#37 再会
「ドナテッロ中尉が、ガエルさんに惚れてるらしいですよ!」
エリーザさんが何気なく放ったこの一言が、全ての始まりだった。
「……ドナテッロって、誰?」
「あれ、知りませんか?駆逐艦6182号艦の機関科所属の、ぽっちゃりした体型のお方ですよ」
「ああ……もしかして、あの『オタク豚』と言われている、あの男のこと!?」
「そうですよ。さすがはヒルデガルド様!よくご存知で!」
「一度話したことがあるのよ。なんていうか、すごく陰気な感じで、嫌な方でしたわ」
「そ、そうなんですか?でもガエルさん、そんな人に好かれちゃったなんて……」
「それがですね、ガエルさんのことを毎日、後をつけてるらしいんですよ。司令部では目撃したって言う人が多いんですよ」
「なによそれ、気持ち悪い」
「と、とにかく、ガエルさんが何かされないように、注意しないとダメですわね」
そのガエルさんを追いかける男の話題で盛り上がる雑用係。やれやれ、もしかしたらガエルさんにいい人が現れたかと思っていたら、なんとかなりやばそうな雰囲気の人物だった。気をつけないといけない。
だが、ガエルさんの次の一言が、皆を一瞬、凍らせる。
「……会ってみたいな、その人に」
それを聞いたヒルデガルドさん、当然のように猛反対する。
「ダメよ!ガエル。そんな男になんか関わったら、何をされるか分からないわよ!」
うん、普段の私に対する発言からは感じられないほど、常識的な意見だ。私も、ヒルデガルドさんと同感である。
「ガエルさん 、ヒルデガルドさんの言う通りだよ。危ないって」
「でも、私のこと……好いてくれる男の人なんていなかったし……そんな珍しい人なら一度、会って話をしてみたい」
「ねえ、エリーザ。そのドナテッロ中尉ってどんなやつなのか、もうちょっと詳しく分からないの?」
「さあ……あまり人と接する人ではないらしいですよ。だから、人となりを知る人はほとんどいなくて……」
「仕事っぷりはどうなのよ!?」
「わりと真面目で、そつなくこなしてるらしいですよ。機関科でも、かなり重宝されてるって」
「仕事っぷりは悪くない、か。だけど、問題は性格よね。ほんと、どんなやつなのかしら?」
「私……会って一度、話してみる。そうすれば……きっとわかるかも」
「ダメだって!そんなことをすればあなた、どこに連れ込まれるか、分かんないわよ!?」
「どうせ私……戦さに負けて一度、連れ込まれてるから……気にしない」
「まあまあ、いくらなんでも軍籍を持ってる人が、そんなことしないでしょう。だけどガエルさん、もしその人から付き合ってくれって言われたら、どうするの?」
「うん……しゃべってみないと分からない。ただ……」
「ただ?」
「付き合うなら、私のご主人の……リリアーノさんに……許可を得ないと」
ああ、そういえばガエルさんはリリアーノさんが買ってきた奴隷だった。未だにリリアーノさんを「主人」だと思っているらしい。
というわけで、その辺りを含めてリリアーノさんのところへ相談に行く。するとリリアーノさん、あっさり承認してくれた。
「いいんじゃない。ガエルちゃんが積極的に人と会ってみたいなんて、珍しいわよね。いい機会だし、そのストーカーさんに会ってみたら」
「何ですか、ストーカーって?」
「そのドナテッロ中尉のように、気になる人を執拗に付け回してる人のことよ。時々やばいのがいるけど、司令部所属の人物なら、まあ大丈夫でしょう」
うーん、ちっとも大丈夫じゃない気がしてならないが、ともかくリリアーノさんの許可が出てしまった。早速、ガエルさんはそのドナテッロさんと接触することにした。
本人の希望で、2人だけで話してみたいと言うので、ガエルさんだけで接することになった。が、やはり危なっかしいので、司令部からレーザー盗聴器を借り出して、その会話を遠くから聞かせてもらうことにする。
で、夕方。仕事を終え、1人でショッピングモールに向かうガエルさん。司令部の入り口付近の陰で見張っていると、その後ろに現れた小太りの男。あれが、噂のドナテッロさんか。
