10 後編 (拓真)
今日が終われば皆が待ちに待った夏休みが訪れる。
夏。それは魅惑の季節であり男女の間柄が変わると信じられている季節である。男女の仲以外にも、夏休みを経て何かが変わってしまうというのは、正常な高校生なら至極当然のことだ。
そんな夏休みを目の前にして、生徒達は浮き足立っている。俺もその一人と思って構わない。
というか、俺は浮き足立っているわけではなく、夏休みに入る事によって懸念される事柄があるのだ。それは、
B棟三階右端の教室には、もしかしたら登校日以外に行けないんじゃないかということだ。
朝から少し憂鬱になってしまう。今日の日程は終業式だけで、その後、部活に入っていない俺は帰宅を選択するしかない。
まぁ、B棟三階右端の教室に行く事になるのだが、今日は流石に誰も来ないかもしれない。
一之瀬が来ないとなると、俺はあの教室に入る事はできない。頼むから一之瀬だけでも来てくれ……。
そんな願いを天へと飛ばしながら、俺は昇降口で上履きに履き替えていた。その時、
「お、おはよう。小枝樹……」
俺は挨拶の声が聞こえた方へと振り返った。
「あ、お、おはよう。佐々路」
佐々路楓。この間から気まずい関係に俺等はなってしまっている。それもそうだろう、一之瀬に処刑されたあの日、俺と佐々路はもう少しで……。
その時の情景が脳裏をかすめたが、俺は理性という人間に与えられた能力を駆使し、その情景を消し去った。
つか、そんな事考えてたらまともに佐々路と話すことすらままならない。
「じゃ、あたし先に教室行くね」
「お、おう」
あの事があってから確かに俺も気まずいと思っている。だが、俺が思っているよりも佐々路の態度が素っ気無くなった。
俺が思っていた佐々路は、笑いながら俺の背中を叩き「もう、なに小枝樹真に受けてんの!? あたしが魔女なのは知ってるでしょ。ほんの冗談よ」とか言って普段と何も変わらない関係に戻ると思っていた。
でも、そんな俺の想像は現実にはならなくて、佐々路は俺を避けるようになっている。
少しの寂しさを感じながら、俺は上履きを履き、教室へと向っていった。
終業式。
体育館に全校生徒が集まり、つまらない校長の話しやら、生徒会長の話し、そして教師達からの夏休みに悪さをしないようにと釘を打つ話しを俺達は聞かされていた。
生徒にとって退屈な終業式。俺も退屈を感じている。この会の話しはきっと誰も聞いていなくて、早く終わる事を切に願っている。
「最後になりますが、高校生活の夏休みという時間はとても貴重な時間です。各々の青春を、悔いのないように過ごしてください」
校長の長い話が終わり、俺達生徒は安堵の表情を見せる。
そんな終業式という形式ばった行事は終わり、俺は教室へと向った。
授業という授業はなく、担任の話を聞き一学期を終える。
終業式で言われた事を繰り返し、注意事項や夏休みの宿題について話がされた。あとは夏休み中の登校日等の話があったくらいだ。
クラスの連中は一学期が終わったという事を喜び、この先にある一月半もの長い夏休みという時間の過ごし方を模索するように話している。
そんな連中の声を耳に入れながら、俺は自分の荷物を持ち、B棟三階右端の教室へと足を運ばせた。
まだ学校内に生徒が残っているせいか、いつもよりもB棟が騒がしく感じた。
いつもの様に、部活を精一杯頑張っている生徒や放課後の少ない時間を談笑に花咲かせる生徒の声は聞こえず、夏休みという大イベントを前に浮き足立った黄色い声が聞こえていた。
だが、終業式という学期最後の日。黄色い声は聞こえるものの、B棟に来ている生徒はいつもよりも少なかった。
少ないというか、いない。声や物音では誰かが居るとは思えないほど静かなB棟。
でも、俺はそれでいい。誰も居ない方が落ち着く。
遠くから声は聞こえるものの、静まり返っているB棟。俺は階段を上り、三階右端の教室を目指した。
