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町の中へと入ったクロツキ達は、小雪とマグロに連れられて町の端にある施設へと向かった。
「・・・・これって」「・・おい・・・」
教会のような施設の扉を開き中へとな言ったクロツキと暁は同時に呟いた言葉でお互いを見ていると、マグロが声をかけてくる。
「分って、もらえましたか?」
「あっ、ああぁ」
暁は、目の前に広がる光景を表す言葉が見つからずあいまいな返事をマグロに返し、横にいるボビーを見ると驚きの余り硬直しているのか一向に動き気配がしないそんな姿を見ているとクロツキがこちらを向いてきた。
「ちょっと連絡をしてくるから」
クロツキはそう言うと小雪を連れ、施設の外へと出ていき、姿が見えなくなった頃に動く気配のなかったボビーが復活したのか興奮気味で感染者たちのもとへと向かおうとする。
「これはっ、天国ではないか!」
「うひょひ――ぐふっ」
マグロは、ボビーを制止させるために慌ててボビーの服を掴むと首が閉まったのか、ボビーはそのまま静かになる。
「なぁ、この有り様を説明してくれないか。マグロ」
動かなくなったボビーを近くの空きベットに寝かしているマグロに暁は、説明を求めると同時に再確認をするかのように周りを見る。
「あぁ、そうですね」
「皆さんが来る2日前程ですが、突然、うめき声が大きくなって感染者達の体が黒い霧状の物に包まれたかと思っていると幼女化した姿になっていたんですよ」
「・・・はぁ~」
暁は、マグロの説明を聞き深いため息を出して近寄ってきた感染者の頭を撫でようとするとマグロからの注意がかかる。
「手袋を着けてから触ってください。そうしないと感染しますから」
「わかった」
マグロがこちらに向けて差し出してきた手袋を着け、撫でてやるとうれしいかったのか、自分が持っていた玩具を暁に渡すと離れていった。
「―――そういうことだから、うん、わかりました。そちらも気を付けてください」
「・・・ふぅ」
弧万智と連絡が終わったクロツキは、現状を整理しながら自分を落ち着かせていると後ろから小雪が話しかけてきた。
「連絡終わったの?クロ兄」
「一応、終わったよ。でも、まさかあんな感じになちゃうとはね・・・」
「あはは」
クロツキの言葉に小雪は自分の頭に手を置きながら笑うしかないようだった。
「・・・っで、これからどうする?」
「ん~、まずは、最初の感染者に会いに行こうか」
「了解、あっ連絡は私がしておくね」
クロツキは、小雪の返事を聞き暁達に連絡しようとすると小雪が代わりに連絡を入れてくれたので移動用の動物を呼び出す笛をカバンから取り出し吹く。
「わかりました。師匠」
マグロは、小雪からの連絡を聞くと自分たちは残ることを伝え、目を覚ましまた、感染者に近づこうとするボビーを必死に抑えている暁のもとへと急いで向かった。
「師匠から連絡がありました。二人は最初の感染者の元へと向かうそうです。後、自分たちは此処に残ることも伝えました」
「おぅ、わかった、よっと、落ち着けってボビー」
「幼女がたくさんいるのに落ち着いていられるかっ!」
マグロは、ボビーの底知れぬ変態度を見て、ため息を漏らす。
「はぁ…」
「もういい加減に・・・・どうしんたんですか?」
文句を言おうとしたマグロは、突然、真顔になったボビーと暁を見て言おうとした言葉を途中で斬り質問をすると小声で返事が返ってきた。
「外に何かいる・・・」
「あぁ、間違いない。皆に注意してきてくれ」
「は、はいっ」
マグロは暁の指示に従い、幼女化して部屋の中で遊んでいる感染者達の元へと行き、暁とボビーはそれぞれ武器を持つとボビーは出入口にあたる扉付近へと暁は2階へと上がる階段の方へと向う。
「みんな、こっちに集まってください」
患者たちはマグロが入ってくると同時に向き、声がかかるとマグロの元へと駆け出す。
「どうしたの?」「遊ぶんでくれるの?」
先にマグロの近くに着いた少女達は同時に質問をして来たので、マグロは困惑するも自分を落ち着かせて、理由を説明し始める。
「建物の周辺に何かいるようなので、中央に集まってください」
「え~」「一緒に戦うよ~」
「だめですってばっ――はい」
