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第十四話

 探索の打ち合わせを終えた一行は二人一組となって森に入る。森の左半分平野側からエヴィン・クク組み、中央をまどか・ウィズ組み、山側をエーレ・おっさん組みが担当して調査を開始した。


 笛が吹かれることがないまま、日が落ちる少し前にウィズが笛を三回吹き、集合を掛ける。各自が簡単に報告済ました後、野営の準備を始める。森の夜は人間が活動するには危険だ。詳細な情報を共有していると完全に夜になってしまう。そのため、さしあたっての脅威がないことを確認し、野営の準備、火を焚くことを優先する。


 料理を担当したのはエヴィンとまどかだ。エヴィンはそのいかつい風貌に似合わず料理を作るのが好きなのだ。六人分の食事のため、大きな鍋を自分の荷物から出し、手際よく準備を始めた。そこに、家事全般得意なまどかが手伝いを申し出てまかされた形だ。エヴィンが具材を出して、まどかが野菜切る。日本で使っていた包丁とは勝手が違い、最初は使用感に戸惑っていたが、すぐにコツを掴みそつなくこなした。肉は大雑把な肉磨きしかされていなかったため、エヴィンが担当した。亜空間バックがない状況では、肉は傷んでしまう。そのため、初日に力を付けるために少しだけ多めに用意されていて、全て使われた。明日以降の肉は、干し肉がメインに上ることになるだろう。鍋で作られた漁師はシチューだったが、味付けは塩と香辛料が少々とやはり薄めの味付けだった。


(アイリースでもお米と醤油や味噌みたいな発酵させた調味料が食べたいなぁ。色んな国にいって調味料探しをするのも悪くないかもしれない)


 味見をしたまどかは少し物足りなさを感じ、新たな目標を心に刻むのだった。


◆◇◆◇◆◇


 夜営と食事の準備が終わり、食事を取りながら各自が詳細な報告を始める。最初に報告したのはウィズだった。彼らは芋虫とリス型の魔物、それと前回同様ワイルドボアに遭遇した。魔物はどちらもそれほど脅威ではなく、まどかがリス型の魔物の攻撃を捌く練習をする余裕もあった。まどかが攻撃を受け流しきれない場面もあったが、それ以外は問題なく、止めはウィズが刺す形で戦闘を二度程こなした。しかし、その後はほぼウィズ一人で対応することとなる。リス型の魔物はともかく、芋虫型の魔物がまどかに対して多大な心理的ダメージを強要したのだ。


「というわけで、俺達は大きな問題はなかった。ただリスは昼間はあまり活動しないはずなんだよな。夜とか朝方に活動するはずだったから、ちょっと嫌な感じだな」


「何が問題ない、よっ!リスの攻撃受けちゃった時、一瞬体が浮いて、息もできなかったんだからっ!何よりあのデカい……ひぃ!」


 次に報告をしたのはエヴィンだ。彼らは調査終了間近まで魔物に合うことも、異常を見つけることはなかったという。ただし、最後に植物型の魔物をククが発見した。その魔物は大木サイズにまで成長しており、一見魔物には見えなかったそうだ。魔物から五メートルくらいまで近寄った段階でククは木が動くのを察知し、気づくことができたということだった。


「わりぃが、魔物は倒してねぇぞ。さすがに大木サイズを二人じゃ危険だからな。その代わり、ククには周囲を確認してもらった。クク、頼む」


「はい。近づかなければ攻撃してこないタイプの魔物です。おそらく探知範囲は五メートルといった所ですが、実際に攻撃してくる距離は三メートル未満です。実際にギリギリまで近づいて確認しました。あとは、とてもゆっくりですが、移動しているようです。移動して来た跡を見ると、おそらく湖から少し蛇行して移動しているようでした。移動スピード的にここ二、三日で湖の方からこれる距離じゃないです」


「わかった。エヴィンさん、ククありがとう。一旦その魔物は放置する。帰りに様子を見て村に向かいそうだったら討伐にしよう。次はエーレ、どうだった?」


 エーレ達もウィズ達と同様に何匹か同種の魔物に遭遇したようだった。その他、木々がなぎ倒されている箇所を何か所か見つけたという。


「木の倒れ方から行って、何か大きな物がたまたまぶつかって倒れたような感じね。一直線に何本もの木を倒しているわけじゃなかったわ」


 事前にある程度予想していたことだが、やはり森の奥、特に湖を中心に異変が起きているのだろう。魔物や動物達が習性外の行動を取っているし、元いた場所から逃げ出しているように感じる行動が目立つ。つまり、強い魔物が少し前から住み着いている可能性が高い。