一学期最後の訪問だ。俺は高鳴る鼓動を抑えながらB棟三階右端の教室の扉に手をかける。
ガタッ
………………。
俺は重要な事を忘れていた。
一之瀬がないとこの教室には入れないんだった……。朝まで覚えていたことを、昼になると忘れてしまう俺ってどうよ……。
項垂れる俺はB棟三階右端の教室の扉の対面にある廊下の窓を開け、頬杖をつき嘆息した。
本日は晴天なり。と言いたい所だが、生憎の雨だ。体育祭の前日から降っている雨。たまに太陽が顔を出したと思ったら、直ぐに雲に覆われ雨になる。
一学期最後の日が雨ってどうなのよ。憂鬱になる奴等だって出てくるだろう。まぁ、言っている程俺は憂鬱ではないのだが。
俺が憂鬱に思うのはB棟三階右端の教室に入れない事であって、雨なんかどうだっていい。
シトシトと降り続ける雨を見ながら俺はここ最近の事を思い出す。
菊冬は元気にしてるかな。一之瀬と仲直りできたかな。
一之瀬の妹の一之瀬菊冬。俺は菊冬に出会って、菊冬の苦しみを知って助けたかった。でも、助ける事は出来なくて、俺は菊冬を傷付けた。
そして後藤とかいう紳士執事に俺の過去を暴かれて、俺は動揺したな。
その時感じたのは恐怖で、一之瀬財閥の力を思い知ることになった。本当に一之瀬財閥っていうのはメチャクチャな存在だ。
それに友人A、もとい崎本隆二。まぁコイツは本当にただの凡人だ。普通の男子高校生で、色恋沙汰が好きで年がら年中異性を求める変態だ。
俺には奴の思考が全然読み取ることが出来ない。きっと、俺は崎本とは全く違ったタイプの凡人なのだろう。
崎本のつまらない人間性を考えながら、俺は更に憂鬱になっている。
B棟三階右端の教室に入れないのも憂鬱になる原因の一つだが、俺は佐々路の事を思い出していた。
佐々路楓。俺は彼女に触れたいとあの時思った。俺の事をわかってくれる女の子、自分の事をそっちのけにして彼女は俺の事を考えてくれていた。
佐々路の体温を感じたからか、佐々路の吐息を近くで感じたからなのか、俺はあの時佐々路を求めてしまった。
なんの変哲もない普通の女の子を欲してしまった。自分で自分が凡人だと再認識したかった。
本当に最低な男だな、俺は。
佐々路の事なんて何も考えていなかった、自分の弱い心を何かで埋め尽くしたかっただけだ。
溜息を吐き、俺は雨が降る世界を眺めていた。その時、
「やっぱりここに来てたんだ」
誰かが俺に話しかける。その声の方へと俺は振り向き、
「……佐々路」
「夏蓮と逢い引きでもしたかったの?」
佐々路は笑顔で俺をからかう。
朝までの気まずい雰囲気はなく、その空気に俺も合わせる事にした。
「逢い引き? 何言ってんだよ。俺は純粋に憩いの場で心を癒やしたいだけだ。」
「あーでも、夏蓮ならもう帰ったよ」
俺の心が粉々になる音が聞こえた。
一学期最後なのに、どうしてこんな悲惨な結果を神は与えたのか……。もしもこれが俺に課せられた試練というのなら、神はあまりにも非道すぎる……。俺はうなだれ、床に手をつき四つん這いになり、全てを絶望していた。
「なにやってんの小枝樹」
「見て分かるだろ、絶望してんだよ……」
「なんで?」
「だから、B棟三階右端の今俺らが目の前にいるこの教室に入れないからだよっ!」
嘆いている俺の言葉を聞いても、未だに佐々路は理解出来ていないような表情を見せていた。
「一之瀬が帰ったらここの教室の鍵がないんだよ……。だから俺はこうして床と友達になるしかないの」
「鍵ならあるよ?」
「……は?」
俺は佐々路が手に持っている鍵を見て驚愕した。確かにその鍵はB棟三階右端の教室の鍵で、何故それを佐々路が持っているのか不思議でしょうがなかった。
「ど、どうして佐々路がもってるんだ……」
「ん? 普通に如月先生から借りたけど?」
………………。
どういうことだああああああああああああああああっ!!!