その後ろから、雑用係4人が追いかける。「ストーカー」を「ストーカー」するという不思議な光景が、司令部の出入り口から始まった。
すっかり日が暮れた宇宙港の街の中を歩くガエルさん、その後ろを一定距離を置いて追いかけるドナテッロさん。曲がり角に差し掛かり、ガエルさんがその角を曲がる。ドナテッロさんも後を追う。
計画なら、ガエルさんがここで仕掛けることになっている。
そして、曲がり角を曲がったドナテッロさんの前に、ガエルさんが立ちはだかった。
双眼鏡を使って、その様子を見る4人。レーザー盗聴器を使い、会話の盗聴も行う。
「……変ですね。ちっとも会話が聞こえてきませんわ!壊れてるんじゃないの、この盗聴器!」
「しーっ!向こうに聞こえますって、ヒルデガルドさん」
いや、壊れてるわけじゃない。さっきからあの2人、会話せずただ凍りついて向き合ってるだけだ。ガエルさんは寡黙な人で、普段からほとんど自分から話そうとはしない。一方のドナテッロ中尉も、急に目の前に現れたガエルさんを見て、かなり混乱しているようだ。
なかなか動かないこの2人。均衡を破ったのは、ガエルさんだった。レーザー盗聴器が、2人の会話を捉える。
『……ドナテッロさん』
『……はい』
『少し……お聞きしたいことが』
『はい……』
『なぜ私の後を……ついてくるんですか?』
いきなり核心的なところを突いちゃったガエルさん。大丈夫か、最初からそんなことを聞いちゃっても?
『……ずっとあなたに告白しようと、思ってたんです』
が、相手もそれに応える。随分と分かりやすい応えだ。が、これが付け回していた理由?普通に話せば、良かったのでは。
『どうして……私なんかに、告白しようと思ったんですか?』
『……それはもちろん、可愛い人だなって、思ってるからです』
なんとも無機質な会話が続く。どうもこの2人は、まともな会話ができないようだ。そういえば以前、司令部の接客マニュアルというのを見せてもらったが、あれに書かれた会話集のような、そんな機械的な会話が続く。
『あの……私、今まで可愛いと言われたこと、ないんです……』
『そ、そうなんですか?』
『そうなんです……だから、どの辺りを見てそう感じられたのか……ぜひお聞きしたいです』
『では……よろしければ、どこかのお店でゆっくり、お話しませんか?』
『はい……いいです』
私だったら、こんな機械的で、こんな無機質に誘う男について行こうなどとは思わない。それにこの男、正直言ってあまりいい見栄えの男とは言い難い。
だがこの短いやり取りで、ガエルさんなりに何かを感じ取ったのだろう。この2人は並んで、ショッピングモールに向かって歩き出す。
雑用係の精鋭4人も、その後を追う。が、ショッピングモールの入り口付近の人混みで見失ってしまった。
「もう!なにやってるんですか!ちゃんと見てなきゃダメでしょう!」
ヒルデガルドさんはお怒りだが、見失ったのはあなたのせいでもあるんだから、その怒りを私達にだけ向けるのは、ちょっと筋違いではないか。
しばらく探したものの、どこに行ったか分からない。ああ、ガエルさん、大丈夫だろうか?
で、諦めて帰ろうとした、その時だった。
ショッピングモールを出ようとする私は、後ろから声をかけられる。
「探してる人物は、2階のカフェにいるぞ」
この声、どこかで聞き覚えがある。私は振り向いた。
忘れもしない顔が、そこにあった。私の中で一瞬、戦慄が走る。
「あ……ああ……」
「よぉ、久しぶりだな、占い師のお嬢ちゃん」
「……あなたはもしや、髭男さん」
あの強盗事件の主犯格の人物が、どうしてここにいるのか?私は一瞬、混乱する。
「あら、お知り合いですの?」
「は、はい、でもこの人……」
「あなた!私達の探してる人物がどうとか言ってましたけど、ご存知なんですか!?」
「案内するぜ。こっちだ」
髭男についていくヒルデガルドさん。リーゼロッテさんもエリーザさんも、ヒルデガルドさんの後を追う。慌てて、私も後を追った。
「ちょっと、ヒルデガルドさん。この人は……」
「なに!?今はそれどころじゃないでしょ!早くガエルを見つけないと……」
いやあ、それどころだと思うんだけど。なにせこの人、元強盗だよ?
