第十四話 昔の話
ゲンゾンと二人で暗い夜道を歩く。
この世界は月がないので夜は酷く暗く、手に持ったランプの明かりだけが頼りだ、俺達を頭上から見下ろすように瞬く星々の光は自らの足元を知るには頼りない。
そんな暗闇を切り裂くような二人の旅の終着地は、村の門からも遠い村外れの墓地だった。
「おうシュウゴ着いたぜ、ここだ、ここに俺の嫁さんロミーナが眠ってる。こんな時間に叩き起こしたら、アイツに俺はどやされるだろうけどな」
いつもの人懐っこい笑顔を浮かべながら語るゲンゾン、だが、その言葉と込められた意味は酷く重くて、とても悲しい物だと俺にも分かる。
「いいのか?俺がここに来て」
「構わねーよ、つーか俺の嫁さんにも自分のダチを見せてやりてーしな、それにクシーナの話するんなら、コイツが居なきゃ話にならん」
墓の前で腰を下ろすゲンゾンに習って俺も彼の隣に腰を下ろしたが、夜の冷気を纏った大地に座っても外套は冷気を強く拒んで、お陰で冷える事も無かった。
「さて、お前の聞きたい事は予想はしてる、アイツの昔の話だろ?アイツがどうしてあんな体になっちまったのか、そこが知りたいんじゃないか?」
「それもある、けどそれ以上に知りたいのは、彼女がどうしてあんなに一人で居ることに固執しているかだね、封印しているなら人に近づいても良いものだろうと思ってね」
お互いの考えを交換する為にまずは疑問の部分を話してみる、ここをまず知りたいと思っている。
「なるほどな、ちょいと長い話になるぞ?アイツが魔物に襲われたのは聞いてるみてぇだな?そん時もう一人襲われてんだよ、コイツだ。クシーナは馬鹿だから、俺以上にコイツの死に囚われてやがるのさ……」
優しく墓石を撫でながらゲンゾンが語る、その顔には自虐的な笑顔が浮かんでいた。
「クシーナは十四で王立学園に行ってな、十八で戻ってきた、そん頃はその年の娘らしい夢を持ったちょっと頭のいいだけの女だったよ」
自分は呪い師で敬遠されてるから、そう言っていた今のクシーナからはあまり想像ができない。
「呪い師でも恋も結婚も出来るって騒いでてな、惚れっぽいから惚れて振られてを繰り返してたさ、それを嫁さんが慰めて俺が笑って酒を飲ました、そんな楽しい日々だったよ」
あまり必要以上に人に近づかないと言っていた、ロリーエもそれを心配して俺と話している事を喜んでいた程だ。
二人を照らしているランプが夜風に吹かれて僅かに揺れて、漏れだす光も一緒に微かに揺れた。
「村に戻って二年が経った頃、魔物の群れが近所の村で見つかってな……、俺はギルドから討伐に駆り出されて冒険者と一緒に行く事になった」
ゲンゾンは過去を思い出して居るのだろう、どこか遠い目をして話を続ける。
「まぁ冒険者の頃にそんな仕事もやったから仕方ねえし、後輩の頼みだったしな、それに軍を出すほどじゃあない、本当に豚頭のちょっとした群れだったよ」
俺は黙って続きに耳を傾ける、二人の間に冷たい山颪が通り抜けていく。
「俺はクシーナに嫁さんとロリーエの面倒を頼んで出たさ、たかが一週間程度だ、何もあるはずがないって思ってたよ、それなのによぉ……」
ゲンゾンは頭を垂れて冷えた大地に両手を付いた、彼の肩は何かに耐えるように少し震えている。
「俺が出てから三日目にロリーエが熱を出しちまった、かなり珍しい病気だったらしくて、薬師の婆様の薬も効かなかったらしい……」
ゲンゾンの心にある苦悩が、背中を通じて俺にも伝わる。
「そんでロミーナとクシーナが二人で森に行って、その病にに効くって言われてる薬草を無理して取りに行ったのさ……」
ゲンゾンの両手が拳を握りしめている、震える肩は今にも崩れそうになっていた。
「二人は……、豚頭の魔物に襲われたっ!俺達が、俺達が見逃した奴らだっ!捕まった二人はっ!魔物に犯された……」
