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異世界はチートで大変なことになりました。  作者: 黒井 陽斗
違う世界の新たな生き方
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第九話 白いハナ

 いつものように楽しい食事の時間を過ごした後、俺達はそれぞれが午後の予定に向かって動き出す、ゲンゾン仕掛けていた罠で傷んだものを裏の仕事小屋で修理をしてから、新しい罠を仕掛けに出かけるらしい。


 ロリーエは家事をするらしく、俺の服の洗濯と家の中を掃除すると言っていた、俺の服を洗うことに関しては特に異存はないらしく笑って承諾してくれたが、お礼を考えておかないといけないと思う。


 レーミクはズンケルさんと今後について話すそうで、それが纏まり次第で俺も交えて話をする事になった、俺の意見を優先してくれるそうだし、二人が不利益があるような事をするとは思えないので任せておこうと思う。


 俺はレーミクに先ほど聞いた香袋を手に入れるために、クシーナの仕事場に顔を出してお願いし、その後はズンケルさんにお金の無心をするために頭を下げに行くという、情けない予定の二本立て。


 どちらも必要なことなのでやむを得ないとは思うが、それでも情けない事に変わりがないし早く金を稼げるようになりたい。


 この予定の最初は決まっている、レーミクにクシーナの仕事場の道を聞いておく事だ、なので戸の向こうで、出かける準備をしている彼女に声を掛けておく。


「レーミク、準備が終わってからで良いんだけど、さっき話していたクシーナの仕事場を教えて欲しいんだ」


「分かりました、それでしたら神社からそこまで離れていませんし、私がご案内しますので少々お待ちください」


 どうやら彼女が道案内役をしてくれるようだ、そういえば今朝クシーナに次の時は花を用意するって言ったな。


 彼女も冗談だとは思うが、冬に咲く花か……、面白そうだし、ここはちょっとだけ探してからの方が良いかもしれないね。


「すまん、ちょっと用事を思い出したので少し待ってもらえるかな?ちょっとゲンゾンに聞いてみて分かったらすぐに戻ってくるよ」


「私の準備ももう少しかかりますから、私は準備が終わっていてもちゃんと待っていますので、シュウゴ様の御用を済ませてください」


 全く彼女は出来た子だ、俺みたいなおっさんには本当に勿体無い子だと思うよ。


「ありがとう、ちょっと行ってくる!」


 一言彼女にお礼を言って外に出ると、庭の裏にあるゲンゾンの仕事小屋に顔を出す。


「ゲンゾン、少し困った事があって、聞きたいことがあるんだけど少し時間を貰えないか?」


「あんだ?お前、出掛けるんじゃなかったのか?どうした、なにがあったんだ?」


「いやね、ちょっとした事なんだけど、今の時期で簡単に手に入る花はないか?」


 罠の修理をしているゲンゾンが手を止めて、俺の話を聞く為に体を向けてきた、仕事の邪魔をしてはいけないので手早く済ませよう。


「シュウゴ、いきなり花が欲しいとか、どうしたんだよ?」


「ちょっとね、口約束で言った事だからそこまでは大きな話じゃ無いけど、やっぱり約束だから用意したくてね」


