008.霧雨優香
近所の小道が白くなった、とある冬の日。
一仕事終えた俺が部屋でくつろいでいると――
「ゆっちゃん、入ってもいーい?」
ドアの向こうから優香の声。いや優香のじゃなかったらそれはそれで問題だが。ともあれ暇なので入れてやる。
「ああ、いいぞ」
「じゃ、入るね〜」
ガチャッと開けて入ってきたのは、どっかで見たことのある格好をしたヤツだった。
……ああ、そうだ。東方Projectって弾幕STGに出てくる霧雨魔理沙だ。
「ほう、似合ってんじゃねぇか。わざわざ既製ウィッグのアレンジまでして、本格的だな?」
専門用語はコイツと暮らしてるうちに自然と覚えてしまった。
「えへへ、ありがとっ。今度のイベントで着るの♪」
優香はその場でクルリと一回転して見せる。
コイツは身長が166cmと、女にしてはタッパがあるほうだが、それが逆に格好良さを引き立たせているんだろう。
「それじゃ、これは借りてくぜっ」
本棚からマンガ本を強奪して去ろうとする優香。こういうときは確か――
「持ってかないでー」
「死んだら返すぜ☆ って、ゆっちゃん今の可愛い〜♪ そうだっ! パチュリーの衣装用意してあげるからゆっちゃんも一緒に参加しよっ?」
「だが断る」