だけど、ヒルデガルドさんはガエルさんのことで頭がいっぱいで、私の話を聞こうとしない。あの髭男の後を、何の疑いもなくついていってしまう。
で、私達はショッピングモールの大きなカフェにたどり着く。
「ほら、あれだろ。窓際の、右から2番目の席」
「あ!いたっちゃよ!あそこ、ガエルいたよぉ~!」
リーゼロッテさんが指す方を、3人は見る。ほんとだ、ほんとにガエルさんがいた!
「ねえ、何を話してるのかしら?」
「さあ……ちょっと待って、あれを使ってみる」
私はレーザー盗聴器を取り出し、ガエルさんのあたりに当てる。
『ギャハハ!そうなのよ!私の彼氏!可笑しいでしょう!?』
……あ、しまった。隣の席の会話を拾っちゃった。私は狙いを変える。
『いけません!私には、地球122に、恋人が待ってるんです!』
『いいじゃないですか、200光年も離れた恋人より、近くの……』
うーん、まるでドラマのような気になる会話が聞こえてしまったが、これも違う。目的の会話じゃない。
「おい、嬢ちゃん!」
「えっ!?あ……」
「これは、声の振動を受けたコンクリートなどの振動を拾う道具なんだ。だから、あの柱を狙うといいぜ」
と言って髭男さんの指す方に、そのレーザー盗聴器を向ける。
『……なんですか……それは、知りませんでした』
『はい。でも気づいた時は、もういなくて。それで諦めていたら、2か月ほど前のある日、司令部の中であなたを見かけたもので。それで……』
『そうですね……私はあの後、リリアーノさんに買われたんです。でも、もしかしたら、あなたが私の……ご主人様だったかもしれないんですね……』
会話の途中だが、リリアーノさんの名が出ている。紛れもなく、これはガエルさんとドナテッロさんだ。会話が続いている。何を話しているのだろう?
『それでドナテッロさんは、私のこと……ずっと……』
ガエルさんがそう言った後、会話が途絶えてしまう。ただ向き合うだけの2人。
うーん、どうしたんだろう。なんというか、話すきっかけを失ってしまったようだ。見つめ合うだけの時間が続く。
「あーっ!じれってえな!」
それを見て、急に叫び出す髭男さん。
「ちょっと俺、雰囲気を変えてくるわ!」
「えっ?あの、ちょっと……」
「嬢ちゃん達は、ここで待ってろ!」
そう言い残し、髭男さんは店の奥に入っていく。そして、ガエルさんとドナテッロさんのいる席にズカズカと歩いていく。
ガエルさんの前に立つ髭男さん。一体、何を始める気なのか?私達は、レーザー盗聴器に耳を傾ける。
『よぉ!ここにいたのか、リエル!』
『……誰ですか……』
『もう時間だ。さ、行くぞ!』
『いえ……私、あなたのこと……知らない……』
急にガエルさんの腕を引っ張りあげる髭男さん。ちょっと髭男さん、何してんのよ!?
