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エンディングの、その先

勇者が遊びに来たようです。

 勇者になるつもりなんて、なかった。


「お前、ちょっと飲みすぎだぞ」

「いいんだぁ!俺勇者だからぁ!羽目外したって大丈夫だー」

「だからってボクの家で暴れないでくれよ」


 せっかく久しぶりに国の外れにある辺鄙な集落に住んでいるかつての仲間兼幼馴染を尋ねに来たのに、そっけない態度を取られて拗ねているなんて言えない。

 今、幼馴染の隣には興味津々に俺を見る銀髪の幼女がいる。

 正直、ここまで素直に育ってくれているとは思っていなかった。

 この幼女は魔王の娘だと思う。正直なところ本当の事を聞かずに魔王を殺してしまったから、真相はわからずじまいだ。

 自分の敵だった魔王の娘を育てている幼馴染には言えないが、この幼女が次期魔王になるかもしれないなんて可能性の未来もたっぷり残されていると思う。

 そんなの俺だって考えたくもないけれど。

 

「パパ。ニアもうねむい」

 俺の醜態に飽きたのだろう。魔王の娘――ニアが瞼を擦りながらぐずっている。

「そうか、じゃあベッドで寝ような」

 そう言ってニアを抱っこして寝室に入る幼馴染を見ると、やはりあの時、俺はあの言葉を言って良かったって思う。



『お前だったら、良い父親になる』



 本心でそう言った。

 昔からそうだ。この男は誰にだって優しかった。

 きっと、このまま死ぬしかない小さな命を放っておけなかったんだ。

 でも、ちょっと不安だった。

 もしかしたら魔王の策略なんじゃないかって今でも思っている。

 今日ニアを見た瞬間、その不安は少し解消された気がするけれど。


 そういえば、俺達が仲良くなった時だってそんな感じだったっけ。

 虐められていた俺を助けてくれたんだった。


『メリア、どうした?』

『ジョシュア、どうしよう。この子泣いているの』

『あ、本当だ。お前、何か怖い事でもあったの?』


 あの時、この男と、ちょっと先の未来でこの男の妻になった子に救われてなかったら。

 俺は、こんな世界なんて救っていないだろうって。

 

 勇者になるつもりなんて、なかった。

 ただ自分の幼馴染が、魔物のせいで泣いているのを見ていられなかった。

 ただ、それだけ。


「お前、また縁談断ったんだって」

「どこでそんな話聞いたんだよ」

「もうこの集落にも噂が広まってるんだよ」

「そうか。でも俺が悪いわけじゃない」

「………」

「誰も本当の俺の事、見てくれないんだ」


 魔王を倒して、帰還した俺達を待っていたのは大勢の国民だった。

 誰もが俺達を勇者だって言って、ちやほやしてきた。

 どこに行っても勇者、勇者、勇者。

 本当の俺の名前を知っている奴なんて、いない。

 

 最初は、王様に自分の娘をやるなんて言われたけれど、それだって国民の支持率を上げたいだけの策略に過ぎないことくらいわかっていた。

 その縁談を断った後だって、我も我もと舞い込んでくる縁談の数々。

 ノイローゼになりそうだ。


「フィンがいるじゃないか」

「え?なんで」

 かつての仲間だった女魔法使いの名前が出てきて少し戸惑う。

「フィンはお前の事好きだったはずだろ」

「―――はっ」

 違う。フィンはお前のことが好きだったんだよ。

 お前が魔王の娘を育てるって決めた時、あれだけ反対していたのも、全部お前の為だったのに。

 お前の鈍感のせいで、どれだけフィンが泣いたと思ってるんだ。

 相談を受けていた俺の身にもなってくれ。


「まあ、あいつは研究命だから」

「確かにな」

 納得するなよ。気づけよ。

 そんな言葉を、俺は飲み込んだ。

 ムカつくから、絶対に教えてなんかやらない。


「おい、ここで寝るのか。風邪引くぞ」

「うーん」

 酔いが回って体が重くて、もう動かない。指すら動かすのが億劫だ。

「全く」

 ふわりとかけられる毛布。暖かい。

 

 なあジョシュア。お人好しのジョシュア。

 俺よりもお前の方が絶対、勇者向いてるよ。

 


 勇者になんて、なるもんじゃなかった。

勇者って魔王倒した後大変そうだな、という妄想から。

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