに発動させる。


「ソードスラスト・トリプル!!」


 目に見えぬ剣線が三つ、いつかの状況を再現するように上位種の眉間、咽奥、腹部の3箇所に等間隔で刺し貫く。上位種はそのまま崩れ落ちた。数瞬おいて、ククもよろめき手と膝を地面につける。上位種を倒したことがククにも影響が出しているようだ。すると、他のダガーウルフの統制が失われる。中型が、ククに襲い掛かかろうとしたのだ。


「クク!逃げて!」


 まどかが叫ぶがククは動けずに顔を上げるだけだった。中型の爪がククに迫る。


(あぁ、自業自得かな。ごめんね、姉さん、まどかさん……)


 ギャウンッ!!と鋭い叫び声。寸での所で、中型は吹き飛ばされた。おっさんによる火の魔術が命中したのだ。


「間に合ったでござるか。まどか氏を悲しませるわけには参りませぬからな」


 吹き飛ばされた中型は、ウィズとエーレが止めをさした。他の小型達は散り散りに逃げ出していく。こうして、ダガーウルフとの戦いは決着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