だが、それを見たドナテッロさんが叫ぶ。
『ちょっと!彼女に何てことするんだ!』
『はぁ!?誰だお前?』
『その手を離せ!』
ガエルさんの手を掴む髭男さんの手を、ドナテッロさんが掴む。そして、ガエルさんから引き離した。
ドナテッロさんは、髭男さんを睨みつける。この一触即発の状況に、カフェの中は騒然となった。
すると髭男さんは、ドナテッロさんに向かって言った。
『おっと、すまねえ。よく似てるが、人違いだったわ。危うくおまえの恋人さんを連れてっちまうとこだったな、悪かった』
と言って、ドナテッロさんの肩を2度叩き、そのまま店の外に出ていく髭男さん。
髭男さんが去り、ガエルさんがドナテッロさんに言う。
『ごめんなさい、私……うまく言い返せなかった……』
『いや、僕ももっと早く庇っていれば、ガエルさんに不快な思いをさせずに済んだのに……』
『いえ……でも私……嬉しかったです。ナタール王国が滅んで……両親も死んで……私を庇ってくれる人なんて、現れなかったから……』
『じゃあ……僕が、庇ってあげますよ。これからも、ずっと』
そして、ドナテッロさんはガエルさんの手を取る。ガエルさんも、手を握り返した。
「おい、どうだ。いい雰囲気になったか!?」
髭男さんが戻ってきた。
「ちょっと!あなたいくらなんでもやりすぎじゃありません!?」
ヒルデガルドさんが抗議する。だが、髭男さんは反論する。
「あそこで女をかばうことのできねえような男なら、あのガエルって嬢ちゃんを任せられねえ。そのまま腕引いて、ここに連れてくるつもりだった。だが、あの男は本気で庇ってきたぜ?ま、外野が心配するこたあねえよ。任せて大丈夫だろう」
「は、はあ……」
なんと、そこまで考えて髭男さんは一芝居打ったのか?ドナテッロさんとガエルさんの方を見ると、もうすっかりいい雰囲気だ。ガエルさん、ドナテッロさんの顔を見ながら、頬を抑えてにやけてる。
「てぇことだ。そろそろ撤退するぜ」
あの2人の状況を見て、髭男さんは立ち上がる。が、そこで私は急にこの人のことを思い出す。
「あ!そうだ!髭男さん、あなた、なんだってここにいるんですか!?あの時、捕まったんじゃなかったんですか!?」
「えっ!?捕まった!?どう言うこと?」
私のこの一言に、皆一斉に髭男さんを見る。
「そういえばこの男、何者なんですか!?オルガレッタさんの知り合いだって……」
「知り合いですよ。この人、あの強盗事件の主犯なんですから」
「えっ……強盗……?」
あの騒ぎを知るヒルデガルドさんやリーゼロッテさんは、事の重大さにようやく気付いてくれた。
「ちょっと!なんだってそう言うこと、もう少し早く教えてくれなかったのよ!」
「ヒルデガルドさん、ガエルさんのことばっかりで全然、私の話を聞いてくれなかったじゃないですかぁ!」
私はつい、ヒルデガルドさんに怒鳴り返してしまった。そんな2人を制止する髭男さん。
「まあまあ、いいじゃねえか。今は俺もあんたらと同業者なんだからさ」
「へ?同業者?どういうことです?」
「あれ、言ってなかったっけ。俺は今、司令部で働いているんだぜ」
「司令部で働いて……ええーっ!?」
と、言うわけで、今度は髭男さんの話を聞くことになった。雑用係4人と髭男さんは、場所を変えることにする。
ショッピングモールの1階に下りて、私とキースさんがよく行くピザ屋に入る。そこでピザを1枚頼んで、皆で食べながら話をした。
「じゃあ、改めて自己紹介しようか。俺は、この占い師の嬢ちゃんを巻き込んだ元銀行強盗で、今は宇宙艦隊司令部、陸上特殊部隊第3科所属のトゥリオというものだ。よろしく!」
「トゥリオさんと言うんですか。でも、なんだって司令部に……」
「あの強盗事件で逮捕されてよ、弟は地球122に送還されちまったが、俺は技量を生かして、ここで働くことになったんだよ」
「そ、そうなんですか?でも、なんですか、その技量って?」
「まあ、いろいろあって俺はベーゼホルンの裏の人間に顔が効くんだよ。そこに司令部が目をつけた。で、その技量を生かし、特殊部隊で任務を遂行することを条件に、執行猶予ってことになったんだぜ」