「なるほど、そうなると近所にか、ん~なんかあったかなぁ……」


 顎髭をこすりながら、彼は考える素振りを見せている、やはりこれは無理を言ってしまったかもしれない。


「無ければないで良いんだけど、あるなら一輪欲しいんだ、なにかゲンゾンは知らないか?」


「なんかあったけかぁ……、あ!それなら門の側に白いのが咲いてるぞ!結構咲いてるから直ぐ分かると思うぜ」


「おお!本当か!ありがとうゲンゾン!」


 無理だと思った花は近所に咲いているらしい、彼が言うには沢山咲いている様子だ。


「けっこう綺麗な奴だし、あれなら文句も言われんだろ~と思うぜ?」


「そうか、ありがとう助かったよ、これで嘘つきって言われなくて済むよ」


 どうやら今朝の口約束は何とかなりそうだ、門の場所ならここから歩いても直ぐ戻ってこれるので、レーミクを長々と待たせるようなこともないので安心だ。


「ついでで悪いけど、あとなにか隠すための袋みたいな物があるかな?」


 やはり裸のまま持っていくのは、いまいち格好が付かないと思う、何かに入れたほうがいいだろう。


「そうだな、やっぱ隠しておいて、どうだ持ってきたぞ!って出す方が面白いよな!」


「そうじゃなくて裸で持っていくのは、あまり贈り物として相応しく無いだろう?」


「分かるぜそういう気持ちはよく分かるぜ、悪戯と一緒だな!」


 いやゲンゾン、俺は悪戯ではなく慎み的な意味で言っているんだけどね……、少しすれ違いがあるけど、そんな事は構わずにゲンゾンが蓋付きの小さめの壺を渡してくれる。


「元々は傷薬が入ってたヤツだが、そこまで大きくないから手頃だし、見てくれも悪く無いと思うぜ」


「確かににこれはいいな、これに水を張っておけば花も枯れなさそうだし、中身も見えないな」


 派手さは無いが素朴な感じのする小さな壺だ、これなら大仰でもなく丁度いいと思う。


「それでよけりゃもってけよ」


「ああ、なかなか名案だと思うよ、ありがとうゲンゾンこれを貰っていくよ」


 ゲンゾンに礼を言って時間も無いし走って門の側で行くと、門の片隅に白い花が数カ所に散らばって咲いている。


 大きさはそれほどでもないが、小さく可憐な感じのする花だった、早速、傷めないように注意して手折りその香りを嗅いでみる。


 やはり冬の花なので、風を媒介にして繁殖する花の様で、虫を呼ぶ様な香りは無いらしい、約束のために渡すのだから、そこまでは気にしないでいいとは思うけどね。


 手に入れた花を持って家に戻るとレーミクが待っていた、ちょっと遅くなったようだ、レーミクを待たしたので謝らないと思い、彼女の側に寄って軽く頭を下げ謝った。


「すまないね、どうやらお待たせしたみたいだね、こっちも準備は終わったしズンケルさんを待たせるのも悪いから出るとしよう」


「いえ、私の方も先ほど終わったばかりですからお気になさらず、さぁ参りましょう」


 レーミクが俺の左側に立って、顔をを見て嬉しそうに笑い出した、なんだか良く解らないが彼女が嬉しそうなので、道すがらの話題に聞いてみる。


「なんだか嬉しそうだね、どうしたのかな?」


「シュウゴ様のお体が治った事も嬉しいのですが、こうやって村の中を歩くシュウゴ様に侍る自分が誇らしい気持ちと、本当に主従になれたという感じがしてとても嬉しいのです」


