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#7 浴場

「オルガレッタ殿。今日から貴殿は、正式に司令部付き主計科の一員となる」

「は、はい!」

「そこでだ、本日をもって日給制は廃止、月給制に移行する。来月から支給される1か月分の給料は、これを見てくれ」

「はい、ありがたく、頂戴いたします!」


 宇宙から帰還した翌日、私はフェデリコさんから正式にここの職員になったことを通達される。

 来月からもらう給料の明細を受け取る。それを見て、私は驚く。


「なななななんですか、これは!?」

「なんだ、どうした。少なすぎるか?」

「い、いや、多すぎです!いいんですか、こんなにもらっても!?」


 まず、雑用係としての給料が、月に2000ユニバーサルドルだと書かれていた。

 つまり、銀貨2000枚。金貨にして20枚だ。貴族じゃあるまいし、毎月そんなお金をもらえるなんて、とても信じられない。

 が、それ以上に驚いたのは、その横にある「特別手当」というやつだ。

 なんとこれが、月に2000ドルだ。

 合計すると、月に4000ドル。王族もびっくりなほどの給料を、毎月いただけるのだ。


「貴殿の占いにより、艦隊の危機が救われたのだ。それでも安いくらいだと思っている。これに加えて、官舎への居住権に、残業手当もつく」

「ええっ!?官舎って言われても、私には母と弟がいるんですが……」

「承知している。だから、3人で住めるように、3DKの部屋が提供されることになっている」

「は、はあ、ありがたくいただきます……」

「その代わりにだ、貴殿には毎週、やってもらいたいことがある」

「はい、なんでしょうか」

「その、なんだ、私の手を握って、占いをするのだ」

「はい。よろしいですよ。でも、なぜです?」

「この間のように、艦隊に危機が訪れないかを、私を通して予知するためだ」

「ああ、そうなんですね。分かりました。占わせていただきます」

「うむ。では、下がってよい」


 私の占いには、一つだけ問題がある。

 それは、ある人を一度占うと、7日間はその人を占うことができなくなるのだ。

 手を握って先の光景を見ようにも、真っ白になるのだ。

 でも、10日先までに起きるその人にとって一番大きな出来事が見えるから、週に一度占うことができれば、それで十分と言える。なので、フェデリコさんは週に一度の占いを依頼してきたのだ。

 そんなことよりも、住む場所だ。司令部の官舎って、確か出来たばかりの高層アパートのことだ。あそこに家族3人で住めるのだ。しかも、ただで。

 引っ越しは来週。母と弟の居住証ができたら、移り住める。その日、その話を母と弟にする。


「ええーっ!?あの街に住めるの!?」


 その話を聞いた弟は、大声で叫ぶ。危うく、食べているハンバーグを落としてしまうところだった。


「だ、大丈夫なの?あの街は、あっちの星の人しか住めないんじゃないの?」

「うん、そうなんだけど、特別に許可が下りることになったの。手続きに少し時間がかかるから、引っ越しは来週になっちゃうけどね」

「い、いいの?私達平民が、あんな贅沢な街に引っ越しすることになっても」

「いいよ。司令部がいいって言ってるんだし、大丈夫だよ。それにあっちの街の方が、お母さんが働ける場所がありそうだし」


 実は、母は3日前から機織りの仕事をしていない。宇宙からもたらされた機織り機械のおかげで、安くたくさんの布が作れるようになったため、機織りの依頼がどんどんと減ってしまった。おかげで母は今、別の仕事を探しているところなのだ。


「でも、あの街で働くといってもねぇ……私は字も読めないし、せいぜい機織りしかできないから、働ける場所なんてあるのかしら?」

「大丈夫だよ。どこも人手不足だし、働ける場所なんていくらでもあるよ。それにお母さん、まだ若いし」


 私の母は、35歳。私は母が17歳の時に生まれた。父とは幼馴染で、子供の頃からすでに結婚することが決まっていた。16歳で父が仕事をするようになると、すぐに母と一緒に暮らし始めた。

