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 祭りがさっきまで行われていた都市の大通りでは、戦闘ギルドと一部のプレイヤー達が慌ただしく動き回っているだけだった。

「今のところ、被害は広がっていないようだな」

「・・・」

 レット・ドッグ団長であるヘル・ロベスの言葉に対策本部である会議室に一時報告で集まったギルドマスター達は黙り込んでいたが、暁達と連絡をしていた弧万智が遅れて現れたので全員が振り向くが、弧万智は周囲を見渡しねこ丸を見つけると近づいて行き、部屋に居る全員に聞こえる程度の声で喋り出す。

「命の危険はないことが分かったわよ。今も信じられないのだけど感染した人は、男女関係なく幼女になるそうよ」

「なぬっ」

 弧万智の言葉を聞いたねこ丸は驚き、声を出すもすぐに黙ると弧万智にしか聞こえない声で礼を言い部屋を出て行った。

 ねこ丸が居なくなって直に弧万智に向かって声をかける者が現れる。

「弧万智さん、詳しく話をしてくれないかね」

「えぇ、分かったわ」

 声をかけてきた主である戦闘ギルドの虎龍ギルドマスターである英王に返事を返すと一呼吸置き、話始めた。

「発現地である島に向かった黄昏の夕日のメンバーからの報告ではそう言っていたのよ」

「他には……」

「分かりしだい連絡を入れるって言っていたわ」

 それまで辺りを満たしていた緊張した空気が死に至ることのないモノだと分かったことにより少しだけ和み、同時に他の者たちと連絡をするために皆が動き出す中近づいてきたタカのんと目を合わすと頷き合い弧万智はタカのんを連れて会議室を後にする。

 ねこ丸が隔離施設へと向かうと報告通りの変化が現れ始めていた。

 最初に感染していた戦闘ギルドのメンバー全員が幼女化し、ギルドマスターとカラス越しで会話をしていた。また、黄昏の夕日のメンバーであるかえでと鈴奈も幼女化してお腹がすいたと騒いでいる声が聞こえてきたので、ねこ丸は気持ちが少しだけ楽になった気がした。

「虎さん、虎さん」

 いきなり声がかかって来たので聞こえてきた方向を向くといつの間にか窓ガラスまで近づいて来ていたかえでがねこ丸を呼びながらガラスを叩いていた。

「どうしたでござるか。かえで殿」

「クロちゃん達について聞きたいの」

 潤んだ眼で見つめてきたかえでに少しときめいてしまったねこ丸は、咳き込んで弧万智からの報告を知らせるとかえではありがとと言って鈴奈の元へと走って行く。

(さて、かえで殿達も問題ないようだし見回りに行くとするか……)

 ねこ丸は、もう一度かえで達の姿を見た後、腰の刀の位置を直して隔離施設を離れ、近くに居た巡回組に混じった。


「……ふぅ」

 書物を読み終わったクロツキは、カバンの中に書物を詰め込み机の上に置いてあったツボを掴むと手を入れる。

「なにっやってるんですか!」

 クロツキの行動に驚いた兵士の一人が悲鳴に近い声を上げ近づいてきた。

「ちょっと待って・・・・あった」

 クロツキが何かを掴んだのかツボから手を出すとその手には真っ黒な霧を吐くキューブが握られていた。

「・・・な、なんですかそれは?」

「今回の感染を止めるための鍵になる物です」

「えっ……」

 クロツキの言葉に信じられないといった顔をした兵士達に笑みを見せたクロツキは、小雪の元へと急ぎ向う。

「ただいま」

「うん、無事だったみたいだね。クロ兄、何か成果でもあったの?」

 クロツキと一緒に返ってきた兵士の落ち着きのない態度を見て小雪は、質問をする。

「まぁ~ね」

 得意げな顔をしたクロツキは、先ほど手に入れてきたキューブを小雪達に見せ説明をし始める。

「ツボと一緒にあった書物を読んだんだけど、どうやらウイルス兵器みたいだね」

「それはどういうことだね」

 キルベリア卿は、疑うかのように質問を返してきて、それを聞いた小雪も頷く姿を見た後、クロツキは、ごめんと言って詳しい話をし始める。

「これは、僕たちの世界に居る軍隊がここに隠した兵器の失敗作みたいで、治療法はこのキューブを使えばいいみたいなんだよ」

 クロツキの説明を聞き、キルベリア卿は険しい顔を見せたものの治ることを知りほっとしたようだった。また、他の者たちも喜び表情を浮かべているのが見える。


 リリィン

 いきなり鳴ったフレンドコールにクロツキを含めた全員が静まり返り、小雪が出る。

「うん、了解。急いでそっちに帰るから・・・」

 暁達の所での事態が悪化したことを察したクロツキは、キルベリア卿に説明し小雪と共に急いで村の方へと向かった。


「―――あぁ、待ってるよ。できるだけ急いでくれよな。小雪」

 小雪との連絡を切り終わった暁は、銃に弾を装填しながら窓越しで施設周辺に敵が生き残っていないかを見ていると外を巡回していたボビーとサポート職の幼女4名が帰って来るのが見えたので状況を聞きに近づく。