自分たちの武器を持とうとする者たちに注意をしていると、2階へと上がり、窓から周囲を見ていた暁から連絡が入る。
「今すぐに、クロツキ達に連絡を入れていくれ」
「どうしたんですか。暁さん」
「姿は良く見えないが人型の魔物にこの建物は包囲されている」
「わっ、分かりました」
暁の声から伝わる緊迫した気配にマグロは暁との通信を切り、急いで小雪に繋ぐ――。
「―――うん、わかった。伝えとくね。気を付けてね」
アイテムで呼び出したユニコーンの背に乗り、移動をしているクロツキの背中で通信していた小雪は、通話が終わるとクロツキに聞こえる声で喋り出す。
「村の方で人型の魔物に囲まれているって、私たちの方にも出るかも知れないから気を付けろと言ってたよ」
「了解。急ごうか」
クロツキは、小雪からの報告を聞くと直に移動速度を上げる。
(う~ん、今回の件に関わってるよなぁ~。はぁ――)
嫌な予感がしたクロツキは考え事をしていたが、後ろに居る小雪が何かを言っていることに気付き、考えるのを止め後ろを向く。
「やっと、気付いた。もう目の前だよ」
「すまん、すまん」
小雪の言葉で、速度を遅くしたクロツキは、全然、話を聞いてくれなかったことにむくれている小雪に謝りながら頭を撫でてやると、少しだけ気分が良くなったのか、鼻歌を歌い始めた。
「・・・・開いているな」
「うん、開いているね」
「一応、武器を構えて」
「うん」
城に着いたクロツキ達は事前に聞いた話では、閉まっていると聞いていた城門が開いている姿を見たクロツキは小雪に注意を促した後、慎重に城の中へと入って行く。
「・・・これって」
「ひどいな」
言葉では例えようのない異常さにクロツキと小雪は驚くことしかできなかった。
中に入って直に鼻に吐くような異臭が襲ってきて奥の方へと向かうと見たことのないモンスターと衛兵だったと思われる服を着た幼女達の遺体が所々に転がっていたのだ。
「・・・まずは、生存者がいるか探索しようか」
「うん、くれぐれも触れないでね。感染する危険があるから・・・・」
「分かっているよ」
クロツキ達は、周囲を警戒しながらさらに奥へと進んで行く。
書物庫なのだろうかたくさんの本が並べられている部屋へとやって来たクロツキと小雪は、中へと入ると奥にある扉から物音がした。
「クロ兄」
「あぁ」
クロツキと小雪は互いに武器を構え直すと静かに扉へと近づいて行き、扉を開くとそこには5人程の幼女達がいた。
「た、助けて~」
「うぅ~」
「来るなら来――」
「誰だね。君たちは」
皆が怯えている中で一人だけ、貴族であったろう人物が声をかけてきた。
「すみません。探究者のクロツキと言います。こちらは同じく、小雪と言います」
クロツキの紹介に小雪は頭を下げると直に周囲の警戒に回る。
「そうか、我はこの城の当主であるキルベリア・オリングである」
「キルベリア卿、ここで何があったのですか?」
キルベリア卿は一瞬ためらったが話始める。
「2週間前になるのだが、大きな地震が起きてだな。その影響で埋もれていた遺跡が現れたのだ。我は調査団を組織し、調査をしに向かったのだが、そこで見たこともないツボと書物を手に入れ持ち帰ったのだ」
「それで、どうなったのですか」
キルベリア卿は、一旦話を止めたのだがクロツキの問いで、また話始める。
「研究員の一人がツボの封を解いたのだ。そしたら、得体の知れない魔物が現れて触れた者は我のような姿になって・・・・今の現状に至るのだ」
「そうでしたか。ユキ、暁達に連絡をいれて」
「わかったよ。クロ兄」
「その時のツボと書物はどこにありますか?」
クロツキは、小雪に報告をするように頼むとキルベリア卿に持ち帰った物の在処を聞き、案内役の衛兵2人と共に小雪を残し取りに向かった。
「ここです。ここです」
「はやく入りしょう」
二人の衛兵は、心も子供に返ったのかはしゃぎながら扉を開け中へと入って行く。
「これですか。なるほど、ここで少し読ませてくださいね」
「「は~い」」
クロツキの言葉を聞いた二人は扉を閉め、警戒しながら遊びはいる。
「――うん。たぶんここで倒れていた魔物だと思うから、気を付けてね。後、向こうにも連絡を入れてくれって」
小雪はマグロに報告をし終えた後、一緒に残ったキルベリア卿と研究員1人、衛兵1人を見ていろいろと詳しい話を聞く―――。