表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界はチートで大変なことになりました。  作者: 黒井 陽斗
違う世界の新たな生き方
39/113

第十七話 二人の女

 私はロリーエ、メルデ村の猟師ゲンゾンの娘、今は私を一番に考えてくれる人クシーナといっしょに居るわ。


 でも、とても良い話って言えない、だって私の我儘な気持ちをクシーナにぶつけるとっても嫌な時間だもの。


 私が好きになってクシーナを好きなった人、名前はシュウゴ……、彼をクシーナから取ってしまいたいって言いに来たんだもの……。


 昨日、シュウゴがクシーナを好きだって知ってしまった時、私は自分がこんなに悪い事を考えるなんて思ってなかった。


 だって大好きなクシーナから、シュウゴを取ってしまいたいって思ったわ。


 でもそれはきっと悪いコトだから、この気持はずっと我慢しようって思った。


 だけどシュウゴの顔を見たら、一晩掛けて決めた、私のちっぽけな覚悟なんか直ぐにどっかに行ってしまって、この気持ちを抑えるなんて出来なかったわ。


 だから、全てを、こんな我儘な私の心にある想いをクシーナに話して、子供みたいに泣いて叫んで駄々をこねた……。


 それなのにクシーナは自分が悪いって謝ってくれて、こんな私を愛してるって言ってくれくれた。


 我儘な私に二人一緒が良いって、シュウゴと一緒に三人で生きていこうって言ってくれた、そんな事を言えるクシーナを私は本当に凄い人だと思う。


 もし私とクシーナが逆だったら、きっと、そんな事を言えなくて、絶対シュウゴを独り占めにしたいって思っちゃうから。


 今もこうして笑って私の手を握りしめてくれて愛してくれるクシーナ、私も心から愛しているって言えるわ。


 私が尊敬するクシーナは、すっごく賢くて、とっても綺麗で、ちょっとお茶目で、でもそこが可愛いくて、私の自慢の素敵な人、きっとシュウゴもそんな所に惹かれたんだと思うわ。


「それじゃ、二人であの悪い殿方を滅茶苦茶にして、逃げられないようにしちゃいましょ?」


 そう言って笑ってくれた笑顔は、とっても可愛いくて綺麗な笑顔で、これが恋をする女の顔なんだって教えてくれた、私もこんな素敵な顔をしたいって、素直にそう思えた。


「うん、私頑張るわ!だって諦めれる気しないもの!」 


 今はこんな素敵なクシーナが、一緒に戦って、同時に競い合う相手だって思うと、本当は少しだけ怖いと思っちゃう……。


「いいわね!その意気よ、あの人は押したら逃げちゃう人だから、絡めとるしか無いわ。そうやって逃げれないって自覚しないと、いつまでもとぼける人だから」

 