確か一之瀬は鍵を完全に独占していた筈だ。なのに何でアン子が鍵を持ってる。全然意味がわからないぞ……。
「あ、そういえば如月先生から小枝樹に伝えて欲しいって言ってた。なんでも、夏休みに入る前に夏蓮が先生に鍵を一時的に返すだってさ」
夏休み前に一時的に返す……?
俺はこのとき思い出した。数日前、佐々路と色々あった時、一之瀬はもう帰っていた。だがここに来たのはアン子で、それで帰るときに鍵を閉めていた。
この俺が、謀られただと……。
今の状況を完全に理解した俺は、自分の知力のなさを恨む事しか出来ないでいた。
「何やってんの小枝樹、入るよ」
俺は佐々路に言われるがまま、憩いの場、B棟三階右端の教室へと入っていった。
昼過ぎの時間。俺は憩いの場を堪能していた。
「あーやっぱりここは落ち着く。一学期の最後をここで締めくくれるのは本当に気分がいい」
俺は教室の窓を開け、手すりに掴まり乗り出すように外の風を感じていた。
「小枝樹はどうしてそんなにここが好きなの?」
教室内にある椅子に座り、荷物を置いた佐々路が俺に問う。
「あー、なんつーか、俺が色々考える切っ掛けになったんだよ。佐々路は知ってるかもだけど、この学校に入学した当時、俺は本当に何もかも信じれなかったんだ」
雨が降る灰色の空を眺めながら、俺は佐々路に語りだす。
「アン子……、如月先生にこの教室の鍵を渡されて、俺はここに来た。何も無くて埃っぽい、俺のがこの教室に始めて来た時思ったのは、必要とされなくなった場所だ」
雨の音が教室内に入ってきて、その雫が手すりを濡らす。俺の心を曇らせるように……。
だが、そんな俺の話を佐々路は黙って聞いてくれていた。
「俺はこの教室と一緒だと思った。誰からも必要とされない、誰も見てくれない、自分という存在を誰も肯定してくれない。でも、少しずつこの教室に足を運ぶようになって思ったんだ」
外を向いていた俺は佐々路の方へ振り返って、そして、
「この教室を俺は必要としてる。だから、こんな俺のことも、まだ誰かが必要としてくれてるんじゃないかって……」
「……うん」
「でも、どうしても俺は誰かに期待されるのが怖かった……。自分の中で出来てく矛盾が、俺をおかしくさせてく感覚になった……。一之瀬とここで出会ってからもそうだった」
今の俺は、きっと笑っていないだろう。二年生になったばかりの春を思い出して、何も変わっていない事が嫌に思えた。
「ここで夏蓮と出会って、小枝樹はどうしたの……?」
心配そうに言う佐々路は、少し真実を知りたがっている表情を見せていた。
「俺は、天才が大嫌いだ……。何でも出来て、色々な人から尊敬されて期待されて……。でも、天才なんか、誰かを傷付ける事しか出来ないんだ……!!」
俺は叫んだ。自分の中にある感情を全て外に吐き出したかった。
「俺だって天才の被害者だ……!! 被害者なんだよ……」
自分の心がわからない。どうして俺は佐々路に自分の気持ちを露わにしているのだろう。どうして……、
「この間も言ったけど、小枝樹は何でもかんでも自分で背負いすぎなんだよ」
椅子から立ち上がり、佐々路は俺の方へと近づきながら言う。
「だからさ、あたしに甘えてよ。こんなあたしで良いなら、小枝樹の苦しみ全部わかるように頑張るから……」
佐々路は優しく、俺の身体を包んでくれた。
細くて、少し力をいれたら折れてしまいそうな腕で、俺を抱きしめてくれた。