 私が生まれた5年後に、弟も生まれた。このままずっと幸せが続くと思っていたら父が亡くなり、今に至る。

 私が稼いでいるから、母が働かなくても特に困ることはないのだが、やはり何もしないで暮らすのはしのびないという。

 私としては、母にはのんびりと過ごしていてもらいたいなぁと思っている。父が死んでから今までずっと苦労かけてきちゃったし、美味しいものを食べながらテレビでドラマでも見て過ごしていて欲しい。

 さて、正式に司令部付きの栄えある雑用係となれたわけだが、それで仕事が大きく変わるわけではない。

 今日もガエルさんを伴って、駆逐艦の補充作業だ。


「ええと、ここであの棚に洗剤を置くんですね。それから主計科の事務所へ行って……」


 さすがは元貴族、飲み込みが早い。数字も読めるし、タブレットの使い方ももう覚えてしまった。

 その日のお昼は、彼女はナポリタンを食べる。なんでも昨日、横で誰かがこれを食べているのを見て気になっていたのだという。

 で、早速そのナポリタンも気に入ったようで、また左手で頬を抑えながら、にやついていた。これで彼女の笑顔を見るのは、2回目だ。


「あら、ガエルちゃんも笑顔になれるのね」


 と突っ込みを入れるのはリリアーノさん。すると、真顔に戻って反論するガエルさん。


「そ、そんなことはありません」


 だが、ナポリタンを口に入れると、再びにやにやし始めるガエルさん。美味しいものを前にすると、どうにも止められないようだ。


 とまあ、いつもの日常が始まる。が、正式に司令部付きになったことで、新たな仕事が増える。

 昼からは、フェデリコさんに付いて帝都の貴族宅に出かけることになっている。私は付き添いだ。

 貴族の屋敷を訪れるときに、一人で行くのは顰蹙(ひんしゅく)な行為だ。大抵は召使いを伴って訪れるのが礼儀とされていて、フェデリコさんは私にその召使い役を依頼してきた。

 まあ、帝国の平民だから、召使いにはちょうどいい身分ではある。実際、フェデリコさんの召使いのようなものだし、私は引き受けた。


「で、フェデリコさん、どちらに向かうのですか?」

「うむ。ベルンシュタイン男爵の屋敷だ。男爵の保有する領地に、ビーム兵器用の鉱物資源が採れる鉱山があるため、その採掘権の交渉を行うのだ」

「はあ、そうなんですか。大変ですよね」

「ところで、そういえば今日は占いをしてもらう日だったな。出かける前に、早速頼みたいのだが」

「はい、承知致しました。では……」


 占い分のお金を、なんと月に2000ドル、銀貨にして2000枚分ももらっているのだ。これはきちんと見なくてはならない。私は、フェデリコさんの手を握る。

 にしても、フェデリコさん、手を握ると、顔を赤くして睨みつけるように私を見るのだが、なぜ、睨んでくるんだろう?別に機嫌が悪いわけではないようなのでいいのだけれど、怖いから何とかして欲しい。

 私はそのまま、目を閉じた。


 ◇


 どこだろうか、ここは。司令部ではない。少し、視界がぼやけている。

 目の前には、誰かいる。ていうかこれ、私だ。

 私なのだが、どうも様子がおかしい。

 微笑みながら、フェデリコさんの手を引いている。

 しかしどういうわけか、私は素っ裸。素っ裸の私が、フェデリコさんの手を引いている。一体これは、どういう状況なのだ……?


