part5
女はお嬢様のような品のある姿とは裏腹に物騒な言葉を放った。
「殺すって...いきなり入ってきて凄いこと言うわねあんた、話す相手間違ってるわよ」
失笑しながらミチルは手で追い払う素振りをし、
「帰ってちょうだい。あんたのその顔を見る限り、勢い任せの感情で来ましたってことが容易に想像出来るわ。いくら私たちが人助けのサークルだからって犯罪の片棒まで持つわけないじゃない、勘違いにも甚だしいわ」
軽く怒気の籠った声でミチルは女を罵倒する。
目の下を真っ赤に充血させた女は反論しようとしたが図星を突かれたようで何も言い返せず、肩を震わせ口をパクパクと動かした。
「ちょっとミチル!そんな強く当たらないの!ごめんなさいね、怖がらせちゃって。とりあえず事情を説明してもらえるかしら?」
ウキヨはニコニコ顔で女性の傍に駆け寄り背中をさすりながら空いているパイプ椅子の方へ誘導した、その際ミチルの隣を横切ると小声でささやき、
「優しくっつったろうが」
と軽く肩を外した。
ミチルの小さき悲鳴を背に相談者の女はパイプ椅子に座るとふるふると小ウサギのように肩を震わせながら俯いていた。
ウキヨは彼女の近くに空いてるパイプ椅子を引きずりながら寄せて前かがみに座りこみ、
「それでえっと...さっき恐いこと言ってたけど、何で彼氏さんをそうしたいと思ったのかな?」
――相手の立場になって優しく微笑んで
自分にそう言い聞かせながらウキヨは質問の答えを待った。
女は茶色いショートヘアを軽く搔きあげるとウキヨを見つめ返す。
顔は中の上といった可愛い系と呼ばれそうな顔立ちをしており、その瞳は泣いていたこともあり純粋無垢な輝きを放ちウキヨに優しそうな人という印象を与えた。
「ゎたしの彼なんですけどその、浮気...というかその、浮気かどうかはわからないんですけどその...女の人に乱暴を働いてるらしくてその...私見たんです、電車内でその...女性に痴漢している彼をッ!」
女は最後に少し声を荒げてウキヨに事の顛末を説明した。
「そっか...そんな事があった日じゃ泣いたってしょうがないよね、つらいよね、苦しいよね。私もあったな、高校時代に付き合ってた彼が浮気してたの。しかも相手が私の親友でさ、相談とか沢山してたのになんでだよーって。最初は結構きつかったけど今となっちゃ良い思い出。恋愛なんて燃え尽きた後はどうってことないよ。時間がゆっくり癒してくれるの。ね、だから今は一緒に悲しんでさ、後でげんこつの一発でもくらわして終わりにしよ!」
――よしよしいい感じじゃない!相手の立場に立って共感して優しく微笑みながら包み込む、出来る!私以外と出来てる!
後ろでミチルの肩を入れ直していた3人の嘘をつくなと言わんばかりの刺すような視線を横目に、ウキヨは満足げに聖母のような微笑みをしながら女の返答を待った。
しかし女の返答は意外な所を否定したものだった。
「えっとその...見たのは今日なんですけど今日じゃなくてその...ゎたしタイムマシンで見てきたんです」




