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マーメイドと永遠に。

作者: 黄瀬



ここは西の国の小さな街。

海の近くの大きなお屋敷。



「ケイン坊っちゃまお誕生日おめでとうございます」

「ケイン坊っちゃまお誕生日に相応しい素敵なお召し物ですわね」

「ケイン坊っちゃま、ーー」

「…ケイン坊っちゃま、ーーー」

「みんなありがとう!」


執事長の爺や、メイドのみんなが御祝いの言葉をくれました。

それに応える金糸雀色の短い髪をさらりと揺らしマリンブルーの瞳をにこりと輝かせる少年。


今日はケインのお誕生日です。

朝からパーティの準備でお屋敷は大忙し。

あっちを飾り付けてこっちにお花を置いて。

チキンにロブスター、スープにチョコレートケーキ。

カラフルなバルーンが沢山、プレゼントはもっとたくさん。

素敵なバースデーパーティが始まります。






「皆さん。今日はわたしの自慢の息子、ケインの為に御足労頂き誠にありがとう!ほら、ケインも挨拶しなさい」

「はい。みなさま、今日は僕のために来てくれてありがとう。楽しんでいってくださいね」

沢山の大人がケインに拍手を送る。

髭の口元を綻ばせてみんなにっこりしています。

「ケイン、私からのプレゼントだ」

「お父様、ありがとう。わぁ…とっても綺麗…!」

それは大きなタマゴでした。

不思議な不思議なタマゴでした。

まるでタマゴの中に海を閉じ込めたようにゆらゆらと揺れていました。

とてもとても綺麗なタマゴでした。







「タマゴさん、タマゴさん。僕ケインって言うんだ。よろしくね」


「タマゴさん、おやすみ。良い夢を見てね」


「おはよう。気持ちの良い朝だよタマゴさん。」


「見てタマゴさん。子リス達が追いかけっこをしているよ」


「タマゴさん、今日のおやつはシュークリームだよ」


「…ねぇタマゴさん、タマゴさんはいつ僕に会ってくれるのかな」


「ほらタマゴさん海だよ、みえる?」


ケインはタマゴと海へ来ていました。

のんびりとした暖かいお昼でした。

海風は心地よく遠くに船が見えました。


突然強い風が吹きました。

大きな波がケインとタマゴを呑み込みました。


深い深い海の中、

タマゴは海と混じって見えなくなりました。

「タマゴさんっ!」

「タマゴさん!タマゴさん!どこなの?!」

ケインは叫びました。

すると辺りが金色に光だして女の子が現れました。

ケインを助けてくれた女の子は人間ではありませんでした。

ケインより少し小さな女の子。

流れる金色の髪にケインと同じマリンブルーの瞳、腰から下は脚ではなくヒレが生えていました。







「リリー、今日は何して遊ぶ?」

「昨日の貝殻集めの続きをしましょうよ」

ケインとリリーはそれから毎日一緒に遊びました。

マリンブルーの瞳が見つめ、マリンブルーの瞳が微笑み返しました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「旦那様、やはり人魚を置いておくのは危険です」

「そんな事は解っている。解っているが、…」

「でしたら早急になんとかしなければ成りません。でないと最悪の災いが起きてしまいます。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「リリーは喜んでくれるかな」

ケインの手にはリリーに隠れて作ったプレゼント。

逸る気持ちを抑えきれずに急ぎ足でリリーの元へ向かいます。

コンコン。

「リリー、僕だよ」

「………。」

「リリー?寝ているの?」

「………。」

「入るよリリー」

そこにはリリーの為の浴槽があります。

静かに浮かぶリリー。

水は朱く染まっていました。

ガシャンッ。

小さな貝殻で出来た綺麗な色のネックレスが

ケインの手から落ちました。








ケインとリリーは海へ来ていました。


「ほらリリー海だよ」


「そうだ、君にこれを作ったんだよ」


「うん、やっぱり良く似合うね」


ケインは微笑みました。

リリーの首元には綺麗な貝殻のネックレス。

心地よい海風が吹いています。

ケインはリリーの額に口付けをしました。


突然強い風が吹きました。

大きな波がケインとリリーを呑み込みました。


深い深い海の中、

ふたりは海と混じって消えました。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読させていただきました。 世界観が幻想的で美しいと思います。 単調な面と文章が妙に合っているように見え、だからこその魅力が感じられました。 また、作者様がこの作品にどのような想いを込めら…
2017/01/12 00:11 退会済み
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