 ◇


 私はハッとして、目を開ける。目の前には、眉間にシワを寄せたフェデリコさんが見える。


「どうした?何か、あったのか?」


 私の様子を見て、尋ねるフェデリコさん。私は一呼吸して応える。


「い、いえ!ごく普通の風景でしたよ。戦さの光景はありませんでした」

「そうか。ならばいい」


 あの光景が普通とはあまり思えないが、怪我や命に関わるようなことではなさそうだし、敢えて言う必要もないだろう。

 しかし、あれは一体何だったのだろうか?もやもやしたまま、私はフェデリコさんについて行く。

 黒い車に乗り込む。私がここにくるときに乗せてもらった、あの車だ。これに乗って、まず門のところまで行く。


 ところで、私は今、メイド服を着ている。召使い風の姿になる必要があるらしくて、着替えさせられた。メイド姿の私を、いつものようにフェデリコさんは眉間にシワを寄せて見る。

 なお、この格好の時は、私はフェデリコさんのことを「フェデリコ様」と呼ばなくてはならない。召使いがさん付けでは、格好がつかない。

 で、門の前に着くと、そこで車を駐車場に停めて、一旦門の外に出る。その後、帝都の広場まで行き、そこで馬車に乗り換える。

 この広場、私が以前、占いをしていた場所だ。そうか、フェデリコさんはここで馬車に乗るために、この広場に来ていたのか。

 なぜこんなめんどくさいことを、と思うのだが、貴族のお屋敷に車で乗り付けるのはまだご法度らしい。帝都には相応しくないだの言われているそうで、それでわざわざここで馬車に乗り換えるのだと言う。かといって歩いて屋敷を訪れると、それはそれで貴族に馬鹿にされるらしいので、馬車で訪れるようになったのだとか。ややこしいことだ。

 で、貴族が乗るような立派な馬車に向かう。フェデリコさんはその御者に何かを話しかけ、銀貨を何枚か渡し、その馬車に乗り込んだ。私もフェデリコさんのカバンを抱えて乗り込んだ。

 馬車が走り出す。私は車やバス、それにトラックには何度か乗っているが、馬車はこれが初めてだ。赤い立派な椅子だけど、ガタガタと揺れて、あまり乗り心地がいいとは言えない。おまけに、遅い。

 さらにこの馬車には、エアコンがない。今は夏の真っ盛り、バスや車には当然付いているエアコンがないため、とても暑い。

 バスに比べるとのろのろと走るこの馬車に揺られて、貴族の屋敷が集まる一角に入る。ここは平民街と比べると、格式と威厳のある大きな屋敷が並んでおり、平民の私などはその建物の姿を見るだけで圧倒される。


 そして馬車は、ある屋敷の前で止まる。この辺りでは、やや小ぶり気味なお屋敷。ここが目的の、ベルンシュタイン男爵のお屋敷だ。馬車を降り、フェデリコさんは門の前で誰かを呼ぶ。中から召使いが出てきて、フェデリコさんに用件を尋ねる。


「そうだ、ベルンシュタイン男爵にお会いしたい」

「はい、かしこまりました」


 そそくさとその召使いは屋敷の奥に戻る。しばらくすると召使いが戻ってきて、門を開ける。

 中に通され、私とフェデリコさんはその召使いの後ろをついていく。


「旦那様をお呼びいたします。しばらくここでお待ち下さいませ」


 私とフェデリコさんは応接室に入った。古風な装飾のソファーとテーブルが置かれ、壁には歴代の当主の絵が飾られている。

 それにしても、暑い。司令部の室内や駆逐艦の中は、エアコンがついてるから、いつでも快適。だが、ここはエアコンがない。風を通して少しでも涼しくする工夫は施されているが、エアコンには敵わない。

 深々と頭を下げて奥に向かう召使い。しばらくすると、男爵と思しき人物が現れた。


「いやいや、待たせたな、フェデリコ殿」


 いかにも貴族という人物が現れた。派手な装飾を施した衣服に、太った身体、つやつやの肌。私達のような平民から搾り取ったお金で裕福三昧した結果なのだろう。

 そしてエアコンのないこの暑い部屋で、交渉が始まった。さすが相手は貴族、随分と威圧的な物言いをするが、フェデリコさんはまるで動じない。堂々と自らの役割を果たしている様子だ。


