part4
「イチ、ニのサンッ!」
「ぎyぁ!」
青髭こと左門龍作が掛け声と共に、外れたミチルの肩を入れなおした。
ミチルは小さい悲鳴を上げた後、戻った肩を愛おしそうに撫でながら呟いた。
「もうかれこれ肩外されて長いけど未だにこの瞬間は慣れないわね」
「ミチル殿はこの中でも群を抜いて外されておりますからな」
「そうねー、もう数えるのも止めたわ。青髭、あんた何回よ?」
「拙者は5回程かと」
「充分よ、普通人生で5回も肩外れるなんてそうそうあることじゃないわ。...まぁそれ以上にその体格の肩を5回も外す女の子もそう見たことないけど」
「何よ、おかわり?」
「もう腹一杯よ!」
ウキヨの言葉に冗談を言うなとばかりにミチルは叫んだ。
「ひゃはは、でもはやめにぬすっとがみつかってよかったぜ。よさんかんりしてるおれさまとしちゃあ、こんごもつづくようならだいきんがわりにてあしのにさんぼんはらってもうおうかとおもってたところだったからよ」
黄色い幼稚な話し方とは裏腹に恐ろしいことを言うマルこと相田虎丸に対して、ウキヨは溜息交じりに片手で頭を抱えながら言った。
「マルその考え方はもうやめなさい。この前聞いたの、あたし達『猫の手』に最近になって相談者がめっきり来ない理由を。今日部会で話す内容もそれよ」
「ほう理由とは」
青髭達が聞く耳を立てると、ウキヨは恋バナで自分だけが知ってる情報を伝えるかのように自慢げな声で実は...と始め
「ここ最近に出来たサークルに私たちと似た活動をしてる団体があるそうなの、サークル名は『万事屋』。インカレサークルらしくて他大学とも繋がってるそうよ」
「あら、それなら知ってるわ、そのサークルに知り合いがいるから。でもインカレだからって私たちにそんな影響するのかしら?」
「問題はそこじゃないわ、聞いた話だと学生達の間で『万事屋』と『猫の手』がよく比較されてるそうなんだけどその...評判が圧倒的に悪いのよ私たち!」
ウキヨはそう言うと腕を組みながらとツカツカと窓際まで歩き、数秒外の景色に視線を向けた。秋色に染まった木々が規則正しく植えてありベンチでは男女が談笑に耽り、大学自慢の中庭では教授を囲み学生達がワイワイとバーベキューを楽しんでいた。
ふーと一息つき、ウキヨはくるりとこちらを向くと
「だからこれからはもっと人に優しく接して欲しいと思うの。まずはそこからだわ、小さな積み重ねがいずれ大きな信頼を手にする、塵積理論よ!」
ドヤッといわんばかりに人差し指を掲げてウキヨは言い放った。
だが他の3人はこの時、同じ言葉が脳裏によぎった。
――いやそれあんたや...
苦労の絶えない溜息が部室一杯に広がった。
ガチャ
呆れ交じりの空気が充満するのも束の間、後期初めての訪問者が入室してきた。
久しぶりの訪問者に喜びを隠せない一同を前に、入室した女は目の下を真っ赤に充血させてこう言った。
「私の彼氏を殺してください」




