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最強の剣士と魔術師

 俺は、煉と対峙する。目の前にいるのは悪魔となった煉。圧倒的なまでの力にどうにか対等に渡れるぐらいだ。だが、俺は負ける訳にはいかない。

 煉を放っておいたら世界が危機に晒されてしまう。それに、姉弟子との約束もあるしな。

「煉、なぜ悪魔の力を持っている」

「そんなの決まってるだろう? 強くなるためだ! 強くなるのにこの力はいいぞ~。今までの全てを凌駕してくれる!」

「なぜ、そこまで強さを欲する! 他人を犠牲にしてまでも強さを手にして何の意味がある!?」

「なぜかって? お前も知ってるだろう? いいや、お前も思ってるはずだ。兄弟子を超えるには悪魔の力すらも必要だってことにな!」

「兄弟子・・・。そうか、お前はあの人を超えるために」

「そうだ! あの人の強さは異常だ。人間を超越した何か。それほどまでの強さに追い付くためには悪魔の力ですらも俺は利用してみせる!」

「だったら、俺は止めてみせる。お前が他人を犠牲に手にした強さを俺は否定する!」

「ほざけ!」

 再び俺と煉は打ち合いになる。相手の動きを見てから動くんじゃない。感じるんだ。魔力の流れをマナの流れを。

 煉の魔力は一般人のそれとは違う。悪魔によって得た魔力だからどこか異質な感じだ。そこだ! 俺は、煉の魔力を感じ取って連撃を浴びせる。この手応え・・・確かに当たったぞ。

「ぐあっ! まさか悪魔の力を得た俺を捉える・・・だと!?」

「お前の魔力が悪魔になったことでよーく感じ取れる。だから、動きを捉える必要なんてない。魔力の軌跡を追うだけでいいんだ」

「クソがーーーーーー!!」

 悪魔の力を宿した前の煉の方が冷静で動きにキレがあった。魔力も感じ取りにくく、前の状態での本気の打ち合いだったら負けていたかもしれない。だが、今だったら勝てる。動きにキレが無くなった今だったら!

『たかだか人間如きに負けて貰っては困る。我は憤怒の大罪。怒りがよりお前を強くする。だが、所詮は人間ということだ。

 さぁ、体を渡せ!』

「ぐああああああぁぁぁーーーーーー!!」

 突然、煉が苦しみだす。一体何が起きてるんだ? それに、さっきまでの魔力から更に異質な物へと変化していく。いや、これはもう魔力とか以前に・・・!

「『はぁー・・・。たかだか人間如きがいい気になるなよ』」

「何だ・・・これは」

「『我の名はサタン。七つの大罪の憤怒を司る悪魔。まぁ、これから死ぬ者に名を語っても意味はないか』」

 サタンと名乗る悪魔は腕を一振りした。何の変哲もないただの一振り。だが、その一振りによって俺の目の前の地面は大きく抉れる。

 バカげてる。圧倒的なまでの力・・・。これが、本当の悪魔の力なのか。

「何を怖気ている!? 君の力はそんなものなのか? 君が私に見せた希望は何だったんだ!?」

 そうだったな。俺が不知火の前で戦わなくてどうする。俺があいつを守らなくてどうするんだ。俺の目の前で誰も傷つけさせない。もう誰も俺の目の前で殺させはしない!

(そうだよ。集は誰かを守る力がある。鬼神を選ばず、剣神の道も選ばなかった。両方の道を選んだ集ならきっとやれる。私は信じてるから!)

「行くぞ不知火!」

「ああ! 私も詠唱がもうすぐ終わる!」

「『ふん・・・。人間の剣士と魔術師如きが我に敵うと思っているのか・・・。馬鹿にするなよ』」

 サタンは一気に魔力を放出させる。これが、七つの大罪を司る悪魔の力か。だが、俺は負けはしない。

 鬼神という神無の闇と剣神という神無の光。俺は、どちらも否定しない。どちらもが神無の業だからだ。その全てを俺は肯定する!

「抗うは炎神の理、煉獄の淵より出で彼の者を焼き払わん、その魔の名はインフェルノ!」

 不知火の詠唱が終わったか。

「『ほう? 人間が煉獄の炎を召喚するか。だが、七つの大罪には無意味だ』」

「そうか。だったら俺がその魔法貰うぜ」

「『何・・・?』」

 不知火は最上級魔法を放った影響かダラリと力無くしている。不知火が放った魔法は俺が貰う!