俺はその肩に、そっと手をかける事しか出来ない。
「ロミーナは、隙を見てクシーナを逃したらしい……、ロリーエのことを託してな……」
ゲンゾンは罪の意識を感じているのであろう、その気持は痛いほどよく分かる。
自分が何も出来なかったその無念さは俺にも痛いほど分かる、俺もあの日誰も助けれずただ炎を見つめるしか出来なかった。
「それで……、なんとか村に戻ったクシーナは……、婆様に薬を頼んで、ロリーエに飲ませてくれたんだ……」
ゲンゾンは嗚咽を堪える様、絞りだすように話を続ける。
「おかげでロリーエは助かった、なのに!アイツはっ、俺に、謝るんだ……、義姉さんをっ!死なせて、ごめんなさいってなぁ……」
それはまるで自らの身を削って話すような痛々しさを感じる。
「アイツは何も!何も悪くねぇんだ!俺が!俺が後輩どもにカッコつけて……、あいつらを置いて出て行ったのが悪いんだ!
ゲンゾンの後悔と自責の涙が夜の闇に零れて墜ちる。
「なのに、なのによぅ……、アイツさ、自分が、あんなっ、あんな体になっちまったのに、どうして謝るんだよ……、ダメな兄貴を恨んでくれよ……」
冬の冷たく乾いた土くれの表面に小さな痕を残す、その姿を見ていられず俺は上を向く。
「自分の妹を!自分の嫁を!ガキをほおって!他所に行ってた俺を責めろよ……」
彼のその姿に星々が涙を流したのか、一筋の流れ星が空から零れ落ちた。
「アイツは、自分の腹に封印をした……、もう自分のガキも抱けない体になった……、そんな体になってアイツは言ったんだ……」
彼の拳が地面を叩く鈍い音が辺りに響く、重い彼の後悔の音だ。
「義姉さんに頼まれたからロリーエの面倒を見る、それが自分ができる贖罪だってな……、そっからはアイツはずっとっ!ロリーエを優先してきたよ……、他の誰より……、自分よりも優先してきた……」
自らを責めるゲンゾンの姿を、俺は黙って見ていられず思わず口を開く。
「そんなの!誰も悪くない決まってるだろぉおお!お前ら、何でこんなに悲しいんだ!何でそんなに自分を責めるんだ!だれも!誰も悪くない!お前も!ロミーナさんも!クシーナも!ロリーエも!悪いのは呪で魔物だろ……」
こんなのおかしすぎる、誰も悪くないのに皆、自分を責めて……。
「誰も悪くないよ……、誰も責められていいはずがない……」
その痛みで相手が傷ついて、誰かを思う心で誰かが傷つくなんて、そんな悲しい事って、こんな救われない事っておかしいよ……。
俺の頬も、ゲンゾンと同じように涙で濡れていく。
「そうだよ!俺だって!俺だって、そう思うさ……、だけど俺達は……、俺達はこんな悲しくて苦しいのに、誰も止める事が出来なかった……」
二人を通り抜ける冷たい風は、その涙を無機質に削り取っていく。
「そうしないと、そうじゃないと!クシーナがっ!壊れちまう……」
「どうしてだよ!そんなに悲しいなら止めればいいじゃないか!」
「アイツは!人一倍誰かを愛する事が出来る女だ!その全てを奪われたのに!アイツは生きなきゃいけないんだ!」
俺達の悲痛な叫びが、冷え切った墓地に虚しく響く。
「だからって、だからってお前が、お前がそんなに苦しんで!ロリーエも無理に笑って!クシーナが一人で泣かないと駄目だなんて、そんなのは絶っ対、間違っているっ!」
「解ってるよ!そんな事!だけどよぉ……」
「そんなの絶対、間違っているよ……、ゲンゾン……」
どうして?なぜこんなに悲しくて苦しいのに、人は互いを思いやるのだろう。
「じゃ……、俺はどうしたら良かった……?じゃあ!俺はどうしたらよったんだよぉぉおお!しゅうぅごぉぉ、おしえてくれよぉおお……」
ゲンゾンが慟哭をする。
俺達は遣る瀬無い思いを共有して、溢れる涙が止まらなくなった、皆の人は互いを思いやる心が悲しい程擦れ違ったのは、どうしてなんだろう?
