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初めての異世界人




心地よい風が頬を撫でる。

家の中でゲームをやってばかりの俺にも優しい朗らかな光。

俺はそっと目を開けた。



「…おぉ〜…」



思わず感嘆の声が漏れる。

俺の眼前には地平線まで広がる緑豊かな草原。

遠目には森のようなものも見える。


ここが異世界か〜。

なんて気楽に思いながら、ふと疑問が生まれる。



「……これからどこ行けばいいんだ」



途方に暮れながらも今の状況を確認する。

靴は俺が使っていたスニーカー、服はゲームをしていた時に来ていた赤いラインの入ったジャージ。ポケットに溶けかけた飴玉ひとつ。


こっからどうすればいいってんだい…。

心なしか腹も減って来た。広がる草原には鳥やら獣やらいるが殺す手段もないし食べる手段もない。




「森にきのみでもあるかな…」



寂しさからか独り言がポツリ。

俺はトボトボと森の方へ歩みを進めた。






森へ着くと、そこは昼間にも関わらず薄暗い。

そこら辺の木にはぶどうのようなきのみがなっていた。恐る恐る口に入れる。


…不味くは、ない。けど凄く水が欲しくなるくらい酸味が強い。と、そんなところで水の跳ねる音が聞こえる。


滝でもあるのかな?

なんて思いながらその方向へ進む。



ビシャビシャと水の跳ねる音が大きくなる。

木々の隙間を抜けると開けた場所に出る。そこには水浴び出来そうなほどの滝と、それが貯まる泉があった。



それと俺に背中を向けて水浴びをしている少女。


ほわぁああああーーー!!!!!


声にならない叫びが出る。

白い背中。細く長い手足。丸みを帯びた張りのある尻。艶やかな金色の髪。男を昂らせるうなじ。先の尖った長い耳。


って、え?


動揺のあまり足元の枯れ木を踏んづけてしまう。

パキッと高い音が鳴った。


その音に少女が振り向く。

翡翠色の瞳に、紅い唇。膨らんだ胸。

間違いなく。



「超かわいい…」



思わず呟いてしまった。俺が少女に見惚れていると少女は近くにあった衣服を掴み、顔を真っ赤にしながら俺を睨みつけて森の奥に走り去って行った。

なんとなく目線が下に向いていたような…?


視線を下にやる。……俺の愚息がこれでもかってくらいいきり勃っていた。そら逃げるわ!


てか初めて見つけた異世界人じゃねーか!!

追いかけねーと!



俺はいきり勃った愚息に四苦八苦しながらも少女を追いかけた。



俺が追いかけた先には柵に囲われた村のようなものがあった。入り口は丸太の柵で閉ざされている。



「こーんーにーちわー!!」



取り敢えず呼びかける。

…反応は無し。


と思ったところで柵の上から一斉に弓が顔を出した。その全てが俺の方を向いている。


俺なんかした?…いきり勃った愚息を見せたか。



「何をしに来た人間風情が!!」



柵の上から声が掛かる。ここは穏便に済ませたい。



「道に迷ってしまって…食糧や水を分けて貰えませんか?」



何やら上で話す声が聞こえる。途中から嗄れた声が聞こえ、若い声は長老と呼んでいる。



「良いではないか。開けてやれぃ」



その声が聞こえると、ゆっくりと丸太の柵の門が開かれる。まず目に入ったのは腰の曲がった目尻の下がった髭を沢山蓄えた禿頭の老人。それとあの水浴びをしていた少女。

少女は顔を真っ赤にして俯く。



「さっ、早く中に入って下され」



嗄れた声が掛かる。俺が柵の中に入るとどすんと地面が揺れたと思うほどの衝撃で門が閉まる。


この門は縄で釣り上げて開け閉めしてるみたいだ。神様に聞いた通り科学技術は発展していないみたいだな。


そう言えば神様から貰った能力ってのを使ってないな。でもこの世界の異能ってのがどの程度出来るものか分からないから易々と使う訳にはいかないし。



入って来た俺を比較的若い人達が睨み付ける。

男も女もみんな美形だ。羨ましい。

あはは…と、俺は苦笑いで返す。



「旅のお方ですかの?」


「はい、まあそんなところです」


「ほうほう。それならば儂の家に寄って行きたまえ。食事と飲み物をだそう」



よぼよぼと前を歩いてくれる。その少し後ろをあの少女が付いていく。老人の横には他と比べて屈強な男性が護衛のように付き添っている。


どうやら村の奥に向けて歩いてるみたいだ。家は全て木造の建屋。


ただどの人も耳が長く尖っている。

やっぱりこれはあれか。人間とは違う、エルフって種族か。


そんなことを考えているとどうやら家に着いたようだ。その家は木造ながら他と比べて大きい。

まさに長老の家って感じ。


屈強な男性が扉を開けると老人、少女と続いて俺が入る。椅子に座るように促され、それに倣う。

正面には老人が座り、俺の後ろには屈強な男性が立っている。




「さて…少しばかり話をしよう」



老人の皺の入った目が、薄く開いた。



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