「はあ……そうだったんですか」
「じゃあ、要するに犯罪者じゃありませんか!いいんですか!?あなたみたいなのが、この街をうろついてて!?」
「いやあ、ヒルデガルド様には言われたかねえぜ。そういう点では、あんたも同類だろ?」
「うう……まあ、そうですけど……」
「そういや、オルガレッタさんよ。先日、あんたが捕まって殺されそうになった時も、俺が裏で動いていたんだぜ」
「へ?そうなんですか?」
「通報を受けてすぐに、3人組の男が、ベーゼホルンの手前から馬車であんたを連れ去ったことを知った。それで俺は、その馬車を割り出して、その御者から行き先を吐かせたんだ。で、あんたがブロッセンベルグ監獄にいると知った」
「ああ、そういえば、ベーゼホルンにいる特殊部隊に私の行方調査の依頼を出したって、キースさんが言ってましたね」
「で、その後事件は解決。だが、解決した後も、俺はこの件で動いていたんだぜ」
「へ?まだあの後も何かあったんですか?」
「本当に、あの宰相と司教だけが動いていたのかってね。一応、裏まで確認しとかねえと、またあんたが狙われちゃうかもしれねえからな」
「そ、そうだったんですか……そんなことまでやってたんだ」
「で、あの3人組を捕まえた。事情を知るのは、帝都じゃあの3人だけだからな。そいつらをまとめて司令部の地下に連れ込んで、その辺の事情を探ったんだよ」
「あの、あれですよね。脳波読み取りっていう機械を使って……」
「まあ、そういうのも使ったけどよ。嬢ちゃんに、あれだけ酷い拷問をした連中だぜ?普通の尋問なんざあ、するわけにいかねえ」
「あの……ということはトゥリオさん、私が受けた、その、拷問のことを……」
「ああ、3人からきっちり聞いたぜ。洗いざらい、全部な」
その言葉を聞いて、私は顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。あの出来事を知っているのは、あの3人の男と、死んだ宰相様と追放された司教様のみ。でもここにもう一人、その内容を知ってしまった人がいる。
「だからさ、あんたがやられたそのまんまの方法で、俺も尋問してやったのよ。結局のところ、黒幕はいなかったことがわかっただけなんだけどよ、あんたがやられた分はきっちり、やり返してやったぜ」
「はあ……そ、そんなことしてたんですか……」
「そうだよ。天井から吊るして、服を切り刻んでよ……」
「ああーっ!もう、いいです!その話は!」
本人も思い出したくないあの時の内容を、危うくバラされるところだった。他の3人はピザをもしゃもしゃと食べながら、私とトゥリオさんの会話をじーっと聞いていたが、ヒルデガルドさんが尋ねる。
「だからあなた、あのレーザー盗聴器の使い方に精通していらしたんですね」
「そうさ。この短期間でみっちり訓練されたからよ」
「あの!トゥリオさん!強盗事件って、あのショッピングモールのすぐ横の銀行で起きた、あの事件ですよね!?警察が飛び込んできた時、どんな気持ちでしたか!?」
「ああ、この嬢ちゃんが、俺達は捕まるって占いをしていたからよ、もう覚悟決めちゃってたね。ああ、来るものが来たって感じでさ」
「ええーっ!?オルガレッタさんって、そげなとこで強盗を占っとったんけ!?」
「そうだよ。しかも、銃を突きつけられてるって言うのにこのお嬢さん、馬鹿正直に俺らは捕まるってことを言うんだよ。まったく、たいした度胸してるぜ」
「まあ、オルガレッタさんらしいですわね。だからあのデブ宰相なんぞに捕まっちゃうんですわ」
ヒルデガルドさんにエリーザさん、それにリーゼロッテさんが各々、トゥリオさんに質問をしていた。
だが、まさかこんな形で髭男さん、いや、トゥリオさんに再会することになるとは思いもよらなかった。しかもあの時も、裏で私の救出に動いていたなんて……
私は2度、命を失いかけた。そして、2度ともある人物によって救われたことを知った。この人、品は良くないし、言葉も汚い、やることも乱暴だ。だけどそんな人だからこそ、私を救うことができたのだ。そんな不思議な巡り合わせの人物との再会を、私はピザとともに噛み締めていた。




