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「え、う、うん!もちろんそのつもりだよ!で、でね、あのね」
「ありがとう、助かる。」
「本当にありがとう。それで、どうしたの?何かあるの?」
「そ、そうじゃなくて、あたしの力も何か約に立たないかなって、」意を決したようにマフが話をしだす。
「えぅっとね、たとえばね、ちょっと二人で片方の手をあたしの前に出して。」
何か良く分からないが俺たちは言われたとおりにそれぞれの手をマフに向けて伸ばした。
「今からね、二人の手を掴むけど、あたしの方をちゃんと見ててね。」
何がおこるのかと、ルーネと横目で眼を合わせつつもマフを見つめる。途端、何かが俺の手に触れる感触があった。が俺の手には何も触れてなどいない。目の前にいるマフも動いてさえいない。そして、俺の手が何かに上に上げられる感覚がおきた。もちろん、俺はマフに言われたとおり手を前に突き出したまま固定させているはずだ。
そして、ゆっくりとマフが俺とルーネの手を握り、上に持ち上げた。
「ん、今、え・・・・マフあなた今何をしたの?」ルーネがマフに問いただす。
「あのね、ぎゅーんってしたら、ちょっとだけ遅れる感じになるの、あとね、全部したらね、こんな風に。」突如としてマフが暗闇に覆われる。
「なったりね」と再び姿を現した。
「つ、つまり、見えている光を操れるということか?」
俺は呆然としつつも必死で今の現象を理解しようと疑問を口に出して整理する。
「操れるのとは違うかな、引っ張って遅くするだけだから、私はちゃんと動いてるのに、まだその前にいるところが見える感じなんだって。」
「そ、そうか」俺は頷きつつもまだ脳みそがうまく動かず、ルーネに説明してもらおうと顔を見るが、ルーネはルーネでマフの手を見続けている。
「後はね、眼を見たらね、その人からぎゅーんって出てるから、それをどーんってしたら絵が見えるの。」
「そ、それはすごいな。」実際さっぱりわからないが。
「や、やっぱり気持ち悪いよね。」
「そんな事はないぞ。すごいな。マフ!すごすぎてよく分からないが。」
「つまりこれはギルドの紋章にも描かれている、裁定の眼の力よね。」
ずっと考えていたであろうルーネがやっと口を開いた。
「マフ、ちょっとその絵のやつ、私の眼を見てやってもらえる?」
「うん」と、途端にマフの金色の瞳が黒く染まる。
「ごめんなさい、やっぱりマフ、貴方とは一緒に戦えない。」
ルーネがふかぶかと頭を下げた。
「うん、わかった」
とても明るい、いつもの声で。笑顔を作り、そういいのこしてマフはゆっくりと俺の部屋を出て行った。
「おい、ルーネ!なんでだよ!マフは俺たちの事を!」
「分かってるわよ!でもあなたも分かるでしょ!大きすぎる力をつかって」
「わからねえよ!マフは俺たちの事を思って、自分の事なんか顧みずに戦うって言ってくれたんだぞ!」
俺はマフを追いかけようとしたが、ルーネに手を掴まれるがそれを振り払い部屋を飛び出す。マフの姿はすでに見えなかった。
「とにかく!明日からの予定は変わらないから!」
後ろでルーネの声が聞こえたが俺は宿を飛び出し、夜の道を当ても無くさまよい続けた。