どうすれば悲しい擦れ違いを無くして、みんなが笑って幸せに生きれるのだろうと心の底から考えた。
「……なあ?アイツを幸せにしてやってくれねぇか?俺はお前ならそうしてくれるって、それが出来るって思ってる」
ゲンゾンが姿勢を正し、地面に頭を擦り付けて俺に懇願した。
「人任せの情けない話だと思うが、コイツはきっと稀人のお前にしか頼めねぇ……」
この世界の人達は誰かの為に頭を下げる事を厭わない、恥だと思ったりしない、それだけで愛する人の未来をより良くする事が出来るのならと。
「ゲンゾン……、顔を上げてくれ、俺も同じ気持なんだよ……」
俺はゲンゾンに彼女への思いを語リ出す。
「こんなに誰かを幸せにしたいと想った事は、その不幸の連鎖から解き放ってあげたいって、心の底から願ったことは初めてなんだ」
あの時、泣いている彼女を抱きしめて、この胸が感じた全てを言葉にしよう。
「俺は、俺は彼女が好きだ、だから例え彼女が泣いても怒っても、俺が無理矢理にでも幸せにする。ゲンゾン……、お前に約束するよ」
思いの全てをゲンゾンに伝えようと、彼女を胸に想って願いを語る。
「シュウゴ……!それって、それって本当か?本当に、可哀想なアイツをアイツをお前が貰ってくれるのか……?それなら俺は……、俺にはこんなう嬉しい事はっ、嬉しい事はないっ!」
ゲンゾンは俺の目を見つめ、その言葉に嘘がないと知ると、嗚咽上げて泣き崩れた。
「ロミーナぁ、俺ぁ、こんなに嬉しいのはっ、お前が、居なくなってから初めてだよぉ……」
さっきまでと違うのはゲンゾンの涙に喜びに満ちている事だ。彼は俺の肩を抱きながら喜びを全身で表している。
「やっとぉ、お前に、お前にぃ!俺は、あいつの幸せを!やっと報告できたぁあぁぁぅううあぁあああ!」
ゲンゾンの報告が、ロミーナさんに届くように祈った、そして俺の想いがきっと俺の事を想って、俺の夢を見てくれているクシーナ、心から幸せにしたいと想った人に、届くように願った。
そうして彼の涙が止まるまで、俺達は二人でお互いの肩を抱き合った。
「へへ……、すまねぇな。なんか嬉しくてなぁ……、でもお前がクシーナを貰ってくれるってぇなら、俺達は兄弟だな」
「ああ、そうなるな……、俺達は友達で兄弟だな……」
「よろしく頼む、あの意固地の寂しがりを、幸せにしてくれ……」
「ああ、任されたよ、兄弟。俺はきっと……、クシーナのそういう所も好きなんだと思う」
彼が拳を突き出してきた。
「へっ、言いやがる、クシーナについて誰からノロケが聞けるたぁ、思ってなかったぜ……」
俺はそれに軽く拳を当てる、そうして交わすのは男同士の約束だ。
「なんだか、嬉しくてよぉ、また泣けてきそうだ……、シュウゴ本当にありがとよぉ……」
この約束はとても重い。
「ああ、それなら、お前がこれから聞きたくないって言うほど聞いてもらうぞ?」