 彼女の気持ちを聞いたがいまいち良く分からない、まぁレーミクの介助なしで初めて二人で外に出るからそれが嬉しいのかもしれないな。


「二人で歩く事だってこれからも沢山あるし、俺はレーミクを頼りしているからまたこうやって道を教えてもらうのだってあるよ」


「私はシュウゴ様のお役に立ちたいので、その機会があるなら嬉しいです」


「喜んでもらえるなら助かるよ、嫌がられたら教えてもらえないからね」


「私はシュウゴ様と一緒に歩くのを嫌がる、等と考えると思っておられるのですか?それなら私は悲しいです」


 やばい、また変な事を言ってしまった、これは参った、早急に誤解を解いておかないと、あとで面倒なことになるだろう。


「そんなつもりはないよ?君を信じてるし、頼りにしてるから!」


 この危機を脱するいい案が浮かばないが、必死になって答えを探し口を開く。


「現に俺はこうして君に道を教えてもらえないと、自分の行きたい所にすら行けないような有り様だ、だから機嫌直してくれないか?」


「そんな風に言われては仕方有りません……、しょうがないので直してあげます……」


 言いながら少し困った顔をするレーミク、こちらを見つめるのがいじらしいと思ってしまう。


「良かったよ、君が分かってくれて……」


 でもね、こういう時は若い子にはどうすれいいのだろうか?おっさんの俺には彼女の感情は本当に理解できないよ。


「ですが道案内のご褒美が欲しいです……。神社の下まで手を繋いで歩いても、いい……ですか?」


 白い頬を染めて上目使いでレ-ミクが言って、俺の手を遠慮気味にちょっとだけ掴んでくる、これはなんというか父性を揺さぶれるというか、庇護欲を揺さぶられる。


 きっと子供の頃に出来なかったのだろう、手を繋いで歩く事に憧れがあるのだと思う、だとしたら俺は肯定してしてあげる他はないな。


「ああ、遠慮はいらないさ、それくらいでレーミクの機嫌が治るなら喜んで手を繋ぐよ?」


 俺の妹が幼い頃、良くされた手を繋いで欲しい時の合図が、今のレーミクとよく似ていたのを覚えている、だから彼女の指を俺の指を摘んでいるレーミクの指をそっと掌で包んでやる。


「あ……、ありがとうございます、凄く、うれしい……、です……」


 レーミクは下を向き顔を赤くして囁くように礼を言う、こう言う子供っぽい事を言う自分が少し恥ずかしいのだろう。


 小さな頃できなかった事ややりたかった事を、大きくなって叶えるのは存外嬉しいものだと知っている、今の彼女を見ているとなんだか優しい気持ちになってしまう。


「なに、気にするようなことはないさ、俺は君の主なんだろ?だとしたらこうやって大事にするのは当たり前の事だよ」


 俺の返事を聞いてレーミクは益々赤くなって、小さく唸っている。


「それにこうして欲しいって言ってくれるのは信頼されてるって思うし、俺も嬉しいよ」


 どうやら子供みたいな事を喜んでいる自分が恥ずかしいのだろう、その点をこれ以上触れない方が良いのかもしれないな。


 なので俺も黙って二人で言葉無く今朝も歩いた神社への道を歩く、朝とは違って昼の陽光は温かい、それに風も無いので絶好の散歩日和というような雰囲気だ。

 

 そんな長閑のどかな田舎道を二人でゆっくり歩いていると、何事もないまま神社の麓まで辿りついてしまった。


「神社についてしまいました……、シュウゴ様手を繋いで下さって、ありがとうございました」


 そう言ってレーミクは名残惜しそうに、ゆっくりと俺の手を離すと、彼女の指が名残を惜しむように俺の指を摘んで離れる。


 レーミクの行動が俺に垣間見せた行動が、彼女が随分と親の愛に飢えた生活を送っていた事を感じさせる。


「ん~、そうだ!レーミクが嫌じゃないなら、もう少し手を繋ぐかい?」


「あ……、はい!是非お願いします」


 寂しそうに落ち込んでいた彼女が、顔を上げて潤んだ瞳を向けてくる。


「まだ一緒にクシーナの所まで歩くんだしね、良かったらもう少し手を繋ぐかい?」


「凄く、嬉しいです……、シュウゴ様」


 彼女の幼少期、貴族の家の生活は本当に厳しくて、凄く寂しい物だったのだろうと感じてしまう。

 

 レーミクの様な良い子がこんなにも愛情に飢えている姿を見せつけられると、なんだか凄く悲しい気持ちがこみ上げてくる。

 

 今後は、せめて俺だけでも良い主として頑張っていこう、レーミクが自分は幸せだと胸を張って言える様にしてあげたいなと俺は強く思った。


「ふふ、ふふふ、シュウゴ様、私嬉しくて、なんだか幸せすぎて、泣いてしまいそうです」


「どうしたんだい?」


 こちらの世界の人は感情を素直に表現する分、その振れ幅がとても大きい、彼女は今まで抑圧された感情が溢れてしまったのだろう。

 