「あたしなんかよりも、ずっとずっと小枝樹は苦しんでる。本当に自分の悩みがバカみたいに思えたよ。だから……、あたしに甘えて」
至近距離で見つめてくる佐々路。あの時と一緒の、潤んでいる瞳で……。
「……佐々路」
俺は、そんな佐々路の瞳に吸い込まれそうだった。だが、
『私は小枝樹 拓真を必要としている』『もう、貴方は独りぼっちじゃないわ』
一之瀬の言葉が脳裏をよぎった。
「だ、ダメだよ佐々路……」
「なんで……?」
瞳を濡らし、頬を赤く染めた佐々路は俺に疑問を抱く。
「そ、その。ほら、俺等はまだ知り合ったばっかりだし、まだ佐々路のこと俺は全然わかってないし……。確かに互いに秘密を共有している仲だ。でもまだ、俺は佐々路を知らなすぎるような気がするんだよ」
俺は佐々路と少し距離をとり言う。これ以上、佐々路を近くで感じていたら、俺は自分を止められなくなると思ったんだ。
「……なら、もっと互いに知ることが出来れば、小枝樹はあたしを選んでくれる……?」
「そ、それは……」
佐々路の問いに俺は答えることが出来ない。そもそも、選ぶってなんだよ。俺が佐々路を選ぶってなんなんだよ……。
「あはははははは、何本気で考えてんの。冗談だよ、冗談。やっぱり小枝樹をからかうのは面白い」
「……え、はぁ!?」
弄ばれた……。俺は今、佐々路楓に弄ばれたんだ……。この女、よくもよくも男の純情を……!!
「あーもうっ!! マジで焦ったんだからなっ!! その、女の子とこんな雰囲気になった事ないから……/// って俺はいったい何を言っているんだっ!!」
「はははははははっ!! やめて、もう、お腹痛いから」
腹を抱え笑う佐々路。本当に冗談だったんだと、やっと思えた。
「うるせぇ、うるせぇ!! もう、帰るぞっ!!」
「あ、待ってよ小枝樹ー。もしかして怒ってる?」
俺と佐々路はB棟三階右端の教室をあとにした。
家に着き部屋の机に鞄を置く。
学校から帰る途中も俺はずっと佐々路にからかわれていた。駅で佐々路と別れるまでずっとだ。
「あの女、本当に魔女だ」
普通な男子高校生が女子に迫られて冷静でいられる訳がないのですよ。それに、佐々路だって普通に可愛いんだから、俺はだってオオカミになってしまうじゃないですか。
俺は制服の上着を脱ぎながら意味不明な解説を脳内でおこなっていた。
そんな上着を脱ぐときに、俺の制服とは思えないくらいの良い香りがした。きっと、佐々路が抱きついてきたときについたアイツの香りだ。
その香りが俺の鼻を刺激し、佐々路の潤んだ瞳と、艶やかな唇を思い出してしまった。
「あーもうっ!! 俺はいったい何を考えているんだああああっ!!」
いやらしい事を考えている……。思春期なのか……? 俺は思春期なのか……!?
でも待てよ。思春期で良いじゃないか。俺はノーマル凡人高校生活をおくりたいと願っていたじゃないか。そうだ、俺は凡人な男子高校生であって……。
放課後、誰もいない教室で電気も点けずに女子と良い感じになる……。それだけじゃなく、女子と二人きりで言い寄られる……。
漫画じゃねぇか……。物語じゃないか……。空想の産物じゃないか……。
もしかしたら、俺はもう普通の高校生ではないのかもしれない……。
そんなの嫌だああああああああああああああっ!! 俺は凡人でいたい、普通の高校生でありたいっ!!! お願いです神様、どうか俺を普通の凡人男子高校生にしてくださいっ!!