この話で、もう一つ俺が気にしていた事。それは彼自身だ。
「だからさ……、ゲンゾンも、お前も自分の幸せをちゃんと考えろよ……?」
「そうだなぁ……、いつまでも兄貴が自分の事で悩んで一人いるって思ってたら、優しいアイツの事だ、幸せになれんよなぁ……」
そう言って墓石に向かい、その輪郭を優しく撫でる。
「それにいつまでもコイツに操を立ててるって言ったらロミーナに殴られちまうよな……」
きっとロミーナさんに語りかけているのだろう。
「コイツ、本っ当におっかねぇからな……、アイツのそういう所ばっかロリーエも似やがったから、ロリーエにもどやされそうだわ……」
彼が笑う、いつもの人懐っこい笑顔で。
「そうか、じゃあ俺もロリーエに怒られないようにしないとね、クシーナを大事にしないと怒られそうだな」
そして決意をしたのだろう、彼の琥珀色の瞳に光が宿る。
「はは、そいつは違ぇねえ」
ゲンゾンの……、漢の強い決意の色が見えた。
「お前にゃ、その前にもう一つデカイ問題が有るぞ、レーミクさんにはどう話す?」
「ああ、分かっているよ……」
「あの子がよ、この事を知ったら、多分、お前……、襲われるんじゃねえか?」
彼女が俺に対して、特別な感情を持っている事を知っている。
「それに関しては、何とかするさ」
「そう言ってお前……」
だけど、それとこれは別の問題だと思う。
「きっとちゃんと話せば彼女も分かってくれるはずさ」
「なぁ、レーミクさんが感情的になった時、説得できた例あるのか……?」
ゲンゾンが真剣に心配する視線を送って来る中、今までの事を一つ一つ思い出して考える。
「どうすんだ……、ヘタするとマジで血をみるかもしれんぞ……?」
あぁ……、ゲンゾンの言う通り、俺は全くレーミクを納得させていた事が無い。
「そこまでか……?そこまであると思うのか……?」
そう聞いて彼の目を見る、そこには軽い雰囲気は無く、ただ俺を心配する感情しか無い。
「そうか……、はぁぁ、仕方ない、いざとなったら刺されるくらいは覚悟しておくよ……」
彼の知っている話でもそういう事があったのかもしれない、一応覚悟はしておこう……。
「それでも仕方ないだろ、クシーナの事を止める気はないしな……」
「刺される覚悟あるなら、もう抱いちまった方が早いと思うぞ?」
そういえば彼も、随分と女性問題で苦労している
「その方が丸く収まるし、誰も傷つかねぇ、こういうのは中途半端に放っとくと燻って、いつか大火傷するぞ?これは俺の経験だ」
男の絶対数が少なすぎる世界だ、一人受け入れるなら二人も三人も一緒と考える女性も居るのだろう。
「まぁ、ここで話してもレーミクの感情もあるものだし、そこを確認するべきだろうね……」
もしかすると、レーミクもそのように考えて居るのだろうか?