「明日の昼すぎまでは今日と同じ隊列で進もう。湖まで少し距離があるだろうけど、早めにエヴィンさん達のルートに合流して、湖を調査しよう。野営の場所は湖の状況次第だ」


「川の向こう側はどうする?」


「あっちはもうディスクの領地じゃないから、やめておこう。下手に首つっこむと厄介ごとに巻き込まれかねないし」


「了解だ。ただ、川向うに今回の元凶がいたら?」


「それでも撤退だね。こっち側に襲ってきたらさすがに迎え撃つけど、こちらかは仕掛けない。政治は貴族様の仕事だよ」


「ま、それもそうだな」


 食事をしながらの情報共有と明日の方針も決まり、夜番の順を決める。順番はウィズ組み、エーレ組み、エヴィン組だ。まだ冒険者として経験の浅い二人を真ん中にさせないようにするための順番だ。


「それじゃあたしはテントに入るわね。まどか、十分くらいしたらテントに入ってきて」


「ん?うん。わかった。後で行くね」


 テントは2つ立てられており、男性用と女性用で分けていた。男どもは三人で寝るには窮屈だがこればかりは仕方ない。四人はそれぞれテントへ向かい、火の前にはウィズとまどかが残る。しばらくウィズと昼間の反省などを話してから、エーレが待つテントへと向かった。


「エーレ?入るね~。っ!!でかっ!?」


 テントに入るとエーレが上半身を桶につけたお湯で拭っている所だった。そして、まどかの目を奪ったのは、胸部だった。


(わが軍の倍以上の戦力があるぞ!?服で巧妙に隠していたのか!?)


「き、きみはどこにそんなものを隠していたのだね?どーいうことなのだね!?」


「え?あぁ、普段は動きの邪魔になるから、さらしを巻いてるのよ。格闘士なのに胸が邪魔で戦えないなんて笑えないでしょ?それよりもまどかも体を拭うといいわ。お湯と布は容易してあるからこれを使って」


「ふ、ふ~ん。そうなんだ。大きいのも大変なんだね(ちっ)……。それより、お湯と布ありがとう!さっきはわがままを言ってごめんね。エーレが居てくれて本当によかった!」


 女としての嫉妬と友人としての感謝が綯い交ぜになる中、なんとかエーレへの感謝を口に出すことに成功する。そのままエーレと同じように体を拭い少し雑談をしてテントを出た。この後にエーレも夜番が待っているため、休んでもらう。そして、焚火の元に戻る。


 夜の森は暗い。平野であれば月明りが照らしてくれる。しかし、森の中では木の葉がその光さえも奪ってしまう。そして、とても静かだ。そんな森の怖さを焚火が忘れさせてくれる。焚火の火が周囲をてらし、時折爆ぜる木の枝が静寂を打ち消す。


(日本に住んでいた時はこんなに暗い所はあまりいったことないな。それにこんなに静かな所は初めてかもしれない。一人だったら怖いけど、みんなと一緒なら悪くないな。これから私、どうなるのかな。どう、したいのかな?)


 木の葉の隙間から見える月と星を見つめて、まどかは静かに考える。そして、何となしに声を出していた。


「ねぇ、ウィズ?あなたの名前の由来、知ってる?」


「ん?親からは何も聞いてないけど?」


「そっか。ウィズの名前はお父さんとお母さんが決めたんだもんね。じゃ、これは私の独り言。私ね、前も少し言ったかもしれないけど、ちょっと周りから浮いてたんだよね。学校で許せないことがあって、それに私は私なりに全力で戦ったの。でも結局、勝てなかった。負けてはいないと思うんだけど、その後もずっと頑張るのに疲れちゃった。だから、私はきっとゲームに逃げたんだと思う」


「……」


「アイリースを始めてからは楽しかったなぁ。最初にね、一緒に冒険をするパートナーを設定するの。それがウィズ。ウィズって言葉はね、『一緒に』って意味を込めたんだ。私と一緒にずっと冒険をしてくれるようにって。だから、この世界に来て、あなたと今一緒にクエストをしていて、私はすごくワクワクしてる。……自分でも何言ってるかよくわかんなくなってきちゃったけど、なんだろ。これからもウィズとエーレ達とみんなで一緒にいれたらいいなって、そう思うんだ」


「そっか。そうだな。みんなでずっと一緒に、冒険していけたらいいな」


 月明りと、森の静けさだけが二人を包んでいた。

更新ペースがまだつかめてないですが、二日に一話のペースで投稿する予定です。

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