ブーッブーッブーッ
一人部屋で悶え苦しんでいるとき、俺の携帯がなった。すぐさま冷静になり、俺は携帯の画面を見る。
着信、佐々路楓。
「も、もしもし……」
「あ、も、もしもし小枝樹? えっと、その、さっきぶりだね……」
電話を出るとき俺も少し動揺したが、電話先の佐々路のほうが何故か動揺していると俺は思った。
「お、おう。さっきぶりだな」
「………………」
何故何も話さない……。佐々路さんから電話してきたんですよね……!? どうしてものの数秒で無言になるんですかこの野朗。
「さっきはごめんね……。何かあたし少しおかしくなってたみたい……」
佐々路の声音が少し変わった。緊張し動揺してるような声音ではなく、何かに後悔し懺悔をするみたいな悲しい声色だった。
「少し調子に乗ってたみたい……。小枝樹はさ、その……、こんな汚い人間のあたしをちゃんと分かってくれたじゃん? だから、あたしも小枝樹を知りたくなって……。でも、いきなりじゃ上手くいかないものだね」
乾いた笑い声が電話の向こうから聞こえていて、俺は少し切ない気持ちを抱いていた。
「小枝樹はさ、あたしに自分の事話してよかったって言ってくれたじゃん。あたしもね、小枝樹に自分の事話してよかったって思ってる……。でもね、やっぱり身体に染み付いたものってなかなかとれないんだなって、改めて思ったよ……」
一瞬の間があく。そして、
「あたしはやっぱり、魔女なんだってね……」
佐々路の言葉を聞いた瞬間に込み上げて来たこの気持ちは紛れもなく不快感で、俺は佐々路にそんな風に思っていて欲しくなくて……。
「佐々路は魔女なんかじゃねぇよっ!! 確かにドキッとした、佐々路の顔に見惚れた。でも、それはお前が魔女とかじゃなくて……、普通に俺が、その、佐々路のこと可愛いと思ったから……」
佐々路は、俺の言葉に何も返してこない。もしかして、俺は何か変な事を言ったのか……!?
「ち、違うぞ佐々路っ!! 俺はあの時いやらしいことを考えてたとかじゃなく、純粋に佐々路が可愛いと思っただけで……。って俺はいったいなにを言ってるんだ。あー、だから、えーと」
「ありがと、小枝樹」
佐々路の声色が優しくなった。
「本当に小枝樹ってモテる男だと思う。だからさ、もうあたしに優しくしないで……?」
「佐々路?」
「前も言ったけど、これ以上優しくされたら本気で小枝樹のこと好きになっちゃう……」
好きになる……? 俺の事を……?
「おいおい、いつもの冗談にしてはやり過ぎ━━」
「嘘じゃないから……。じゃ、おやすみ」
プーップーップーッ
電話が切れる。意味深長な発言だけを残し、佐々路の声が途絶えた。
俺は通話終了の画面の携帯を机に置き、ベッドの横にある窓を開けた。降り続ける雨、優しさと冷たさを混合させながら、雨は降り続けた。
そんな雨を見ながら俺は、
「嘘じゃない……、か」
電話越しの佐々路の声がまだ、俺の耳元に残っている。
そんな佐々路の声を思い出しながら、俺はふと思った。それは、俺が誰かに恋をする時が本当に訪れるのかということ。
なんだか、こんな事を前にも考えたような気がする。本当に、俺は何も成長しないな。
でも今は、考えるのをやめよう。明日から夏休みなんだ。
俺が、昔のように楽しめるかもしれない夏休み。一学期の中盤はあんなにも晴れていたのに、今は雨。
夏の香りを漂わせながら、雨は静かに降り続ける。干渉に浸っているわけでもなく、黄昏ているわけでもない。ただただ、この先に待っている未来を、俺は考えていた。
何が起こるかなんてわからない。分かってしまったら、きっと人は楽しい人生なんかおくれないと俺は思う。
ワクワクして、ドキドキして、夏休みというイベントを心待ちにしている俺がいた。
そんな夏休みを向える凡人。降る雨を眺めながら俺は少し微笑んだ。楽しい未来を期待して……。
俺の忘れられない夏休みが、始まる。
どうも、さかなです。
第二部はいかがだったでしょうか。
春の話しが終わり、次章から夏休み篇です。
本当はプールの授業の話とか書きたかったんですけど、夏休みは色々と水着の話が多いと思ったのでやめました。
でわ、第三部でまたお会いしましょう。
さかなでした。