「彼女の話も聞かないと進められないと思う、明日レーミクとクシーナを合わせて三人で話し合いをしてみるべきだろうな」
ゲンゾンが、なんだか恐れを抱くように俺を見る。
「お前……、そういう危険地帯に突っ込んでく部分、本気で尊敬するぞ、男として……」
どうやらこの解決案は彼にとっては、飢えた熊に突っ込むくらい無謀な行為に見えるようだ。
「まぁそれが一番こじれないとは思うし、誠実だと思う」
自虐的な笑顔を浮かべて、ゲンゾンに語ってみせる。
「まぁ二股するのを誠実というのが、正しいのであればだけどね」
今言っている事は、俺的にはあまり褒められるとは思えない。
「お前の価値観がこっちと違うのは知ってる、だから言っておく、女を沢山幸せに出来るのはいい男だぞ」
そう言って、俺の背中を叩くゲンゾンが続きを話す。
「それに女が一人ってのは悲惨だ、男以上にな。だからそんな溢れた女を掬える抱えられる男は尊敬される、そんな男なら女は喜んで支えるさ、独身の女の辛さは女が一番知っているからな……」
その手は力が強すぎて、俺は思わず咽そうになる。
「まぁ話は出来たし、お互い気持ちも決まったんだ、そろそろ行こうぜ色男?」
ちょっと悔しいので、俺も仕返しをしようと思う。
「きっと、ロリーエも心配して寝れねーだろうしな。そろそろ帰らんと朝飯が無くなるから安心させてやろうぜ?」
さっきのお返しに俺も、ゲンゾンの背中を叩いてみた。
「ははっ、たしかにそれは大問題だな、そうならないように帰ろうか、それで今度はみんなでここに来て報告をしよう、みんな幸せだってさ」
俺の仕返しに彼はニヤリと笑う、どうやら鍛え方が違うらしく平気そうだ。
「だな!んじゃ、ここは寒ぃしもう帰るわ、ロミーナまたな」
彼は最後に一度墓石に手を当てて、そっと離して立ち上がる、俺も一緒に立ち上がり二人でまた歩き出す。
俺達の足取りは、ここに向かう時は違って、少し軽くなったような気がする。
「シュウゴにとって良い事なのかはわかんねーけど、俺はさ、お前が来てくれて感謝しているし嬉しいと思ってる」
俺はゲンゾンをより身近に感じている、きっと彼もそうなのだろうと思える。
「俺はお前に会えて幸せだよ、シュウゴ」
背中を向けたゲンゾンが、一言そういった。
「ああ、俺もお前に出会えて幸せだって言えるよ」
「そっか……、じゃあさお前、幸せになれよ?」
「この世界に来たのは悪い事じゃない、みんなにも会えたんだ、俺は幸せなるよ」
「おう……、兄弟が不幸になるなんて、俺は、もうごめんだからな?」
彼の思いなのだろう、俺もそれに応えたいと思う。
「ああ、約束するよ、義兄さん」
クシーナと一緒に叶えたいと思った。
「はぁ?お前!歳上なんだから、お前が兄さんだろ?!年上の弟とか要らねーぞ!」
そう言って、苦笑いをするゲンゾン。
「いや、そういっても普通はそう呼ぶもんだろう?こっちじゃ違うのか?」
でもクシーナと結婚したらそうなるから諦めてもらおう。
「そうだけど、そうじゃねえ!だから今まで通り名前で呼べ!兄貴の命令だぞ!」
「分かったよ、しょうが無いから納得しておくさ」
「お前のそういう所……、まじでクシーナとお似合いだと思うぜ……」
俺の新しい義兄弟候補は本気で嫌らしい、なので仕方なく納得しておく事にした。
「兄貴にそう言われるなら、弟としては納得するしか無いからね」
「そこだよそこ!理屈っぽい所とか、マジでお似合いだぞ!」
そうして俺達は、また二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
そんな俺達を冬の夜の山颪が俺たちの身体を襲ってきたが、ゲンゾンが贈ってくれた毛皮と温かい気持ちで、俺の身体が冷える事は無かった。
そうして暗い夜道でお互い無駄口を叩き合いながら家の前に着いた、俺達は小屋に毛皮を仕舞い込み、二人で家に戻る。