「『マナを変換して魔力にしているのか? いや、これは・・・』」

「そうだ。俺はマナを魔力にするだけじゃない。魔法すらも魔力に変換することが出来る。インフェルノで得る魔力はどんなんだろうな」

「『バカが。煉獄の炎を人間が受け切れるはずがないだろう』」

 そうだ。ただの人間だったら俺の体は煉獄の炎で体を焼かれるだろう。しかし、今の俺は違う。剣神でもなく鬼神でもない新たな道。それを俺は突き進む。

「顕現せしは鬼と剣の申し子。その道を阻む者に一閃の罰を。全ての魔の理を身に纏う」

「『その姿は・・・。いや、そんなはずはない。そんなはずはないんだ! あのお方は死んだはずなのにどうして貴様がその姿になっている!?』」

「魔神。それが、俺が見つけた新たな道だ」

「『全ての魔を掌握する・・・か』」

 俺は、不知火の魔法を受けて体が焼かれる。熱い。これが、煉獄の炎か。全てを魔力に変換。そして、自身の魔力として再構築。

 これが、俺が得た新たな力だ。

「『ベリアル卿・・・。あぁ、ベリアル卿がそこにいる』」

「何を言っている? 俺は、神無 集だ」

「『貴様には分かるまい。だが、ベリアル卿を真似る愚行だったな。ただ、我を憤怒させたに過ぎん』」

「そうか。だが、俺はお前を止める」

 神速の連撃がサタンを捉える。全てに煉獄の炎を纏っていて、サタンに大ダメージを与える。さすがは不知火が詠唱した魔法ってとこか。正確な詠唱によって作られた魔法は元の性能すらも凌駕する。

「『これが、人間の力だと・・・。いや、これは―――』」

「これで終わりだサタン! 神無流奥義 絶無」

 全てを無に帰す神無の奥義。最初は2連撃から始まり、倍々で連撃がどんどん増えていく使用者にも相手にも無慈悲の技。その技は相手が無になるまで止まることはない。

「『こ、このままでは・・・!』」

「おっと。サタンをここで失う訳にはいかないんでね。集、止めさせて貰うよ」

 俺の連撃は16になったところで突然の乱入者によって止められた。この技を止めれる者がいるのか? 俺が息を整えて技を止めた人物を見る。銀髪に物優しそうな顔。そして、不釣り合いなほど大きい刀。それは、その人物の身長ほどの大きさもある得物である。まさか・・・。

「兄弟子?」

「そうだ。集、悪いけどサタンをやらせる訳にはいかない。ここは、俺の顔を立てると思って退いてはくれないか?」

「何を言って・・・」

「退いてはくれないかと言っている」

 圧倒的なプレッシャー。悪魔であるサタンと対峙した時よりもより感じるプレッシャーに俺は脂汗を流す。兄弟子の強さは分かってはいたが、ここまでとは・・・。

「集と煉が言っていた兄弟子とはこいつのことか?」

「あ、ああ。神無流で歴史上最高の強さを誇った剣士。それが、この兄弟子だ」

「なるほど。どこかで見たことがある顔だな」

「初めまして不知火 楓さん。君と会うのは2度目だね。最強最弱の魔術師さん」

「何・・・!?」

「怒らないでくれ。事実を言っただけだ。最弱最強の剣士に最強最弱の魔術師。何とも不釣り合いで歪なパートナー。だが、それこそが美しくもある。互いの弱いところを補うことで最強という部分だけが際立つ。まさに最高のパートナーだ。

 末恐ろしくも思うよ。まさか七つの大罪であるサタンをここまで追い詰めるとは思わなかったからね。まぁ、サタンも煉なんて出来損ないの体を使ってたら本領を発揮出来ないのは無理ないか」

「何を言っているんだ・・・?」

「集、俺は―――俺たちはこの世界全てを破壊する」

「世界を破壊する・・・? そんなことさせない」

「集、お前は何のために世界を守るんだ? お前にとってそこまで意味のある物なのか? この世界って奴は。俺にはそうは思えないがな。

 人間の全てを魔法で決める。確かに評価を下す素材としてはいいだろう。だが、人間が人間を評価するのってどうなんだ? 評価する人間てのは神か何かで絶対に間違いを犯さないとでも言うのだろうか。

 否! 評価する者もまた人間。ならば、魔法だけで人間の全てを決めてしまうこの世界は間違っている。狂っているんだ。だから、俺たちが世界を破壊する。

 そもそも魔法の起源からして人間は大きな罪を抱えているんだ。それを贖罪しないといけない」

「俺は―――」

「集が何を言おうがもう止められない。世界の革命は始まったんだ。・・・聖魔杯で待つ。俺たち八つの枢要罪を止めれるなら止めるがいい」

 兄弟子はサタンを抱え上げるとそのまま消えてしまった。兄弟子が世界を破壊するだって・・・。あの人は一体何を考えているんだ。聖魔杯に一体何があるっていうんだ。

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