「わたし、こんな幸せでいいんでしょうか……?なんだ少しだけ……、怖くなってしまいます」


 そのせいで感情の制御が追いつかなくなって、結果として自分の感情に恐怖を感じているのかもしれない。


 こういう時は肯定してあげないと悪い方向に向かうと過去の経験から知っている、レーミク頭を優しく撫でながらゆっくり話す、こんな時は言葉よりも態度が大事なのだ。


「大丈夫だよ、レーミクが幸せになってはいけないという奴が居るのなら、俺がそいつを追い払ってやる、君は幸せになっていいんだ」


 そして彼女の孤独を正しく否定して、彼女自身を肯定してやることが大事だと思う。


「君は不幸になるために生まれた訳じゃない、他の人と同じ様に幸せを掴むために生まれてきたんだ」


「わたしは、シュウゴ様のお側にいる以上の幸せを願ってもいいのですか……?」


「ああ勿論だよ、君が俺の手を掴んで幸せを感じたというなら、それは自分で掴んだ幸せだ、だから掴んだ幸せを大事にすればいい」


「はい、私絶対に離しません、この幸せを絶対に離したりしません、他の誰に何を言われたとしても、他のどんなものを犠牲にしたとしても、この温もりだけは絶対に離したりしません……」


 どうも俺が思っていたなんだか方向と違う方向に彼女が行ってしまったような気がする、なにか彼女の俺を見つめる目が、今までと決定的に違うような気がする。


 何がどうとは言えないが何かが違うと感じた、何か俺はとんでもない勘違いをしているのか?


 いや、きっと今は感情の振れ幅が大きいだけだろう、気にし過ぎだと思う、うん、きっとそうに違いない、なんだか背中に妙な寒気を感じるな、汗をかき過ぎ冷えて風邪でも引いたのだろうか?

 

 そう考えているとふっと彼女の表情が柔らかくなり、その嫌な寒気が引いていく、どうやら気のせいだったみたいだ。


「ありがとうございます。シュウゴ様のお陰で心の内に淀んでいた悩みが晴れました」


「それなら良かったよ、君が元気な方が俺は嬉しいしね」


「さすがはシュウゴ様ですね、レーミクはシュウゴ様にお仕え出来て本当に幸せです」


 晴れやかな顔で話す彼女は本当に綺麗で見惚れてしまいそうな美しさがあるのだ、少女が女性になる時の危うい魅力、その時にしか無い暴力的とも言える魅力を振りまいている。


 その白い肌と銀糸の姿は男を惑わす大輪の白い華を思わせる、俺がもう少し若かったら惚れているだろう、というか今でも少し危ない程に魅力的だ。


 だが例え魅力を感じても彼女の信頼を自分の欲望で裏切る訳にはいかないと、なんとか余裕を捻り出して、俺は大人の顔で答える。


「ああ、君が元気になれたのなら俺も嬉しいよ」


「はい、ありがとうございます」


「さて、それじゃ、ズンケルさんを待たせるわけにもいかないし、クシーナの所への道案内を再開してくれるかな?」


「ええ、そうですね、では参りましょう、こちらですよ」


 明るく行って案内してくれるレーミクはなんだか上機嫌に見えて安心する、特に大きな問題もなく、無事にクシーナの仕事場まで辿り着いた。


「ここがクシーナさんの仕事場です、私はここでお別れですね」


 彼女と繋いだ手を離そうとした瞬間、レーミクは俺の腕にしがみついて顔を擦り付けるようにくっついてきた。


「おい!レーミク、いったいどうした?」


 その行動に驚き俺は声を上げるが、彼女は一向に構うこと無く擦りつけてくる。


「ズンケル様には、後ほどシュウゴ様がお話があると伝えておきますね……」


 抱きつきながら彼女が話の続きをする、どうやらまだ甘えたりなかったようだ、仕方ないので暫くは彼女のしたいようにさせるしかないか……。


「あ、ああ……、済まないが頼む……」


 擦り付いていた時間は、十秒くらいだろうか?彼女は満足したらしく。


「これくらいでいいでしょうか?」


 レーミクは一言、そう言ってゆっくりと離れて納得したような言葉をつぶやく。


「ではシュウゴ様、行って参ります、それではまた後ほど」


 そして微笑みながら別れの言葉を俺に向かってすると、神社の方へゆっくりと向かっていった。


 レーミクは先程、何か納得したような素振りだったが、俺にはよく分からないままだった、彼女なりに何か意味がある行為なのだろうと、その行為の意図を読み解こうとしたが結局さっぱりわからないままだった。


