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対絶神話(ついたえしんわ)


神様は長い長い時を過ごしていました。

長い時間の中で神様は様々な事を学び知りました。

そして神様はありとあらゆる全ての事ができるようになったのです。

そんな神様にも一つだけ出来ないことがありました。

神様は死ぬことが出来なかったのです。

そんな神様はすべてに飽きてきたので神様を終わらせる神様を創りました。

これでようやく神様は終わりを迎えることが出来ると思いました。

しかしそううまくはいかなかったのです。

神様が創った神様を終わらせる神様は目が覚めた瞬間に自らを終わらせてしまいました。

神様はやっぱり死ぬことが出来ませんでした。

そして、なんと自らを終わらせた神様も、次の朝、目が覚めてしまったのです。

毎朝目が覚めた瞬間に自らを殺し続けました。




「はい、今日はここまで。」若い女性が物静かに抑揚をつけながら読んでいた本を閉じて呟いた。

「えー、神様かわいそう。もうちょっと続き聞きたい!」五〜六歳になる頃だろうか。目を輝かせながら話を聴いていた男の子が不満げに言う。

「だめだめ、早く寝ないと寂しがりやの神様に見つかってさらわれてしまうよ。」

小さな子供は女性が最後まで言う前にちらりとカーテンが掛けられている窓をみて、ベッドに潜り込んだ。

「神様。おやすみなさい。」その一言を呟くと子供はすやすやと寝息を立て始めた。





「はぁー、やっと着いたな。」一見華奢に見える男が隣にいる女に声をかける。

「とりあえず、私は宿を確保しておくから、あんたはそこら辺見て回っていたら。」男より少し低めの身長の女がそう返事をした。

「じゃあ俺は、ギルドで何か依頼でも見ておくかな。」そう言って男と女は別々の方向に歩みを進めていく。

「じゃあ予約が取れたらギルドでなー。」遠ざかっていく女に向かって少し声を張り上げ、男は地図に目を落とした。地図に描かれた町はそれほど大きくなく、待ちの入り口から

十分、二人が別れたところから五分ほどだろうか、そこに男が目指すギルドという建物が記されていた。

「えーっと、ギルドは宿屋の反対側か・・・」男は地図を見ながら小さな声で呟いた。師匠は何をしているのか。そんなことを考えながら歩いているうちに男はギルドと呼ばれている建物についた。建物は木造で二階建てになっている。男が建物に入るとなにやら元気な声で言い争いが聞こえてきた。

「ええー、なんでー、そんな意地悪しなくてもいいじゃん!」

「何度も言っているようにあなたは今月はもう依頼を受けることは出来ません。意地悪で言っているのではありません。あなたみたいな方がたくさん・・・」等と聞こえてくる。が、いつまでも聞いていても仕方がないのでもう一つの窓口に行き、何か依頼がないか聞いてみる。そしてとりあえず今日から期限が三十日分の依頼書をもらい、窓口から少し離れた場所に置かれている椅子に腰をかけた。俺の一存では決められないので真剣に読んでもしょうがない。と、心ここにあらずで適当にぱらぱらと目を通していく。

「おおー!ランクBかー!!やるねぇお客さん」背中に重みを感じると同時に耳のすぐそばで元気な声が発せられた。横を見ると光を反射して七色に光る絹のような滑らかさの漆黒とその中の金色に輝く瞳がすぐ近くにあり、リムニー族特有の前身を覆う体毛が俺の頬をふさふさとくすぐってくる。

「お客さん、ランクBとは中々やりますねー。それならこの依頼なんかはどうでしょう。」ぐふふと顔をにやつかせながら、ある一つの依頼を見せてくる。

「今回だけの特別な格安の運び屋を紹介できるよ。なんとそのお値段二千フィル!腕前も私が自分自身だし保証するよ!!」

「ふむ、達成料七千二百フィルで二千か」俺は少し悩みつつ、

「っていやいやおまえ、私が自分自身って運びやお前かよ!っつーか重い乗っかるな。」俺はそう言いつつ肩をまわし背中に乗りかかる重量を振り払う。

「むっ、失失礼礼なにゃ!」と何故か二回繰り返しつつ、対面の席にしれっと座る。

「て言うかお前、さっきもう依頼は無理だって言い争っていただろ・・・」

「あまい!依頼は無理だけど、運び屋ならまだいけるもんねーっ」リムニー族の女が窓口にいる職員にまで聞こえるくらい大きな声を出し同意を求めた。

「はい、運び屋なら何の問題もありません。」と職員はもうなれた様子で返してくる。

もう一度依頼書をよく見直すと、生息域はここから三日ほどかかり、その場所にいる大あり種一匹を丸ごと「生死問わず、状態出来れば良好で」と書かれていた。

「往復六日、現地二、三日と言った所か、これなら時間もつぶせるし、じゃあこれにするか。」

「お客さんお目が高い。じゃあ契約成立と言うことで。」にふふと笑みを浮かべつつ、机に置かれた依頼書を窓口まで持って行こうとリムニー族の女が手を伸ばす。

が、ばしっと横から伸びた手がそれをたたき払った。


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