 しかし、この暑いところでよくあれだけ平然としていられるものだ。やはり、普段からあんな魔物のような連盟と戦っているだけのことはある。それに比べたら、エアコンを知らず、ピザすら食べたことのなさそうな、ただ偉そうにしているだけのこの男爵は中身がない。

 結局、トントン拍子にことは進み、交渉は妥結したようだ。握手をして、両者は別れる。

 外に出て、再び馬車で広場へと向かう。その行程で、フェデリコさんがボソッと呟く。


「……暑い」


 ああ、やっぱり暑かったんだ。そりゃそうだよね。この馬車にもエアコンないし。


「フェデリコさん……様。大丈夫ですか?」

「いや、あまり大丈夫ではない。服の下は、汗だくだ。あの狸親父とやりあった分、さらに変な汗もかいた。すぐに風呂に入りたいくらいだ」


 はたから見ていると、男爵を手玉にとっているかのような堂々とした態度だったけれど、意外と大変だったんだ。


「フェデリコ様、そういえば、広場のそばにありますよ、公衆浴場が」

「そうなのか?」

「はい。もう夕方ですし、そろそろ仕事を終えた職人のために、開かれている頃です」

「そうなのか。このまま帰るのも忍びないしな、では行ってみるかな」


 こうして私とフェデリコさんは、公衆浴場に寄って帰ることになった。

 馬車が広場に着くと、私とフェデリコさんは広場のはずれにある浴場へと向かう。

 実はこの帝都には、温泉がある。深い井戸を掘ると、時々温泉脈に当たるので、そこが公衆浴場となっている。

 他の街では朝しか開かれない公衆浴場だが、この温泉のおかげで、帝都の公衆浴場は朝と夕方の2回開かれる。銅貨2枚で入ることができるため、私と家族も週に2、3度は入っている。

 大きな木造の公衆浴場が見えてきた。まだ開いたばかりで、職人よりはご近所の奥さん達が多いようだ。次々に奥さん達が中に入っていく。

 私とフェデリコさんは、入り口で拭き取り用の布を受け取る。そこで2人分の銅貨4枚を払い、中に入った。


「……おい、オルガレッタ殿」

「はい」

「ここは、もしかして、女湯ではないか?」

「えっ!?ああ、ここはそういうのはないですよ。男も女も、一緒です」

「いやいや、それはちょっと、いやかなりまずくないか!?」

「えっ?どうしてです?」

「どうしてって……裸になるんだろう?いいのか、そんな場所で、男女が一緒だなんて!?」

「いいも何も、ここはそういうところですよ。さ、さっさと汗を流して行きましょう!」

「お、おい!」


 私はためらうフェデリコさんの手を引いて中に入る。

 入り口すぐのここは、脱衣所だ。男の職人も少しはいるが、今はまだ女の人の方が多い。

 服を脱ぎ、次々と中に入っていく人々を見て硬直するフェデリコさん。どうしたのだろうか?さっきまでのあの貴族をも圧倒する気迫は、どこへ行ってしまったのだろうか?


「このカゴに脱いだ服を入れてですね、ここに置かれた小さな布を持って中に入るんですよ」

「いや……それはなんとなくわかるが、いいのか?私が入っても」

「ちゃんとお金は払ったんです。いいんです、入っても」


 私はためらうフェデリコさんをよそに、さっさと服を脱ぎ始める。それにしても、今日のこのメイド服というやつは脱ぎにくい。着慣れない服は、こういう時困る。


「フェデリコ様、この背中のフックを外してくださいますか?」

「な、なんだと!?私に服を脱ぐのを、手伝わせるのか!?」

「手が届かないんです。申し訳ありません」

「う、うむ。仕方がないな……」


 フェデリコさんに手伝ってもらい、なんとかこのメイド服を脱ぐ。


「あれ?フェデリコ様?まだ脱いでいないんですか?」

「あ、ああ、すまない……すぐに仕度をする」


 なんだか動きがぎこちないなぁ。フェデリコさんって、もしかしてお風呂が苦手なのだろうか?