 けど、それ以上に凄い頼りになるって思えるから、二人で頑張って素敵な淑女になって朴念仁なシュウゴを振り向かせようって思えるわ。


「そうよね!私だって子供じゃないって言っているのに、いつまでも子供扱いされるのよ!?今日だって……」


 そこまで言った時、何処か遠くの方でとっても大きな音がした、なんだろう?良く分からないけど、後から来た振動で何かすごく嫌な気持ちになる。


「ロリーエ!こっちにいらっしゃい!何か嫌な予感がするわ、これを首から下げて!」


 そう言って渡されたのは、お父さんが狩りの時に使う臭いと虫を避ける呪法器によく似ている。


「これはなに?なんだかお父さんが持っているのと似てるけど?」


 でも少し違うような気がするので、クシーナに聞いてみる。


「これは魔物避けと女の匂いを誤魔化す呪法を施してあるの、身に着けていれば、もし魔物が来ても逃げられるわ」


 なんで魔物?もしかして村に魔物がくるっていうの?なんだか周りの家の人達も騒がしくなって、良く解らない状況に私の身体は勝手に震えてしまう。


「大丈夫よ、状況が分かるまではここに居てね、ここは呪い師の家なのよ?私の呪法が貴方を守ってくれるわ、だから安心してね」


 クシーナはそんな私を優しく抱きしめてくれる、彼女のくれる温もりはいっつも私を励ましたり、勇気をくれて頑張ろうって思う気持ちを分けてくれる。


「うん!分かった、じゃあここで暫く待って、何かあったら移動するのね?」


「そうよ、私は少し調べてみるわ、神社に行けば遠くが見えるから何があったのか分かると思うし、状況を聞いてくるわ」


 そう言ってクシーナは忙しく準備をする、奥の部屋から外套を持ってきたと思うと、そのまま私にかぶせてきた。


「どうしたの?クシーナ!これは何?」


 びっくりしている私に、彼女はその外套の意味を教えてくれた。


「フフッ、その外套はね、私のとっておきよ?」


 嬉しそうに自慢気に彼女が話す、こういうクシーナも可愛いから私は好きだって思う、きっとシュウゴもおんなじだって言ってくれるって自信があるわ。


「色んな護りの呪法で編んであるのよ、すっごく複雑な呪法編みだから出来上がる前に頭の方がこんがらがるかと思ったわ」


 嬉しそうに笑うクシーナが、私の髪を優しく撫でる。


「貴方が大人なって、旅をする時のために作っておいたのよ?だから今の貴方には少し大きいわ、だからすこーしだけ早いかしら」


 クシーナが私を抱きしめて、私の耳元でそっと続きを話してくれる。 


「でもそれは、貴方が愛する殿方を見つけて一人前の女になったお祝いよ、ずっと大事にしてね?」


 私を大人の女としてクシーナが対等に認めてくれたと嬉しくなる、だってずっと憧れていたクシーナだから、嬉しくないって言ったらそれは嘘だわ!


「ありがとうクシーナ……、すっごく嬉しい……、これ、私、一生大事にするよ……」


「うん!そこまで言ってもらえるなら、私も頭を痛めて作った甲斐があるわ、ありがとうロリーエ……」


 そう言って頬に口付けをしてくれる、クシーナの柔らかい唇の感触は私に何時も安心をくれるの。


「じゃあ行ってくるわね、なにか来てもちゃんと人の声って分かるまで開けちゃダメよ?」


「分かったわ、でもどうして?」 

 

 私を抱きしめているクシーナに、気になって聞いてみる。


「魔物は叫び声は上げるけど喋らないのよ、だからね、もしも魔物が来て扉を叩く音がしても、何処かへ行くまで耳を塞いで、音や声を立てないで我慢するのよ?」


「分かったわ、じゃあ誰かの声がするまで絶対に開けないようにするね!」


 彼女がゆっくり私から離れていく、少し寂しいけど笑顔で我慢する。


「ええ、絶対にそうしてね?お願いだからね」


 そう行って彼女が飛び出していった、部屋の中には私しか居ない、窓から見える森はいつもと違って黒い煙を上げている、そんな状況に私の心は暗くなる。


 一人で居ると、ふと思ってしまったの、私が我儘な事を言ったから、もしかしてこんな悪い事が起こったのかも知れないって……。


 だってお母さんが亡くなったのも、お父さんが居ないのを寂しがって、私がずっと外でお父さんを待ってて病気になって、それでクシーナと二人で森に行ったせいだもの……。


 お父さんもクシーナもそう言わないけど、私はずっとそうだと思っている。

 

 だからきっとこれも私が我儘を言ったからかもしれないって思う、それなのに我が儘な私は、また身勝手な事を口にしてしまった……。


「怖いよ……、シュウゴ、今会いたいよ……」


 怖くなって、私は初めて好きになった男の人の名前を口にする、あの人に会いたい、あの人の声を聞きたい、あの人にきゅって抱きしめて欲しい、あの人に優しく頭を撫でて欲しい……。