「たぶん村の周囲は全滅できたと思うぞ」

「そうか。小雪に連絡をいれたからすぐに返ってくるはずだ」

 クロツキ達が城へと向かった後に出現した魔物達は初めのうちは周囲を歩き回るだけだったが、突如、目の色を真っ赤にしたかと思うと施設を攻撃して来たのだ。初めは問題なく片付けていたが波のように1波、2波と連続して攻撃をして来られため、対応仕切れなくなり今では、戦う意志のある幼女達と連携してどうにか、攻撃の波を凌いだのだった。

「あのぅ、師匠は何か言っていませんでしたか。暁先輩」

 暁の戦い方を見たマグロは、いつの間にか先輩と言うようになっていたが暁は気持ちの良いことだったので反論はせず、マグロの質問に答えるが、周りに居た者全員に聞こえるほどの音量だったのでその場にいた全員が驚く。

「あぁ、治療法が分かったようだぞ!」

 暁の言葉の意味を理解するのに時間が掛かっていたのか、最初の方は静まり反っていたが、次々と喜びの声があがっている中で違う声が聞こえてくる。

「敵が姿を現しました!」

 2階の窓から外の様子を監視していた魔法使いの言葉が響いたと同時に暁達は配置に着き、クロツキと小雪の帰りを待つ。

「ざっと、30体程いるな」

「そのようですね」

 暁とマグロは出入り口方面の窓際から外の敵を警戒しながら呟く声が施設内部に響き渡り、全員が聞く。

 姿を現してから数分が立つがいっこうに動きを見せないので、集中力が切れ始めたのかそわそわする者達が現れ始めていた。

「うわぁぁ」

 どこから侵入したのか、一人の探究者に乗っかる形で外に居た一匹が攻撃をしていた。

「くっ」

 助けに行こうと周りの者が動こうとしたが襲われている探究者の叫び声を合図に攻撃が始まった。

 クロツキと小雪はただ沈黙するしかなかった、急いで帰ってきた二人の目の前には崩れ落ちた施設が見え、連絡を入れるが誰も出ない状況に周囲を警戒しながら施設へと進む。


「・・・・おかしい」

「なにが?クロ兄」

 魔物の死体だけがあたりに散らばっているのを見たクロツキ近くにある復活ポイントの宮殿内部へと入ってすぐに呟いた言葉に小雪は疑問を投げかける。

「この宮殿が使われていないことだよ」

「へっ?」

「つまりだな・・・・誰も死んでないってことだよ」

 ここ数日使われていなかったことを現すかのように室内には埃が積もっており、クロツキと小雪の足跡しかついていない状況を見たクロツキは床を指差して答え、小雪も理解したのか黙り、今度は施設跡の調査へと向かう。

「ねぇ~、クロ兄」

「どうしたんだ」

 入り口を塞いでいた瓦礫を除け、施設の中へと入ったクロツキと小雪は二手に分かれ調べていると奥の方から小雪の呼ぶ声が聞こえ、クロツキは駆け足で向かうと大きな穴が床に空いており空洞が続いているのが見えた。

「皆この先に居るよな」

「信じて行ってみようよ」

 クロツキと小雪が空洞の奥へと行くかどうか考えていると聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきて振り向くとキルベリア卿と兵士達が居た。

「これは、ひどい有様であるな。クロツキ君、小雪君」

「なんで、此処に居るのですか?キルベリア卿」

 クロツキは、少し驚いたもののキルベリア卿に質問をすると近くに居た兵士が答えを返して来た。

「言い忘れていたことがあるんです」

「そうなんです」

「はぁ……それで?」

「それはだな。此処の土地の地下には空洞があってだね―――」


 リリィン

 キルベリア卿の話す内容に出てきた空洞と言う単語にクロツキと小雪は反応し耳を澄まして聞いていると、小雪のフレンドコールが鳴り話が中断された。

「はいっ、マグロじゃないっ、全員今どこに居るのっ……うん、うん・・・・・分かった。直に助けに行くから」

 小雪とマグロの通話が終わり、小雪は一呼吸した後喋り出す。

「マグロたちは全員無事だって、ただ敵の巣の中に居るみたい……」

「場所は?」

「・・分らないって、施設が崩れた時に全員、気を失って気が付いたら敵の巣の中に居たって……」

「そう、か」

 暁達の無事が分って少し安心できたものの場所が分らず、クロツキは今までの出来事を頭の中で整理するために黙り込み、小雪は不安そうにクロツキを見つめているとキルベリア卿が話の続きを話だした。

「そのことなのだが、さっきも言ったがこの辺りには空洞があってな。もしかすると奴らはそこを根城にしているのではないかと言いたかったんだがね」

「「えっ」」

 クロツキ達は、驚きのあまり声が出てしまったがすぐに施設の中にあった空洞を思い出し見つめ合った後、自分たちの荷物を確かめ皆が居ることを願い空洞の奥へと突き進むことを決意した。

「何か心当たりでもあるのかね」

「・・・うん」

「えぇ、一応ですが施設の中に空洞への道があったんです」

 キルベリア卿は二人の様子が変わったことに気付き尋ねると小雪は自信なく答え、クロツキは詳しい内容をキルベリア卿に返すと、キルベリア卿は考え込む格好になり、数分後に自分たちもついて行くことをクロツキに伝え、準備に取り掛かる。

「――――注意することは・・・・これくらいですね。行きましょうか」

 全員が準備し終わって、クロツキは進むに伴ってこれから注意するべき内容を話し終えると武器を構えなおして前衛職である小雪を戦闘に空洞の奥へと進む―――。

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