 ようやく脱いだものの、なぜか眉間にシワを寄せたまま硬直気味のフェデリコさん。


「ほら、フェデリコ様、行きますよ。大丈夫ですか?」

「あ、ああ、大丈夫……なのかな?」

「ええーっ!しっかりして下さい!私が手を引いてあげますから、ついてきてくださいね」


 私はフェデリコさんの手を引く。あまりにしかめっ面で私の方を見るので、私は微笑む。

 そして、フェデリコさんの手を引いたまま、浴場の方に向かった。

 ああ、そうか。出かける前に見たあの光景は、これだったんだ。だから私、素っ裸だったのね。納得。でもこんなのが、この先10日間でフェデリコさんにとって一番衝撃的な光景ってこと?


 ここは大きな木の浴槽が一つあり、その周りには三助や湯女達が背中を流してくれている。

 もちろん、ただで背中を流してくれるはずもなく、銅貨2枚を渡さないといけない。いつもなら断るのだが、今は私も稼げるようになったし、せっかくだから背中を流してもらうことにする。

 フェデリコさんの分と合わせて、4枚の銅貨を持ってきている。そこに、湯女が1人寄ってきた。


「お背中、流しましょうか?」

「はい、私とこちらの方の2人、お願いしますね」


 と言って私は湯女に銅貨4枚を渡す。それを腰につけた布袋に入れると、まず私の背中を洗ってくれる。

 ああ、なんだかいい気持ち。お金持ちになった気分。いや、実際、お金持ちだよなぁ、私。あの司令部に勤めるようになってから、贅沢になった。

 続いて、湯女はフェデリコさんの背中を洗い始めた。が、フェデリコさん、すっかり固まってしまい、はたから見るとまるで湯女が銅像を洗っているかのようだ。

 奥では、吟遊詩人が歌を奏でている。


「あの門を超えて~馬なしの馬車に乗り~王宮のようなその場所に~足を踏み入れた~そこは~地上に現れた天国(バルハラ)かぁ~……」


 正直言って、あまり上手くとは言いがたい吟遊詩人だ。察するに、この歌はショッピングモールのことを歌っているのだろう。

 浴槽の中で、男女がひと組、なにかを飲みながら話をしている。恋人同士か、それとも夫婦か。飲んでいるのは多分、エールだろうな。

 銅像のようになってしまったフェデリコさんを、浴槽まで連れて行く。中に入ると、この帝都の温泉特有の錆びた鉄のような匂いがする。帝都の温泉は、少し茶褐色をしている。


「どうですか?フェデリコ様。帝都の温泉、なかなかいいところでしょう」

「ああ……私にとっては、まるで異次元の狭間に迷い込んだような、そんな場所だ……」


 この辺りからようやく慣れてきたようで、フェデリコさんにも少し、余裕が出てきた。吟遊詩人の歌を聴いたり、周りを見渡すようになった。

 とはいえ、今は公務の途中。早々に浴場を出て身体を拭き、服を着て外に出る。

 門を通り、ようやくエアコンの効いた車内に乗る。ああ、こっちはやはり快適だ。

 司令部に向かう車内で、フェデリコさんはぼそっとつぶやく。


「……またあの公衆浴場に、行ってもいいな……」


 それを聞いて、私は応える。


「はい、その時はまたお供いたしますよ。フェデリコ様」

「ああ、オルガレッタ殿、門のこっち側では、いつも通りの呼び方でいい……」


 そういうと、眉間にシワを寄せたまま腕を組んで目を閉じ、何か考え込んでしまった。顔は少し赤い。エアコンが効いてるのに、まだ暑いのかな?


 初めての帝都への付き添いという仕事だが、私は何も言わずに、ただカバンを持って歩いただけだった。こんな楽な仕事であんなに給料を貰って、いいのだろうか?

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