 そうやって何度も何度も、シュウゴの事を考えて怖くてしょうが無い心を誤魔化して、誰もいない部屋の片隅で、私は一人で嵐が来た時の子供みたいに震えてた。


「シュウゴ達、どうしてるかな……?きっと村の外で魔物と戦ってるんだろうな……」


 お父さんやシュウゴやレーミクさんが戦う姿を考えて、ここで小さな子供みたいに怯える事しか出来ない自分が、とっても情けないって思った……。

 

 だから、せめて今できそうなこと考えよう、避難する時必要なものとかを集めたりするのなら、今の私にだって出来るわ。


 そう考えて、クシーナと避難する時のために簡単に摘める物を用意する。


 でも火が使えないから簡単なものしか作れないわ、それと水筒に水を汲んでおかないとダメかも、きっと神社にみんなが来るから、色々足らなくなると思うわ。


 村の男の人達が騒がしく何かを準備する声が聞こえてくる、きっと戦いの準備をしているのだろうと思う。


「クシーナが帰って来るまでここに居ないといけないけど、みんなは神社にむかっているのかな……?」


 みんなが神社に逃げる様な声が聞こえる、もしかしたら魔物がもう近所まで来ているのかもしれない。


 私も逃げた方がいいのかな?でもクシーナはまだ帰ってきてないし、どうしよう……?


「お願い……、早く戻ってきてクシーナ……」


 考えが決まらない、とにかく早くクシーナに帰ってきて欲しいって思う。


「ロリーエ!帰ったわ!扉を開けて!」


 凄い!帰ってきて欲しいって思ったら、すぐクシーナが帰ってきてくれた!私は急いで扉のかんぬきを外して彼女の顔を見る。


「おかえりなさい!クシーナ!」


 そしたら私は我慢できずクシーナに抱きついてしまう、クシーナもそんな私を抱きしめてくれる。


「待たせて御免なさいね」


 なんにも悪くないクシーナが謝って、私を強く抱き締めてくれる。


「大丈夫、平気よ!」


 私はクシーナに少しだけ強がって返事をする、だって私を一人前だって言ってくれたから。


「宜しい!じゃあ逃げるわよ、でもあんまり食べ物が無いらしいから……、少しだけでも摘める物と飲む物を用意しましょ」


「うん!分かったわ、荷物を纏めるね!念の為に食べる物も少し用意しておいたの!」


 私はさっき作った荷物をクシーナに見せる、クシーナ嬉しそう笑って私を褒めてくれる。


「流石ロリーエね、あるがとう!じゃあ、それ持っていきましょ?さっき狼煙をあげたから、暫くしたら街から騎士団がくるはずよ!」


「分かったわ、じゃあこのままいくの?」


「少しだけ待ってね、私も念の為に装備を用意するわっ!これでも一応、自分の身を守れるくらいは剣を使えるのよ?」


 クシーナは奥の部屋から細い剣を取り出して腰に下げる、なんだか冒険者みたいで格好いい。


「鎧はダメね、昔とは色んな所が出たりして……、体型、変わっちゃったもの……」


 クシーナは少し元気をなくしてるけど、クシーナは昔から綺麗だと私は思う、特に大きくて形の良い胸と、形が良くて柔らかそうなお尻。


 私はまだそんな風に女らしい身体じゃないから、とっても羨ましいなって思う。


「それじゃ行きましょ?ロリーエ忘れ物はない?毛布は持った?あっちは寒いかもしれないし、長くなると思うから……、持っていたほうがいいわ」


「大丈夫よ、ちゃんと持ってるわ、いつでも行けるわ」


 二人で確認してから二人で手を繋ぐ、やっぱり手を繋ぐとすっごく安心する、私はクシーナの暖かい手が大好きだって思う。


「さあ、早く逃げるわよ!みんな神社に集まってるわ!」


 二人で走らず、でも少し早足で神社に行く道を進む、でも少しして急にクシーナが苦しそうにして立ち止まってしまった。


「くっうぅ……、ダメね……、呪が……、動きっ、だしたわ……」


 小さく何かを呟いて蹲るクシーナの姿を見て、私は頭が真っ白になって、どうしていいか解らなくって涙が滲んでくる。


 クシーナは凄く苦しそうにしているのにそれでも笑ってる、これはきっと私のために笑ってるんだって分かった。

 