「まぁ解らない事をこいつまでもこで悩んでも仕方ないな、とりあえずはクシーナを訪ねてきたんだし、いつまでもここ居ても仕方ないか」


 来訪を知らせるために扉に付いている金具を手に取り軽く音を鳴らす、金属と木が織りなす独特の音が響き、暫らくしてクシーナの声が聞こえてくる。


「は~い、鍵は開いているから、どうぞ入ってきて下さいな~」


 どうやら彼女は中にいるようだ、流石に来客が誰か解らないのは心配だろうと思うので名前を名乗り、一言声を掛けてから入る事にした。


「クシーナ、シュウゴだ失礼するよ~」


「あら、シュウゴなの?今朝も会ったばかりなのに、どうしたの~?」


 奥から彼女の声が聞こえるのでその方の戸を目指して進んでいく、室内はなんだか変わった匂いが広がっていて少し薄暗い、どうやら太陽光を嫌うような作業をしているようだ。


「いきなり済まないねクシーナ、仕事中だろうし一段落するまで待っているから、後で時間をくれないか?」


 辿り着いた先の戸を開き改めて挨拶をした、どうやらここが彼女の仕事場らしい、随分と色々なものが置いてある。


「あら、お気になさらず、やることはだいたい終わってるし、あとは出来上がるのを待つだけよ」


「そいつは良かった、少し話すことがあってね」


「話なら出来るわよ?どうかしたの?」


 そう言いながら椅子を用意してくれるクシーナ、俺は勧められた椅子に腰を下ろしてから要件を話そうとして、懐に仕舞っていた花の事を思い出す。


「ああ、ちょっと相談があってきたんだ、でもその前に約束の品を渡しておくよ、開けてみてくれ」


折角取って来た物だ、話の前に渡した方がいいだろう。


「あら、なにかしら?楽しみね、それじゃ開けるわよ?」


 渡された小瓶の蓋を開けて、彼女は苦笑いを浮かべている、持ってきた花はクシーナの趣味に合わなかったのか?少しだけ嫌な予感がする。


「雪見草の花ね……、たぶん朝の約束を守ってくれたんでしょうけど、これはちょっと貴方からは頂く訳にいかないわ……」


 クシーナの呆れたような顔は趣味に合わないんじゃなくて、俺がなにかやらかしたような顔に見えるし理由を聞いておいた方がいいだろう。


「どうやらお気に召さなかったようだけど、その花はなにか曰くのある花だったりするのかな?」


「私はシュウゴの事を稀人だって知っているから勘違いしないけど、他の人にこんな事したら貴方は大変な事になっていたわよ?」


「そうなのか?この花は今の時期に咲いてる花を聞いたんだ、そしたらゲンゾンがこれを教えてくれたんだ」


「あ~、なるほどね~、あの朴念仁なら確かにこの花の意味を知らないのも当然だろうし、色々納得したわ」


 どうやらこの花はなにか曰くがあるらしい、それが今回の問題点らしいので後学のために聞いておこう。


「クシーナ、今の俺の行動は何が問題だったのか教えて欲しいんだけど、いいかい?」


「ええ、構わないわ、でも自分がやった事を聞いて悶ても知らないわよ?」


「グ……、今後同じ失敗をしない為にも我慢するよ……」


「宜しい、じゃあ教えてあげるわね、悶える覚悟しておきなさいよ?」


 クシーナが悪戯をする前の子供の様な笑顔を浮かべる、なんだかとても楽しそうだな。


「この花はね所謂多年草なのよ、球根があって同じ所に咲くのね、ここまではよくある花よ?でもこの季節に咲くから意味があるの。冬にこの花以外は身近に咲く花は無いわ」


 やはり選択肢はこの花位しか無かったんじゃないか、だったら何が悪いんだ?