「帰ったぞ~、ロリーエどうせ起きてるんだろ?起きてるなら出てこいよ」
ゲンゾンがロリーエの部屋に声を掛けると、暫らくして寝間着に着替えた彼女が出てくる、やはり気になって眠れなかったようだ。
「おかえり、こんな夜遅くに二人で何処にいってたの?」
「ああ、ロミーナん所だ、俺ら家族の話をしてきたんだ、クシーナの事をな」
そう言ってゲンゾンが、ロリーエの髪を優しく撫でるが彼女は少し嫌そうに顔を顰める、きっと少女が子供から大人へと成長する、その途中だからだと思う。
「それで?どうして急に?なにかあったの?」
「俺がクシーナと付き合うことにしたからだよ、だから教えてもらったんだ、彼女の過去をさ。」
ロリーエの疑問に俺は素直に答えた、これは自分の口から伝えたいと思っていた、きっと彼女も喜んでくれる筈だ。
「え……?なんで?シュウゴと、クシーナが……、そっか、そうなんだ……」
驚いたロリーエが黙りこむ、確かに突然だから驚かせてしまったのだろう。
「ごめんなさい、私もう寝るね……、待ってたら眠くて、もう我慢できないみたいだわ……、お話は明日、ちゃんと聞くね……、おやすみなさい……」
一言そう言うと、フラフラとした足取りで彼女は部屋に戻っていく、俺達は訳が解らず、二人で彼女の背中を見送る事しか出来なかった。
「どうしたんだろう?ロリーエ何かおかしくなかったか?」
「ああ、確かにおかしいな、どうしたんだアイツ?クシーナの話だったらアイツも気になるだろうに」
そうして俺達は首を傾げる、まぁ本当に遅かったし、もしかしたら限界だったのかもしれない、実際、俺達も早く寝た方が良い位の時間だ。
「まぁ寝ちまったもんは仕方ねーか、明日一度、レーミクさんを連れて三人で話してこいよ」
「そうだね、一度ちゃんと話し合ってからの方がロリーエにも話しやすいしな」
まだちゃんと纏っていない話だし、纏めてから話すべきだろう。
「んだな、そっから夕飯を皆で摂ろう、そん時に改めて皆で話そうや」
「まぁ、こういうのは夢があった方がロリーエも喜ぶだろう?」
「違ぇねえ、アイツはクシーナに随分影響受けてるからな!」
それに幼いロリーエには、恋愛の醜い部分を見せたくは無い。
「修羅場みたいな話、ロリーエに見せたくないしね」
「確かにアイツは恋に恋する乙女みて~な所があるな、結婚に憧れる部分もあるぞ」
彼女の態度のおかしい部分が納得できたので、俺達はそろそろ寝るために軽く片付けた、この状態で食卓を放置しておくのは、流石に宜しくないし、軽くでも片付けしてこうと二人で思ったからだ。
そうして深夜の男二人の片付けも無事に終わり、部屋に戻って床に入ると眠りにつく前にゲンゾンが俺に語りかけてくる。
「んじゃ、お休み兄弟、明日が楽しみだぜ」
彼の嬉しそうな態度で、楽しそうに明日を語る。
「お休みゲンゾン、俺は大変だけど、まぁ精々頑張るよ」
俺は茶化しつつ暗い部屋で拳を握り、ゲンゾンに返事をする。
「おう、精々女を黙らせる男っぷりを見せてこいよ」
「ああ、期待に答えれるように頑張るよ」
「応援してるぜ、冗談抜きでな……」
それは俺にとっては大きな問題だ、でも自分の撒いた種なのできっちりやるべき問題だ。
「だけど明日は祝杯はしないからな?」
「ははッ、違ぇねえな、ま、明日は軽くにするさ」
「二日連続は、流石にロリーエにお叱りを受けるだろ……」
「んじゃ、俺が代わりにデカイ獲物を取ってくるさ、そんで腹がはち切れる位食おうや」
「あはは、そいつも楽しそうだ」
そう言って笑うゲンゾン、俺もつられて笑ってしまう。
「じゃあ、お互い明日の戦いに備えて寝よう、また明日な」
その言葉を最後に、お互い沈黙して眠りについた、きっと今日はいい夢を見れる、明日はきっといい日になると思いながら。




