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ウキヨってヤツは!  作者: メタルリフレクトスライム
1章
11/11

part10

「そういえば…」


サークル「猫の手」に向かう道中、

土器子はおもむろに問い掛ける。


「さっき、純の撃った銃弾ですがどうして床に転がったのでしょうか」


サークル「猫の手」の部室で起きた襲撃事件。

言葉通りその引き金となった、土器子の彼氏”末純”による銃撃。

銃口は土器子に向けられたもので、発砲すれば壁に貫通、

もしくは土器子の体に致命傷を与えたに違いない。


しかし、結果としてはそのどちらでもなかった。

放たれた銃弾はみるみる速度を落とし、

土器子に届くことなく、短らの重みと重力に負けてしまった。


「あぁあれか…」


虎丸は頭を掻きながら、つまらなそうに答える。


「ありゃ、たぶん”焦らさないで女王様”が起動したんだろ」


ーーー焦らさないで女王様?!?!


「ちょっけい3センチまでのぶったいが、じそく100キロをこえるそくどでとばされると、

()()がきどうしてそくどがおちるようになってるんだあのへや。

まぁほかにいろいろせっちしてあるが、あれだシンプルイズベストってやつだな。」


装置の説明をしてくれたようだが、土器子の思考は装置の名前でストップしていた。

あわわわと顔を赤らめていると、ずいっと龍作が耳元に近寄る。


「虎丸殿のカラクリはどれも素晴らしい物ばかりでござるが、中には見るからに怪しいものもあり、学友の方々が目を光らせているのでござるよ。」


龍作は虎丸に聞こえない声で囁きニッコリと微笑む。


ーーいや、龍作さん。説明していただいたのは嬉しいけど、前です。私が引っかかってるのもっと前ですッ


龍作の親切心を無下に出来まいと心の声で呟く土器子。


「そもそも、あれができたのはウキヨたんとミチルのバカが”ウメボシのタネとばし”でマドわっちまってよーーー」


虎丸が”焦らさないで女王様”の生い立ちを話始めるも、

土器子の耳はもう上の空であった。


「それにしても土器子殿」


龍作は不意に問いかける。


虎丸の話は続いていたが、

土器子の表情が部室で絹田博士の話を聞いていた時と同じであったからである。


「純殿の襲撃前、土器子殿もその…純殿を殺害する為、我らの部室に足を運んだと記憶しておるが、そちらの件はもう心配無用でござるな」


空気が張り詰める。


「おい、龍作ッ」


「いやしかし…」


虎丸は龍作を制止するも土器子に視線を移す。


”土岐土器子は改心したのか”


龍作はその疑問が今も拭い切れていなかった。


先程、部室で兎樹代達の説得は行われたが、

振り返ると彼女は終始怯えている様子で、本心がわからなかった。

そして彼女からちゃんとした答えを聞かぬまま、末純による襲撃事件が発生。


龍作はこのまま二人を会わすのは危険ではないかと思った。

先程の制止を見るからに、虎丸もその点は理解してるだろう。


「…えぇ、大丈夫です」


土器子はポツリと呟く。


「私、今まで彼をちゃんと見てなかったのかもしれません。

純がどうしてあんなことをしたのかわからないし、タイムマシンで見た光景も…。

だけど、わからないなら聞けば良いだけですよね。皆さんと出会って、分かりました」


彼女にとって「猫の手」メンバーの日常は憧れそのものだった。

互いが好きに生きて、互いに本音でぶつかりあい、互いを認め合っている。

彼女が求めた世界がそこにはあった。


押し殺した声で土器子は続ける。


「一番近くにいたくせに…

私が見ていたのは、純ではなく”純の彼女である私”そのものでした。

彼の彼女として、周りにどう思われているのか、それだけを考えていたんです」


虎丸も龍作も黙って彼女の話に耳を傾ける。


「正直言うと殺害依頼だってそうです。人の性格は変わらない、これ以上壊れて欲しくない、彼の為だとばかり思ってました…でも本音は違います。

…怖かったんです。彼に話した後、もしそれが誤解で…いえ誤解で無くとも周りが私をどう見るのか。被害妄想が酷い奴だとか、度量が無いとか…純が可哀想だとか」


土器子はギュッと拳を握って続ける。


「でもそれじゃダメなんですよね。

周りから何を言われようとも彼が道を逸れそうなったら側にいるだけじゃない、違うと言葉にして伝えていく。まずはそこから始めていきます!」


先程までのオドオドした言動から一転、

自身に溢れた声で自らの指針を宣言する土器子。


「土器子殿…」


虎丸達はフッと笑みを浮かべ安堵する。


彼氏が有名な分、彼女の言う周囲の視線というのは想像以上のものであろう。

まして、彼女の性格上余計に神経質になってしまうのも、本人と話してよくわかる。

そんな彼女がそれらの視線を振り切り、彼女として彼を支えるというのは余程の勇気が必要だろう。


しかし二人は乗り越えられると確信していた。

彼女の目の奥にはもう不安の色は一切見られなかったのだから。


「さぁ急ぎましょう!私も純には聞きたいこと山程ありますから」


土器子はそういうと、小走りに大学へ向かった。


「ヒャハハ、かわりすぎだろ」


「拙者達も人のことは言えんでしょうに」


そう言うと龍作は土器子の背を追うように歩幅を広げる。


「なっ、ちょおい!まさかミチル達になにかふきこまれたかッ!」


「さぁて、何のことやら」


フハハーと笑いながら走る龍作を、火の如く顔を赤らめた虎丸は「おいィー!」と追いかける。


次の舞台となる葛飾大学4号館7階704号室までそう遠くはなかった。


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