ドライビングゲーム
『ドライビング・ゲーム』
モニターのゲームは3周目に入っていた。後ろで妻が「頑張って!もう少し!!」と叫んでいた。信号が赤から青に…。その横断歩道に人が走って入って来た!!
アクセルをふかして時間以内にゴールへ入ろうとしていた俺はその人を…。
「またあ…。本験は3日後よォ。」
まったくだ。これというのも交通戦争に業を煮やした警察がこれも増え続けた違反反則金で全家庭に入り込んだコンピューターネットに目を付けてそれで1年毎に免許の試験を行う事にしてしまったものだ。
尤もこのドライビング・ゲームで違反をしても即免停という訳ではなく、これで反則点を溜めると再試験に呼び出されるだけだが、この年になると実技試験ではゲーム以上に心もとない。
さりと言って免許なしでは車なしの仕事など考えられもしないし、家庭サービスの月末の旅行も出来なくなる。だから、再ゲームを始めた。
翌日には目を腫らして会社へ行く有り様だった。
こんなんぢゃ余計に2日後に迫った本験では駄目だろう。
しょんぼりとして会社に着くと同僚がささやいた。
「いい噂を聞いたんだ。お前もドライビング・ゲームで駄目なクチだろう。あれに裏技があるという話なんだ…」
同僚の話を要約するとこういうことらしい。
どうもこれを管轄している警察はお役所らしく、昔の機械にちょっと手を加えただけのものを使ったりしているせいか、このゲームではどうも反則を一時に増やすとプログラムがオーバーフローを起こし、プラスの最高点に反転してしまうというのだ。
早速その週末に向けて反則の特訓だ。何しろ一回で中止になるような挽き逃げとかの余り大きな反則は侵さずゲーム時間以内に今までの反則点に併せて65000点はとらなければならない。人のいない信号をめがけて信号無視してUターン禁止の道でスピンターンの繰り返しだ。こういうなら昔のゲームで得意だ。
おかげで週末の試験が終わった時にはしばらく反則してもいいだけの免許の持ち点が入っていた。
今日は車で週末の家族サービスも快適だ。
ああ…本物の違反を起こしてしまった……。
運悪くパトカーが後ろから…。いくらゲームの方で点数を持ってても実際の免許点数が…。
そうだ、こういう時は家に帰る迄に違反を65000点越えれば……。(了)
うーーん、サスガに今では65000のオーバーフローなんて、と思いましたが(なんせ書いたのがかなり前なのです)、2000年問題があったのはごく最近ですし、ね。まさかというバグってのは結構あるもんですよね。きっと…。タブン…。もしかしたら…。