あとがき
ここまで読んでくださってありがとうございました、私がこの作品を書くにあたっては小説家になろうの存在を知ってから、そこに纏わる色々な作品や風潮を事を考えながら、皆様に黒井が思う『なろう小説に対しての疑問や違和感』をお伝えしたいと思って書き始めたのがキッカケでした。
まず違和感を覚えている物はこの物語のキーワードの一つ、チートです。
考えてみれば恐ろしい数の異世界チートがなろうでは量産されていますよね、で、大体そのチート主人公さんは同じような世界に到着するんですよね?
だとしたら到着した先の人々って、そんなのがしょっちゅう来る世界に住んでいるんですよ?
それなら普通の人はこの世界以上に努力を無駄だと思うでしょうし、逆に努力している人が噛ませになって蔑ろされるような、酷く夢が無くて悲しいディストピア小説だよね?って考えてしまったんです。
そして世界はチートを肯定するために徐々に歪んでいく、そのせいで元来幸せになるはずだった人が不幸になる、という事が一杯起こっているのではないか?
チートが来るから魔王が出てきたり、世界の危機が起こったり、奴隷制度がいつまでもあるのではないか?等の疑問が浮かんだのです。
次はハーレムについてです。
まぁ、これは男の子なら一度は夢見る理想ですし理解は出来ます、でもそれがそんなに簡単じゃないんですよ、同時に女性に言い寄られて関係を壊さないようにするのってはっきり言って苦痛です。
そんな事無いと思ってる人に言っておきます、複数の女性の間をバランスとりながら渡り歩くのって想像以上に大変ですよ?だって女性も人間ですから嫉妬もしますし、恨みもします、それに男性よりも女性は感情豊かなので思った事をそのまま口にします。
じゃあ自分が上であれば楽しいと思いきや、こちらも群れのリーダーとしての資質を常に問われます。
女性ってこの辺りが凄いシビアで、男が考えている以上に細かい部分まで考えていますよ、逆に大きい部分は考えるのが苦手な方が多い印象ですが、それはお互いの役割の違いだと思います。
なので、一人でも意見が物凄く食い違います、小さな事なら今日の晩御飯は何がいいとか?週末はどうするの?とかです。
そしてお互い歳を取りますから男である以上、やはり若い子が目が向いてしまう日もあるでしょう、今は若いヒロインも十年後にはどうなっているでしょうか?
その時、なろうのテンプレ主人公たちはどうするんだろうと?ノリや勢いで奴隷の女の子を買って大丈夫?そこら辺で拾ったような子をヒロインにしていいの?って物凄く疑問を感じるんです。
なので周護さんは常に迷いますし、自分にはその資格が無いと思って日本では独身でした。
異世界に行ってからは皆の意見を聞いて自分なりに考え、一度受け入れるなら一生添い遂げるべきだと思って、彼は常に自分を律しています、ですから据え膳が出てきても簡単には食べられないし、その据え膳自体を怖がりますので、ズンケルさんの発言はかなり嫌な思いをしています。
クシーナさんに関しては、彼女の抱えている痛みを一部は的確に理解が出来るので同情の部分もあります、その上で彼女の性格を好ましいと考えその思いの儚さに心を動かされ前に踏み出したのです。
そして呪との戦いで男女間のバランスが大きく崩れている現状では、女性が労働力の比率の大きな部分を占めていますから、男性の金銭に依存せずに自活は出来ます。
ですが、老後を考えて投資的な意味合いで子供が必要なので、やむを得ず女性は複数婚を許容しています、この世界には年金などはありません、なるべく家族は一緒に住んで未来の為に子供を作ります、そうじゃないと何か躓いた時に生活が破綻するでしょう。
次に疑問を感じて悩んだ事は、主人公の年齢です。
自分が高校生くらいの頃を思い浮かべれば想像がつくと思いますが、普通の高校生、なろうでよく出てくるような大人しい子が異世界に行ったとしても、恐らくまともに生きていくことすら難しいでしょう。
価値観の違いや大人と全くの未経験で交渉のテーブルに立つなんて、はっきりいって良いカモとしか思われないでしょうし、実際そうなってしまうと思います。
なろうでよく言われる中世ヨーロッパの世界観(これも範囲が広すぎてイマイチ何処の地域?どの年代範囲?って逆にイメージが全く沸かなくて困るワードですが)だと情報は秘匿されているだけで、実際貴族や商人はかなり高度な情報戦や心理戦の中で常に戦っています。
宗教関係もすごい複雑で修道会の宗派や主張なんかも混ざってもう滅茶苦茶です、地域によっては巨大帝国の襲撃も何度あって、本当に暗黒時代です。
情報が隔離されているから確かに愚鈍な国民は居るかもしれませんが、上層の方はかなり生き馬の目を抜くような世界です、頭の悪い国民を養う為、または口を減らすために戦争を計画的に起こさないと国が滅びます。
王侯貴族は常にシビアで冷たい計算を常に求められます。
ミスは国の滅亡と一族の抹殺に繋がります、そんな計算をしている王侯貴族を相手にしながら時流を読む商人、貴方が今の知識でこの人達と交渉テーブルの席に座りたいと思うのなら、私は素直に惜しみない賞賛を送るでしょう。