「ロリーエ、いい……?ここから、一人で、行くのよ?私は……。ちょっと、動けないわ……、落ち着いたら、ちゃんと行くから……、先に、行きなさい……」


「でも!クシーナが!」


 そう言って手を伸ばそうとすると、クシーナが大きな声で私を止める。


「触っちゃダメ!」


 滅多に聞かない彼女の大声に、私の指が痺れて止まる。


「ロリーエ、お願い、だからっ、私の、言うことを聞いて……、もう、あんまり、時間がないの、シュウゴのこと、お願い、ね?貴方……しか、頼めない、の……。愛しているわ……私の、可愛いお姫様……」


 そう言って青い顔で私に必死に訴えている、なのに私の脚は、まるで木の棒みたいに動こうとしてくれなくて泣いてしまいそうになる。


「ロリーエ!早くお行きなさい!!一端(いっぱし)の女なのでしょ!だったら!後ろを向かずに走るの!!早く!お願いだからッ……!!」


 そんな情けない私を、クシーナが強い言葉で動かしてくれた、動かなかった脚がやっと神社に向かって走しってくれた。


「そうよ……、精一杯、愛する、殿方の横……、生きなさい……」


 走り出して背中に、呵すれた声でクシーナが言う言葉がかすかに聞こえたような気がしたわ。


「私の可愛いロリーエ……、わ……、たし……、の分まで……、沢山、シュウゴ……、愛して……あげ、てね……?」


 そんな、クシーナの話す小さな声をなんとか聞こうって、私は脚が止まりそうになった。


 けど我慢しなきゃダメよ、もしここで止まったら、私はきっと動けないと思うから。


 だって!クシーナは走れって、後ろを向いちゃダメって言ったから、だから代わりに私はクシーナに精一杯、クシーナに思いを込めて叫んだわ。


「クシーナッ!待っててっ!私っ!ズンケル様を呼んでくるわッ!絶対に!直ぐッ戻るからっ!!」


 私は走る、振り返らずに真っ直ぐ走る、涙が出ても走る、だってクシーナは行きなさいって!


 後で来るって言ったもの!クシーナは私とした約束は、絶対に、守ってくれるって……、信じてるから……。

 

「待って、待っててクシーナ!お願いだから待ってて!私!わたし!ぜったいに……」

 

 クシーナの居る後ろの方で凄く大きな音が聞こえた、私は思わず立ち止まって後ろを向いてクシーナーの所へ戻りたいって思う。


 でも、約束だから!女同士の約束だから、そう思って振り向きたい気持ちを唇を噛んで我慢した。


「ロリーエッ!今は振り返ってはダメ!クシーナとの約束でしょ!だから走って神社へ行くの!」


 そうやって自分に言い聞かせて走る、もしも振り向いたら、絶対に私はクシーナの所へ戻ってしまう、だから神社までは止まっちゃいけないんだ。


 私の頬が涙で濡れて、乾いているトコが無くなっていく、やっと神社の麓の橋が見えてくる、一度も止まらずに走り切って、転びそうになりながら階段を駆け上がる。


 こんなにクシーナが大変なのに、私の脚はちっとも急いでくれなくて、とっても嫌だ、だから気持ちだけが焦って全然進まなくて、悲しくてそれでも走って。


 そうしてやっと、私は神社に飛び込んで倒れて泥だらけになっても構わずに、私は辺りを見回してズンケル様を探す。


 きっとズンケル様なら、ズンケル様なら、きっとクシーナを何とかしてくれる、大怪我をしたシュウゴだって治してくれたんだから、きっと大丈夫だわ!


 そう、きっと、大丈夫だって信じてる、待っててクシーナ!私、直ぐ戻るから!

 

 だって、クシーナと二人で一緒にシュウゴの側で、幸せになるって約束したわ、だからクシーナが居ないとダメなのよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