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「やぁっ」
「フンッ」
波の音と共に聞こえる戦闘音の先には男女の集団がモンスターを相手に訓練をしていた。
「よし、今日はここまでにしようか」
「「はぁ~い」」
ロベスの掛け声を聞き、戦っていた冒険者たちは元気よく返事を返し、ロベスの後に続き移動を開始する。
「あの~」
「どうした?」
先頭を歩くロベスに一人の少女が声をかけてきた。
「ボビーさんは今日、付添じゃないんですか?」
「あ~、彼は食材集めに数人と出かけてるよ」
「ありがとうございます」
ロベスにお礼を言い少女はもといた位置へと戻る。
「はぁ~お守りも疲れるな」
空を見上げ、今に至っている原因を思い出しながら歩く。
クロツキの姉に関しての報告が終わり、季節が夏に変わった頃、サタンが代理を務める隣の都市との共同合宿が決まった。
「クロちゃん達は参加するの?」
背後から声を掛けられ振り返ると弧万智が立っていた。
「弧万智さんでしたか」
「もう、クロちゃんたら、誰と思ってたの」
「久しぶりだったのでつい、えっと参加するかどうかでしたよね」
「えぇ、そうよ」
「参加するつもりです」
「良かったわ。皆が注目してたからとても気になってたのよ」
クロツキからの返事を聞いた弧万智はより一層笑顔になり去ってゆく。
「やっぱり、注目されてるのか、はぁ~」
「どうしたの?クロ兄」
ため息を吐いて出てきたクロツキに小雪は心配そうな顔をして近づく。
「弧万智さんから、注目されてると言われてね」
疲れ切った顔で答えたクロツキに小雪が苦笑いする。
「そういうことか、最近見られてたもんねぇ~」
「なるほど、そこまで有名になってたんだな。俺たち」
「ひゃっ」
耳元で声が聞こえた小雪は驚き、変な声が出て飛び跳ねる。
「何してるのさ。暁」
「そうよ。脅かさないでよね」
「遅いから迎えに来ただけだよ」
未だに暁に文句を言っている小雪の姿を見ているとさっきまで疲れていたのが嘘だったかのように体が軽くなる。
「落ち着こう小雪」
「うぅ~、分かったよクロ兄」
「助かったぜ。クロ」
「帰ろうか」
落ち着いた小雪と暁に声をかけ、歩き出す。
「そうだっ、寄りたいところがあるんだけど良い?」
武具や魔法具を扱う店やギルドが並ぶ大通りの近くを通り過ぎる寸前で小雪が何かを思い出したのかクロツキと暁を止める。
「大丈夫だけど」
「俺もいいぜ」
「良かった」
クロツキ達の返事を聞いた小雪は笑顔を見せると大通りを進んで行く。
「いったい何を買うんだ。ユキ」
「あぁ~、新しいスキルに合った道具を買いたいと思ってね」
「やっと、発動条件がわかったんだね」
生物兵器の後遺症で出現したスキルが使えず、悩んでいた小雪のことを知っていた暁とクロツキは
嬉しさを顔に出さないようにしている小雪を温かく見守りながら後ろを付いてゆく。
「ここか」
「うん、情報屋からの話だと何かスキルに使う道具があるんだって」
「ん?それってユキ、もしかしたら違う可能性もあるってことだよな」
「あっ、そうだね。そのことは考えてなかった・・てへっ」
「おいおい」
暁の言葉を聞き改めて、気付いた小雪の反応に暁はあきれ果てる。
「ここで考えても意味ないよ。とりあえず確かめよう」
二人のやり取りを聞きながらクロツキは店の扉を開き中へ入り、続いて小雪達も入って行く。
「ちょっと待って、クロ兄」
「おい、そうだぞ。クロ」
「らっしゃ~い」
店に入ると奥の方から聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「どっかで聞いたことがあるような」
「すみませ~ん。スキル用のアイテムってありますか?」
「あぁ、これかな・・・・」
カウンターに向かい尋ねる小雪は奥の方から箱を持って出てきた女性と目が合い、お互いに黙る。
「あぁぁぁ」
「えぇぇぇ」
互いに驚きの声をあげるが、すぐに静かになり、再開を祝う。
「久しぶり、リサぁ」
「そうだね、小雪ちゃん。それに、暁さんとクロツキさんも久しぶり」
「どうしてここで店、開いてるんですか」
「ただの気まぐれよ。稼ぐには今、この都市が一番いいって聞いたから」
簡単に理由を言いながら、箱を小雪の前に置く。
「これが目当て出来たんでしょ。まずは、確かめてみたら」
「そうだった」
リサに言われるままに箱を開け中に入っているものを取り上げる―――。