こんな恐ろしい相手に駆け引きできるのは政治家や国家官僚、一部の会社役員の方やそれを相手に一方的でない契約を結べる敏腕営業マンくらいでしょうね。
魔物という外的脅威度が高い世界なら、支配階級は常に備えを怠らず海千山千のテクニックで迫ってくるでしょう、現代とは価値観が違いますから使える手はなんでも使います、マニフェストやコンプライアンスなんてモノもありませんし、馬鹿な王様や詰めの甘い商人はそうそういないでしょう。
だからこそのチートだろ!って言う方も居るとは思います、そんな物を自分が子供の頃に与えられたと考えて下さい。
そんなの絶対に感性が歪むでしょ?なんでも出来るんですよ?今まで押さえつけてきたって思ってた大人を簡単に不幸にしたり、殺したり出来るんですよ?きっとみんな簡単にタガが外れてしまうと思います。
結果やり過ぎたり、確実に持て余すチートの力に振り回されて大勢の人を巻き込んで盛大な自爆をする、そんな未来がはっきりと目に見えると私は思います。
現代でも子供にインターネットという大きな発信力を与えてしまった為に、人気者になりたくて不適切な馬鹿な行動をネットに上げ、色んな社会問題に発展した話や、動画サイトで人気者になろうとして危険な事をして警察沙汰になった、そういう話をよく耳にしませんか?
大きな力というのは、一歩間違えると万能感に脳が侵されて取り返すことが出来ない被害がでます、そんなのが大勢来る世界です、はっきり行ってこんな恐ろしい世界に普通の子供を送り込むのは無理でした。
なので周護さんは中年位の年齢で、色々と失敗や苦労をしているそれなり知識がある人にして、あくまでチートが『効かない』だけの能力にしました。
もしもチートが元が日本人と気が付き、それが正当性の欠片もない欲望や妄想の塊だと知って自分がそれを何とか出来るかもしれないと思ったら、日本人の大人であれば少なくとも何とかしたいとは考えると思います。
確かに行動ができるかはその人次第だとは思いますが、それでも大震災の事を思い出すと、皆さん何かしらの動きして何かできる事を考えると思います。
その思いや行動に責任というモノを持てる人、そういう人を主人公に据えたいと黒井は考えました。
そうしていく内にどんどん世界が纏っていき、彼らの救いを求める声や悲しみに打ちひしがれている声が聞こえてきます、私は彼らの声を代弁するしか無いと思うようになりました。
そうは言っても私の技術不足は深刻でした、今までちゃんとしたライトノベルというモノを書いたことが無いですし、そういうものを手にとった経験も殆どありません。
ですので皆様にきちんと伝えられるか不安でした、きっと大勢の方に叩かれるんだろう、なじられるかもしれない、むしろ相手にされる事すら無いのかもしれない、そう考えました。
それでも、そうだとしても、やはりなろうに一石を投じてみたい。
そう覚悟を決めてこの作品を書き出しました、やはり能力不足で何度も修正や添削をしていますし、毎日悩んでいっそ全てを投げ出してしまおうと何度も思いました。
それでも周護さんの悩みや苦悩を始め、他のキャラクターの様々な声を聞き、何とか私の拙い技量を振り絞って書いてきました。
自らが伝えたい部分、クシーナの過去や思いの全て、ゲンゾンの兄として夫として父としての苦悩、レーミクの寂しい過去や巫女としての決意、ズンケルの後悔とイエーナの考え、ロリーエの成長と心中に移り変わり、チートというモノが如何に恐ろしく人を狂わせるのか等、伝えたいものが多くありました、発信したい事が皆様にきちんと届いているか、今の私は心配しています。
何十万のなろうの利用者の皆さん全てに読んで貰うのは無理でしょう、それには私自身の能力も時間も足りません。
それにこの話を書くにあたって、一切の広告行為をしないと決めていました、そうしないと本当の意味で皆様に考えて貰う事ができないと思います、そうであるから意味があると思います。
説教って自分から聞かせに行くようになったら、それはもう迷惑ですし、下手をすれば騒音公害しょう?
きっと、この話をお説教って思う人も居るって思うんです、実際友人に話を持っていった時に「黒井の話はやっぱり説教くさいし、面倒くさい」って言われましたしね。
なのでリアルでもネットでも広告はしない事にしています。
ですので万一これを広められる時は「うるせーぞ、おっさん黙っとけ」ってネットで叩かれる日だろうと私は覚悟を決めています。
それでも、この話を読んだ時に何か心に残るような事があればいいと私は思っています。
私はここまで読んでくださった方とのお話を、否定でも肯定でも楽しみにしています、貴方の心のうちに残ったモノを私に教えてください。
最後に、この物語を読んで下さったすべての人に、あとがきを読んでくださった人に感謝を込めて閉めようと思うと思います、本当にありがとうございました。
2017年 6月28日 黒井 陽斗




