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最強ゆえに最弱

「不知火、俺と手合わせしてくれ」

「急にどうしたんだい?」

「聖魔杯に一緒に出るパートナーの力を試したくなった」

「ほぉ? どういったことがあったが知らないが随分とやる気に満ち溢れている。いいだろう。トレーニング室に先に行っていてくれ。すぐに仕事を片付けて向かう」

 俺は不知火の元へ戻ると手合わせをお願いした。前は突発的な戦いでしかも腕試しの要素が高かったから不知火の本当の力を俺は知らない。だが、予想が正しければ―――。

「準備は出来ているようだな」

「ああ。この前と違ってこっちも本気で行かせてもらう」

「そのようだ。そんな物騒な物を出すぐらいだからそれだけ本気ということだろう。私も本気で相手をさせてもらう。いい勝負にしよう」

「いい勝負にはならない。不知火は最強の魔術師と同時に最弱の魔術師だからな」

「何・・・?」

「全ては試合をしてみれば分かる」

 トレーニング室の一画である戦闘場で俺と不知火は相対している。そして、互いの手には前には無かった武器がある。俺は神無家を出る時に貰った刀、不知火は魔術師らしく杖を持っている。

 戦闘場の周りにある観客席が次第に賑わい始めてきた。

 放課後で遅い時間だというのに観客席にはトレーニングしていたであろう生徒たちが次々と集まってきたからだ。全ては不知火の戦いを見るために。学園最強の 魔術師(・・・ )だから。

 不知火の詠唱と同時に試合は開始される。

「原初の火、大いなる繁栄、業火にして劫火、クリムゾンフレ―――ッ!!」

「終わりだな」

 俺は長々と詠唱していた不知火の懐に一気に飛び込むと刀を不知火の喉元に突き付ける。一瞬の出来事に不知火自身も驚き、周りにいる生徒達も一同に息を呑む。だが、近接戦闘を得意とする人間なら誰でも出来る。

「そう。不知火は魔術師としては最強だ。けど、戦闘において不知火は魔術師として最弱なんだ。何でか分かるか?」

「術の詠唱の際に大きな隙が生まれるからか・・・」

「ああ。まぁ、そのことが分かってるから俺をパートナーとして誘ったんだろうけどな。だけど、魔術師でも戦闘において俺より強い人間はいる」

「無詠唱魔法に小出しの魔法を使わないのが原因ということだな」

 そうだ。魔法は詠唱すれば精度と威力が大きく上がる。だが、詠唱するということはそれだけ集中する必要があり、大きな隙が生まれる。

 そこで生まれたのが無詠唱魔法と詠唱をより短くした小出しの魔法。威力と精度は大きく落ちるが、戦闘ではこれほど優れた物はない。当てなければ意味がないからな。

 不知火はなぜか大魔法ばかりを使ってくるからか隙が大きすぎる。そこを叩かれればいかに最強の魔術師と言えども最弱になってしまう。

「何で不知火はそれらを使わないんだ?」

「使わないんじゃないんだ。使えないというのが正しい」

「使えない? 俺を最初に会った時に吹き飛ばしたのは無詠唱だったと思うが」

「あ、あれは、そのすまなかった・・・。ゴホンッ! あの魔法は無詠唱ではないのだよ」

 あ、少し可愛かった。続けて。

「あれは、遅延魔法( ディレイマジック)とでも言うべきかな。魔法の発動を遅らせることが出来るんだ」

「発動を遅らせる? そんなこと普通じゃ出来ないと思うが・・・」

 魔法は詠唱を唱えることでその効果を発揮する。それは、1節から10節にまで及ぶ魔法と様々あるが、どれもが一度発動したら詠唱後に発動される。

 その原理を知っているからこそ周りにいた生徒達も俺も驚く。何を言ってるんだ? とバカにする声すらも出るほどだ。

 無詠唱と小出し魔法はその詠唱を極限にまで削った魔法だからさっきの通り、威力などが落ちる。だけど、詠唱した後に遅延して発動出来る魔法があったとしたら・・・。

「発動を遅らせるというより詠唱状態で魔法を留まらせておくという言い方の方が正しいか。例えば、原初の火、大いなる繁栄、業火にして、で止めておく。次の一文をしばらくしてから唱える。

 ・・・劫火!」

 すると、一拍置いたはずの魔法が放たれる。詠唱は途切れることが許されないのにそれを途中で会話を挟んで発動させるだって・・・!?

 それが出来るんだったら不知火の魔術師としての欠陥は大きく補われる。

「しかし、これにも弱点はある。一度に遅延出来る魔法の数は10個まで。そして、仮に同じ魔法を遅延したら発動時に一気に全部発動されて大きく魔力が消費されてしまう。

 また、遅延出来ない魔法もある。便利そうに見えて便利ではない品物なんだよ」

「だが、これがあれば弱点を補えれる。これで無詠唱が使えれば!」

「そういえば、なぜ無詠唱が使えないか言っていなかったな。それは―――」

「魔力が桁違いに高すぎるから無詠唱とか小魔法だと暴発しちゃうんでしょ」

「セシリア!? どうしてここに・・・」

「魔法の練習をしてたら面白そうなことをやってたから見てただけ。会長の弱点は膨大すぎる魔力。繊細なコントロールが要求される無詠唱と小魔法は会長には合わない。そんなことをするぐらいだったらいっその事、後方から大砲みたいにドカンっと吹き飛ばした方がいい」

「セシリアさんの言う通りなんだ。私の魔力は生まれ付き高い。そのせいでコントロールがうまく出来なくて大魔法以外が使えないんだ。大魔法だと魔力消費が激しいおかげでコントロールする必要がないんだが」

 普通は逆だと思うんだけどなー・・・。魔力消費が激しい大魔法を普通の人は好んで使いたがらない。大魔法なんて一般人だったら2,3発も撃ったら魔力切れになっちゃうしな。

 それを不知火は小魔法とかよりも大魔法のがいいときたか。ある意味では凄すぎるな。

「セシリアでいいよ。さん付けなんてしなくていい。同い年なんだし」

「そうか。セシリアありがとう」

「ん。集、まさか聖魔杯に出るの? 会長と」

「そのつもりだけど」

「そっか。だったら試合で当たるかもしれないね。私も出るから」

「マジか!? セシリアが出るとなると厳しい戦いになりそうだ」

 セシリアは無詠唱と小魔法のスペシャリストで魔力コントロールがずば抜けている。近接と魔法の融合した戦い方でかなり強い。セシリアと戦うとなると一度鍛え直さないとまずいかな。

 ・・・なんだこの違和感は。異質な感じが戦闘場を急に包み込む。不知火とセシリアも違和感を感じて戦闘態勢を取る。

「ククク・・・集~♪ 久しぶりだなー。会いたかったぞ~」

「お前は・・・!」

「覚えているだろう? さぁ、名を呼んでくれ?」

「紅 煉・・・。殺してやる・・・」

 急に解き放たれる殺気に不知火とセシリアは後ずさる。俺は、怒りから来訪者である煉に殺気を向ける。だが、それを受けても煉はひょうひょうとした態度でそれを受け流す。

「さぁ、死合おう。俺たちの戦いはあの時から止まっている・・・!」

「煉ーーーーーー!!」

 俺の刀と煉の刀がぶつかり合って火花を散らす。俺たちが立っている場所が衝撃から大きく凹んでクレーターのようになる。こいつだけは絶対に殺す!

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