「そんな冬を越す雪見草の花を女性に渡す事は『自分と何度も一緒に冬を越して欲しい』って意味で、求婚の時に渡すのよ」


 なるほどなぁ……、うまいことかんがえたもんだなぁ。


「要するに貴方は会って三度目で私に求婚したって訳、お分かりなって?シュ・ウ・ゴ・く・ん」


 ああ……。なんだか少し自分が大馬鹿野郎だって思えてきたぞ!なんというか穴があったら入りたい。意味もわからずドヤ顔で求婚してるって馬鹿じゃないか!


 しかもその意味を渡した本人に教えてもらうとか、なんて高度な自爆なんだろう、恥ずかしくて情けない。


「その上に、そんな花を渡しに来てるのに、身体に他の女の匂いを纏ってくるなんて、貴方って本当に自分に自信がある男なのね」


 あぁ……、気が付かなったがレーミクの髪の香りが付いていたのか……。


「まぁ勿論そういう風に女に嫉妬をさせて受け取らせる高度な方法もあるのだけど、貴方そういう駆け引きをするような人ではないだろうし、レーミクさんの移り香ってトコでしょうけどね」


「ああそうだよ!知らなかったさ!と言うかこの恥ずかしさで俺は今猛烈に後悔してるよ!」


 その上に求婚の意味を知らずに雪見草を渡して盛大な自爆をしたのか、俺は恥ずかしくて思わず吠えてしまう。


「女性に花を贈るなんて滅多にしないから、そこまで考えて無かったよ!穴があったら本当に入りたい……、恥ずかしさで死にそうな気分だよ」


 先程レーミクが擦り寄ったことで彼女の残り香が服に残っていたのだ、その事がさらなる悲劇を生むなんて誰が考える?自分で気が付かないままやったとは言え、なんという破壊力なんだろう、俺の心はぼろぼろだ。


「まぁ、この花はそういう意味では頂けないけど、私は結構好きよ?小さくて可愛いし、雪に負けず咲くなんて素敵じゃない?」


 彼女は俺を慰めるつもりか、雪見草は好きだと行ってくれる、そこは少しだけ救われる気がする。


「まぁもう少し後で、貴方をもっと知って私を知ってもらってからだったら、そっちの意味でも受け取っても良かったかもね、貴方と一緒なら楽しそうだわ」


「好きに言えよ、どうせおもちゃにできて楽しそうって意味だろう?全く恨むぞゲンゾン、そういう曰く位は覚えておいて欲しかったよ……」


 ここに居ないゲンゾンに八つ当たりをして何とか精神を立ち直す、これは完全な八つ当たりでレーミクの件は自爆なので、当然彼を恨んじゃいない、けどそんな姿を見てクシーナは楽しそうに笑う。


「あははは、ダメよシュウゴ、アイツは結婚する時にこの花を義姉さんに送ってるけど、義姉さんが花が好きで、この花が欲しいから取って来て欲しいって意味で言ったと思ってるのよ?」


 確かにアイツなら、そう考えてもおかしくないと思えるのが悲しいな……。


「だからねゲンゾンはきっと、雪見草なら女が喜ぶから持っていけばいいんじゃないか?位にしか思ってないわ、アイツ昔っからそういう事に興味も頭も回らないのよ、あははは」


「なんというか求婚の時に渡しておいてそれなのか、確かにそれは朴念仁と言われても仕方ないなぁ……」


 俺も確かに友人(ゲンゾン)の鈍さを擁護出来ないと思い、この恥ずかしい失態をもう二度犯さない様に、脳内にきっちりと覚えておこうと心に誓ったのであった。




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