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事の始まり

 今日で俺も15歳。これでようやく大人の仲間入りだ。


 胸が高鳴る。今日という日をどれほど心待ちにしていたことか!


 この世界―ギャラクシア―では、15歳を過ぎると1つ職業を得ることができる。


 大きくは人々を襲う魔物討伐を目的とする冒険者と、商人や鍛冶職人などのそれを支える職業に分かれる。


 もちろん、俺が志望しているのは冒険者だ。魔王の居場所を突き止めてそれを倒し、英雄としてたたえられるのだ。そのために、今日までずっと冒険者専攻の職業訓練アカデミーで修行を重ねてきた。


 大きな扉の前に着いた。ここが冒険者ギルドだ。大きく深呼吸をした後、両手に力を込めて扉を開ける。


「ご用件は何でしょうか?」


 入ってすぐのカウンターにいる受付嬢が言う。


「冒険者になるために職業をもらいに来ました」

「それでしたら、そちらの階段を上ってすぐの部屋になります」


 受付嬢が左手にある螺旋状の階段を示す。


「わかりました。ありがとうございます」


 緊張と興奮が心の中で入り交じり、心臓の鼓動が速い。それに合わせるように階段を上る足も速くなる。


 階段を上りきったすぐ横には、『就職所』と書かれた扉があった。その扉を開ける。


大量の本棚に囲まれたその部屋にいたのは、紫色のとんがり帽子を深くかぶった老婆だった。おそらくこの老婆と一緒に職業をきめていくのだろう。


「職業をもらいにきました」


 緊張からか、少しだけ声が震えた。


「おおそうか。15歳のお誕生日おめでとう。今日からは、君も晴れて冒険者の一員じゃ」


 老婆がゆっくりと口を開く。


「まあまあ、まずは座ってくれ」


 どこからともなく、机と椅子が現れた。俺と老婆は机を挟んで向かい合うようにして、椅子に座った。


「おばあちゃん、もしかして魔道師ですか?」

「そうじゃよ。実はこう見えても、かなり腕利きの白魔道師だったんじゃぞ」


 そう言うと老婆は職業手帳を見せてきた。職業の白魔道師、という記載の隣には、Sの文字がある。


「Sランクですか?びっくりしました!」


 冒険者には、E~SSSまでのランクが存在する。これが大体の戦闘における強さを示すものである。一般的に、Bランクまで到達すればかなり優秀とされている。今目の前にいる人物がSランク冒険者であったことを知り、驚きを隠しえない。


「流石に今は魔物の相手もしなくなったし、衰えてはいるがのう」

「それでもSランクはすごいですよ。尊敬します!」

「それは嬉しいのう」


 老婆が口を大きく開けて笑う。


「そろそろ本題に入るとしよう。名は何という?」


 いよいよだ。思わず膝の上で拳を強く握る。


「リュウです。リュウ・エドガーです」

「希望している職業はあるか」

「いえ、特には。1番適性値が高い職に就きたいと考えてます」

「ほう、そうか。それじゃ、今から職業の適性を調べるからちょいと待っててくれ」


 そう言うと老婆は目を瞑り、なにやらを瞑想し始めた。名前と顔を少し見ただけで調べることができるのか。さすがSランクの魔術師だ、と感心していると、老婆がむう、と唸って目を開けた。


「適性値150、君にぴったりの職業がある。だがしかし…」

「150!?適性値の最大は120じゃないんですか!?」

「そのはずなんじゃがなぁ」


 不思議に思ったに違いない、老婆が腕組みをして首をかしげる。アカデミーでは確か、職業適性値は120までと習ったはずだ。150ということは、俺は本当に魔王を倒してしまう選ばれし者なのかもしれない。期待に胸が膨らむ。


「教えてください!何の職業ですか!?」


 興奮を抑えきれずに、椅子から立ち上がり机から身を乗り出す。


「言うぞ」

「はい」


 手に汗がにじんでくる。ゴクリ、と唾を飲み込む。


「天狗使いじゃ」

「テン・・・グ?」


 聞き覚えのない言葉に戸惑っていると、俺の右にある本棚から1冊の本が飛び出してきた。そして、老婆がその本のあるページを指差して言った。


「これじゃ。天狗使いとは、名前のとおり天狗を操って共に戦う職業である。天狗とのコンビネーションを上手くとれるかどうかが、強さに影響してくる」

「えーと、それはつまり青魔道師っていうことですか?」


 冒険者の職業は大きく分類すると4つある。戦士、魔道師、武闘家、盗賊だ。青魔道師は魔道師の中でも、召喚や錬金術を得意とする職業である。青魔術師の中には、精霊を呼び出して戦う冒険者もいるとも聞いたことがある。


「いや、青魔道師は青魔道師じゃ。わしも驚いたよ。なにせこの本は、1万年以上前の文献じゃからのう」

「1万年!?ということは、その天狗使いという職業はその1万年の間誰もなったことがなかった職業ということですか!?」

「そういうことになるな。だが残念ながらわしにも詳しいことは分からん。本当に1万年前にこの職業が存在したか、ということもだ。なにしろ文献がこれしかないのでは…」


 老婆が何かを言いかけた瞬間、本が突如輝き始めた。


「っ!」


 突然のまばゆい光に、思わず目を瞑る。何が起きているんだ?いったい…



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